299 / 896
第五章
5-13
しおりを挟む
アルブル国が後継者不在で倒れるような事にでもなれば後ろ盾を失う事になり、近隣諸国の全てから反感を買っているパラジット国の存立は風前の灯火。
間違いであれば思うミトラに、クスキュートは静かに頷き応え、
「密かに潜り込ませていた我が国の諜報員からの報告ゆえ、間違いない」
「…………」
言葉が出て来なかった。
それでも絞り出す様に、
「そ……それでハクサン様は……」
「異世界勇者一行の手により、御隠れになったらしいとの事だ」
「なんて……」
(キーメとスプライツの消息が未だ掴めないと言うのに、更に一位様(いちいさま)によるアルブル国への襲撃だなんて……いったいどうしたらぁ……)
難題ばかりが募ったが、答えの見つけられない自問自答を繰り返しても意味はなく、一先ずミトラは、
「そ、それで大佐……自分が呼ばれました理由と言うのは……」
するとクスキュートは机の引き出しから書類束を取り出し、
「…………」
静かに彼の前に置いた。
得も言われぬ重々しい空気に、
「拝見しても?」
恐る恐る手に取るミトラ。
そして内容に目を通すなり、
『ッ!!!』
戦慄した。
しかしクスキュートにとって彼の反応は想定内の物であったのか、表情を変えぬまま、
「どうだ? やってもらえないか?」
「…………」
「これはミナー評議員、もとい円卓会議の総意であり、民意でもある」
(これが民意だってぇ!?)
わななく彼から視線を外す事無く、
「貴君も気付いていよう? みな敗戦国としての息苦しさに飽き飽きし、共和国時代の豊かさを求めているだよ」
(!)
確かにそう言った「市中の会話」は彼の耳にも届いていた。
しかし、
(同盟国の犠牲に上に成り立っていたダケの「かりそめの豊かさ」を求めるなどッ!)
怒りは暴発寸前であったが、クスキュートは決断を迫る様に、
「私としては「経験者の貴君を是非に」と思っている。他国の眼があるが故、刑に服している生き残りを強引に出獄させる訳にもいかぬのでな。全ては「故国の豊かさ」を取り戻し、再びの「繁栄」を手にする為」
愛国心に満ちた説得に、ミトラは視線を背けたまま、
「…………」
静かに書類束を机に置き、今にも消えそうなか細い声で、
「少し……考えさせて下さい……」
チカラの無い「形ばかりの敬礼」を残し、
「失礼します……」
部屋を後にした。
打ちひしがれた様子で本部を出て、町を歩き、自室に戻ると静かに扉を閉め、
『ッ!!!!!!』
狂気染みた怒りに任にて軍服の上着を剥ぎ脱ぎ、
『我が国はァ生まれ変わったのではァなかったのかァアァッァアァ!』
床に激しく叩き付け、苦悶の表情で頭を抱え、
『アッァァァアアアァッァァァアアァァッ!』
目に見える全てを薙ぎ払った。
彼が目にした資料とは、
≪アルブル国占領計画に伴う幼年兵育成機関設立≫
キャシート・フィリィフォームが健在であった頃への逆戻りを示し、宗主国アルブルが抱えた現在の混乱に乗じ、幼年兵を使って「油断を誘い攻め入る」との浅ましい企てであった。
ミトラが自国の将来を想い、周辺諸国との信頼回復に尽力して来た「その全て」が無意味に帰した瞬間であり、悔しさから血の涙を流しそうな眼をして肩で激しく息を切らせながら、
(こんな国などォ!)
歯が折れそうな程の歯ぎしりをさせながら、
(何の後悔も反省も持たないぃこんな恥知らずな国などォオ!)
失望に堪え切れぬ怒りで以て、
『滅んでしまぇばイイッ!!!』
人外の者に変化でもしてしまいそうな咆哮を上げた。
間違いであれば思うミトラに、クスキュートは静かに頷き応え、
「密かに潜り込ませていた我が国の諜報員からの報告ゆえ、間違いない」
「…………」
言葉が出て来なかった。
それでも絞り出す様に、
「そ……それでハクサン様は……」
「異世界勇者一行の手により、御隠れになったらしいとの事だ」
「なんて……」
(キーメとスプライツの消息が未だ掴めないと言うのに、更に一位様(いちいさま)によるアルブル国への襲撃だなんて……いったいどうしたらぁ……)
難題ばかりが募ったが、答えの見つけられない自問自答を繰り返しても意味はなく、一先ずミトラは、
「そ、それで大佐……自分が呼ばれました理由と言うのは……」
するとクスキュートは机の引き出しから書類束を取り出し、
「…………」
静かに彼の前に置いた。
得も言われぬ重々しい空気に、
「拝見しても?」
恐る恐る手に取るミトラ。
そして内容に目を通すなり、
『ッ!!!』
戦慄した。
しかしクスキュートにとって彼の反応は想定内の物であったのか、表情を変えぬまま、
「どうだ? やってもらえないか?」
「…………」
「これはミナー評議員、もとい円卓会議の総意であり、民意でもある」
(これが民意だってぇ!?)
わななく彼から視線を外す事無く、
「貴君も気付いていよう? みな敗戦国としての息苦しさに飽き飽きし、共和国時代の豊かさを求めているだよ」
(!)
確かにそう言った「市中の会話」は彼の耳にも届いていた。
しかし、
(同盟国の犠牲に上に成り立っていたダケの「かりそめの豊かさ」を求めるなどッ!)
怒りは暴発寸前であったが、クスキュートは決断を迫る様に、
「私としては「経験者の貴君を是非に」と思っている。他国の眼があるが故、刑に服している生き残りを強引に出獄させる訳にもいかぬのでな。全ては「故国の豊かさ」を取り戻し、再びの「繁栄」を手にする為」
愛国心に満ちた説得に、ミトラは視線を背けたまま、
「…………」
静かに書類束を机に置き、今にも消えそうなか細い声で、
「少し……考えさせて下さい……」
チカラの無い「形ばかりの敬礼」を残し、
「失礼します……」
部屋を後にした。
打ちひしがれた様子で本部を出て、町を歩き、自室に戻ると静かに扉を閉め、
『ッ!!!!!!』
狂気染みた怒りに任にて軍服の上着を剥ぎ脱ぎ、
『我が国はァ生まれ変わったのではァなかったのかァアァッァアァ!』
床に激しく叩き付け、苦悶の表情で頭を抱え、
『アッァァァアアアァッァァァアアァァッ!』
目に見える全てを薙ぎ払った。
彼が目にした資料とは、
≪アルブル国占領計画に伴う幼年兵育成機関設立≫
キャシート・フィリィフォームが健在であった頃への逆戻りを示し、宗主国アルブルが抱えた現在の混乱に乗じ、幼年兵を使って「油断を誘い攻め入る」との浅ましい企てであった。
ミトラが自国の将来を想い、周辺諸国との信頼回復に尽力して来た「その全て」が無意味に帰した瞬間であり、悔しさから血の涙を流しそうな眼をして肩で激しく息を切らせながら、
(こんな国などォ!)
歯が折れそうな程の歯ぎしりをさせながら、
(何の後悔も反省も持たないぃこんな恥知らずな国などォオ!)
失望に堪え切れぬ怒りで以て、
『滅んでしまぇばイイッ!!!』
人外の者に変化でもしてしまいそうな咆哮を上げた。
0
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる