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第五章
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料理対決が行われていた会場では、
『何故にこれほどの味が野菜から出るのだ!?』
『この旨味は、いったい何なのだ?!』
『発酵食品とは何だ?! 腐っているとは違うのか?!』
「え、えぇとぉ~」
気圧され気味のラディッシュ。
野次馬元老院たちから矢継ぎ早な、料理に関する「質問攻め」に遭っていた。
実態はソレを口実とした、体(てい)の良い「試食要求攻め」であったが。
食べた事の無い「美味い料理」を口にしてホクホク顔を見せる野次馬元老院たちに、作り甲斐を感じて嬉しく思う半面、追加調理をするたび調理台に山と増えて行く「生ごみ」に、
(これ……どうしよう……)
当惑していると、
『勇者殿! こちらをお使い下さい!』
「?」
スパイダマグが、調理場でミネズが八つ当たりに使っていた「ごみ箱」を差し出した。
とは言え、ごみ箱十五センチ立方に対し、調理台の上には何人分作ったか分からない料理から出た、山盛りの生ゴミ。
普通に考えても、どう考えても容量が足りず、
「え、えとぉ……そのぉスパイダマグさん……」
申し訳なさげに、おずおずと、
「気持ちは嬉しいんですけど、これだと、その、大きさが……」
困惑を滲ませた笑顔を見せたが、スパイダマグは一枚布で隠した口元に笑みを浮かべ、
「問題ありませぇぬ、勇者殿ぉ! 一景を御覧あれぇ!」
球根から剥いだ外皮や根の山を大きな手で無造作に鷲掴みすると、ごみ箱のささやかな丸穴目掛けて次から次へと放り込んで行った。
(((((((…………)))))))
ラディッシュ達が不安げに見守る中、みるみる減っていく生ごみの山。
その一方で、箱はいつまで経っても溢れを知らず、
「ど、どうなってるの?」
興味本位で中を覗き込もうしたが、
『お待ち下さい、勇者殿ぉ!』
スパイダマグが制し、
「安全機能は働いておりますが、迂闊に顔を突っ込まれるのは如何なモノかと!」
「どうして? 汚いから?」
「いえ」
彼は静かに首を横に振り、
「この箱は天技を応用して作られた箱で、投入した物は全て地世に送られるようになっているのです」
「え?!」
「ですから、何かの手違いで吸い込まれでもしましたら、そのまま「地世送り」と言う事に」
「いッ!?」
(そ、そんな「危ない物」がぁその辺に?!)
思わず身をのけ反らせると、話が聞こえたドロプウォート達も思わず後退り。
すると野次馬元老院の一人が「はっはっはっ」と愉快げに笑い合いながら、
「大丈夫ですぞぉ、勇者殿方。それは遥か昔から使われている技術で、各家庭にも普通にあり、未だかつてその様な事故が起きた事など皆無で、しかも、」
やおら手に持つと、何をするのかと見守るラディッシュ達の前で、
「そぉりゃ!」
ガァン!
調理台の角にいきなり激しく叩き付け、
「「「「「「「!!!」」」」」」」
青ざめる勇者たち。
地世のチカラが漏れ出て来たらと心配したが、野次馬元老院の一人は何食わぬ顔して無傷のごみ箱を見せながら、
「ほらぁ、この通り。踏んでも壊れませぬぞ♪」
軽やかに笑って見せた。
しかし、
「「「「「「「ッ!?」」」」」」」
ギョッとするラディッシュ達。
何故なら、それまで無音であったごみ箱が、急に「ぶぉ~ん! ぶぉ~ん!」と異音を立て始めたから。
ミネズが怒りをぶちまけた時と同様に。
「ほっ、本当に大丈夫なんですかぁ?!」
ラディッシュ達は焦りを覚えたが、スパイダマグをはじめとする野次馬元老院の御歴歴は一様に、呑気に笑いながら、
「よくある事ぉ♪」
手にしたごみ箱を、投入口を上にして調理台の上に置くと、
「「「「「「「?」」」」」」」
突如、
「えい!」
ビシッ!
