ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-25

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 調理を未だ始めず、食材の味を確認してばかりいるラディッシュに、パストリスはおずおずと、
「あ、あのぉ、ラディ……さん。料理人のオジサンはぁ、もぅ三品目が完成しそうなのでぇす……」
 顔色を窺うと、緊張の場にあって不意に、

≪大丈夫だから、パストさん♪≫

 ラディッシュが久々となるスキル【キラッキラのイケメンスマイル】を発動。
 光り輝く「爽やかイケメンスマイル」に、

『はぁう♪』

 容赦なくハートを射抜かれるパストリス。
 流れ弾は見守るドロプウォート達にも。
 被弾した女子たちは、

「ひっ、卑怯ですわぁ♪」
「アンタはぁなんてぇスケコマシな笑顔をぉ見せんのさぁ♪」
「そんなぁ笑顔を見せようとぉ主導権は譲りましぇんでぇすのよぉ♪」

 苦言を呈しながらも、そこはかとなく嬉しそうであり、更には野次馬で集まっていた御歴歴の酸いも甘いも噛み分けた、人生経験豊富な女史たちまでもが少女のように両眼をキラつかせ、

『すけこましぃ♪ すけこましぃ♪ チイのパパは「すけこまし」ぃ、なぉ♪』

 言葉のリズムが琴線に触れ、笑顔で連呼するチィックウィード。
 異性問題には、まだ少し早いか。
 娘(仮)の「悪意の無い連呼」に、

「ちょ、ちょっとぉチィちゃぁん!」

 慌てて止めるように促す、無自覚ラディッシュ。
 仲間たちからの苦言に対しても、
「みんなもヒドイよぉ~」
 困惑笑いを見せていると、

『お待たせしたっス、ラディの兄貴ぃ!』

 ターナップが、ラディッシュの手提げカバンを手に戻って来た。
 しかし、
「ん?」
 ふわふわとした空気を漂わせる全ての女性陣と、トゲトゲした空気を漂わせる全ての男性陣を目の当たりに、

「なぁ、何スかぁ、この微妙な空気ぃ? 何かあったんっスかぁ???」

 事情が分からない故にキョトンとしていると、ラディッシュは「女たらし扱い」された話の矛先を早々に変えようと、
「あっ、ありがとうぉ、タープさぁん!」
 荷物を受け取り、少々無理矢理作ったお茶を濁す笑顔で、

「さっ、さぁパストさぁん♪ 僕達も調理を始めるよぉ~♪」

 カバンからケースに入れたマイ包丁を取り出し、調理を始める動きをやっと見せた。
 拭いきれない不安を胸に、
「そ、それでラディさぁん、何を作るのでぇす……?」
 するとラディッシュは鳥系の胸肉を二、三センチ程のブロック状に切りながら、

「とりあえずパストさんは、球根の形をした野菜を切ってもらえるかなぁ♪」

 その笑顔は先程と違い、自然で、穏やかで、春の日向のように優しく、不安は次第に和らぎ、
「は、ハイなのでぇすぅ」
(やっぱりボクは……)
 頬をほんのり桜色に染めながら、

「きゅ、球根って、コレなのでぇす?」

 玉ねぎを思わせる野菜を手に取ると、
「うん。それを半分に切ったら、先端と根を切り落として、繊維を切る向きで、細切りにしてもらえるかな♪」
「は、ハイなのでぇす……それで、何個を切るでぇす?」
「そうだなぁ~人数分を考えて……」
 作業が遅れているにもかかわらず、慌てる素振りも見せず、

(元老院の人の分は三人で、あと、料理長さんとスパイダマグさんと、料理をちゃんと食べられなかった自分たちの分もだから、三+二+七だからぁ……)

 呑気に一考し、

「とりあえず十二個を切ってもらえるかな?」
(えっ?! 今から十二個なのでぇす?!!!)

 内心で驚くパストリス。
 ミネズが既に三品、四品と完成させていく姿を横目にし「間に合うのか」との不安がよぎったが、

(ラディさぁんは、大丈夫と言ったでぇす!)

 彼が見せた笑顔を信じ、

「ハイ、なのでぇすぅ♪」

 屈託ない笑顔で手を挙げると、早速調理に取り掛かかり、肉を切り、球根を切り、キノコを切り、ひたすら切るだけの二人の様子にミネズは勝ちを確信してか、見下す不敵な笑みを浮かべた。
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