右斜め四十五度の角度から空手チョップ。
すると異音はピタリと止み、
「ほらぁ、この通り♪」
(((((((…………)))))))
何ら問題無い事を笑顔で証明して見せ、
(((((((そんなんでイイんだ……)))))))
些か腑に落ちなさを滲ませるラディッシュ達。
ごみ箱に対する不安は軽減されたものの、その一方で、
(((((((…………)))))))
違和感を覚えていた。
それは、
((((((ゴミを地世に……))))))
今まで地世側がして来た所業を思えば、その様な扱いも「止む無し」と理解出来なくも無いが、
((((((…………))))))
それでもやはり違和感は拭い去れず、幼いチィックウィードでさえ、
「バッチイのぉは、みぃんなチゼ、なぉ?」
すると野次馬元老院の御歴歴は、みな一様に少々の驚きこそ一瞬見せたものの、幼き子供の「戯言(たわごと)」と捉えたのか、当たり前と捉えているのか「ハハハ」と笑い合い、
「地世には構わぬのじゃよ♪」
「地世とは、そう言う場所なのですよぉ♪」
「悪党と穢れの溜まり場には「似合いの扱い」と言うモノぉ♪」
悪びれた様子も見せない一同を前に、
(((((((…………)))))))
文化、価値観の違いと、自身を納得させるより他なかった。
何故ならここは「中世」ではなく「天世」なのだから。
『何故にこれほどの味が野菜から出るのだ!?』
『この旨味は、いったい何なのだ?!』
『発酵食品とは何だ?! 腐っているとは違うのか?!』
「え、えぇとぉ~」
気圧され気味のラディッシュ。
野次馬元老院たちから矢継ぎ早な、料理に関する「質問攻め」に遭っていた。
実態はソレを口実とした、体(てい)の良い「試食要求攻め」であったが。
食べた事の無い「美味い料理」を口にしてホクホク顔を見せる野次馬元老院たちに、作り甲斐を感じて嬉しく思う半面、追加調理をするたび調理台に山と増えて行く「生ごみ」に、
(これ……どうしよう……)
当惑していると、
『勇者殿! こちらをお使い下さい!』
「?」
スパイダマグが、調理場でミネズが八つ当たりに使っていた「ごみ箱」を差し出した。
とは言え、ごみ箱十五センチ立方に対し、調理台の上には何人分作ったか分からない料理から出た、山盛りの生ゴミ。
普通に考えても、どう考えても容量が足りず、
「え、えとぉ……そのぉスパイダマグさん……」
申し訳なさげに、おずおずと、
「気持ちは嬉しいんですけど、これだと、その、大きさが……」
困惑を滲ませた笑顔を見せたが、スパイダマグは一枚布で隠した口元に笑みを浮かべ、
「問題ありませぇぬ、勇者殿ぉ! 一景を御覧あれぇ!」
球根から剥いだ外皮や根の山を大きな手で無造作に鷲掴みすると、ごみ箱のささやかな丸穴目掛けて次から次へと放り込んで行った。
(((((((…………)))))))
ラディッシュ達が不安げに見守る中、みるみる減っていく生ごみの山。
その一方で、箱はいつまで経っても溢れを知らず、
「ど、どうなってるの?」
興味本位で中を覗き込もうしたが、
『お待ち下さい、勇者殿ぉ!』
スパイダマグが制し、
「安全機能は働いておりますが、迂闊に顔を突っ込まれるのは如何なモノかと!」
「どうして? 汚いから?」
「いえ」
彼は静かに首を横に振り、
「この箱は天技を応用して作られた箱で、投入した物は全て地世に送られるようになっているのです」
「え?!」
「ですから、何かの手違いで吸い込まれでもしましたら、そのまま「地世送り」と言う事に」
「いッ!?」
(そ、そんな「危ない物」がぁその辺に?!)
思わず身をのけ反らせると、話が聞こえたドロプウォート達も思わず後退り。
すると野次馬元老院の一人が「はっはっはっ」と愉快げに笑い合いながら、
「大丈夫ですぞぉ、勇者殿方。それは遥か昔から使われている技術で、各家庭にも普通にあり、未だかつてその様な事故が起きた事など皆無で、しかも、」
やおら手に持つと、何をするのかと見守るラディッシュ達の前で、
「そぉりゃ!」
ガァン!
調理台の角にいきなり激しく叩き付け、
「「「「「「「!!!」」」」」」」
青ざめる勇者たち。
地世のチカラが漏れ出て来たらと心配したが、野次馬元老院の一人は何食わぬ顔して無傷のごみ箱を見せながら、
「ほらぁ、この通り。踏んでも壊れませぬぞ♪」
軽やかに笑って見せた。
しかし、
「「「「「「「ッ!?」」」」」」」
ギョッとするラディッシュ達。
何故なら、それまで無音であったごみ箱が、急に「ぶぉ~ん! ぶぉ~ん!」と異音を立て始めたから。
ミネズが怒りをぶちまけた時と同様に。
「ほっ、本当に大丈夫なんですかぁ?!」
ラディッシュ達は焦りを覚えたが、スパイダマグをはじめとする野次馬元老院の御歴歴は一様に、呑気に笑いながら、
「よくある事ぉ♪」
手にしたごみ箱を、投入口を上にして調理台の上に置くと、
「「「「「「「?」」」」」」」
突如、
「えい!」
ビシッ!
右斜め四十五度の角度から空手チョップ。
すると異音はピタリと止み、
「ほらぁ、この通り♪」
(((((((…………)))))))
何ら問題無い事を笑顔で証明して見せ、
(((((((そんなんでイイんだ……)))))))
些か腑に落ちなさを滲ませるラディッシュ達。
ごみ箱に対する不安は軽減されたものの、その一方で、
(((((((…………)))))))
違和感を覚えていた。
それは、
((((((ゴミを地世に……))))))
今まで地世側がして来た所業を思えば、その様な扱いも「止む無し」と理解出来なくも無いが、
((((((…………))))))
それでもやはり違和感は拭い去れず、幼いチィックウィードでさえ、
「バッチイのぉは、みぃんなチゼ、なぉ?」
すると野次馬元老院の御歴歴は、みな一様に少々の驚きこそ一瞬見せたものの、幼き子供の「戯言(たわごと)」と捉えたのか、当たり前と捉えているのか「ハハハ」と笑い合い、
「地世には構わぬのじゃよ♪」
「地世とは、そう言う場所なのですよぉ♪」
「悪党と穢れの溜まり場には「似合いの扱い」と言うモノぉ♪」
悪びれた様子も見せない一同を前に、
(((((((…………)))))))
文化、価値観の違いと、自身を納得させるより他なかった。
何故ならここは「中世」ではなく「天世」なのだから。
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