ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-29

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 料理対決が行われていた会場では、

『何故にこれほどの味が野菜から出るのだ!?』
『この旨味は、いったい何なのだ?!』
『発酵食品とは何だ?! 腐っているとは違うのか?!』

「え、えぇとぉ~」

 気圧され気味のラディッシュ。
 野次馬元老院たちから矢継ぎ早な、料理に関する「質問攻め」に遭っていた。

 実態はソレを口実とした、体(てい)の良い「試食要求攻め」であったが。

 食べた事の無い「美味い料理」を口にしてホクホク顔を見せる野次馬元老院たちに、作り甲斐を感じて嬉しく思う半面、追加調理をするたび調理台に山と増えて行く「生ごみ」に、
(これ……どうしよう……)
 当惑していると、

『勇者殿! こちらをお使い下さい!』
「?」

 スパイダマグが、調理場でミネズが八つ当たりに使っていた「ごみ箱」を差し出した。
 とは言え、ごみ箱十五センチ立方に対し、調理台の上には何人分作ったか分からない料理から出た、山盛りの生ゴミ。

 普通に考えても、どう考えても容量が足りず、
「え、えとぉ……そのぉスパイダマグさん……」
 申し訳なさげに、おずおずと、
「気持ちは嬉しいんですけど、これだと、その、大きさが……」
 困惑を滲ませた笑顔を見せたが、スパイダマグは一枚布で隠した口元に笑みを浮かべ、

「問題ありませぇぬ、勇者殿ぉ! 一景を御覧あれぇ!」

 球根から剥いだ外皮や根の山を大きな手で無造作に鷲掴みすると、ごみ箱のささやかな丸穴目掛けて次から次へと放り込んで行った。

(((((((…………)))))))

 ラディッシュ達が不安げに見守る中、みるみる減っていく生ごみの山。
 その一方で、箱はいつまで経っても溢れを知らず、

「ど、どうなってるの?」

 興味本位で中を覗き込もうしたが、

『お待ち下さい、勇者殿ぉ!』

 スパイダマグが制し、
「安全機能は働いておりますが、迂闊に顔を突っ込まれるのは如何なモノかと!」
「どうして? 汚いから?」
「いえ」
 彼は静かに首を横に振り、

「この箱は天技を応用して作られた箱で、投入した物は全て地世に送られるようになっているのです」
「え?!」
「ですから、何かの手違いで吸い込まれでもしましたら、そのまま「地世送り」と言う事に」
「いッ!?」
(そ、そんな「危ない物」がぁその辺に?!)

 思わず身をのけ反らせると、話が聞こえたドロプウォート達も思わず後退り。
 すると野次馬元老院の一人が「はっはっはっ」と愉快げに笑い合いながら、
「大丈夫ですぞぉ、勇者殿方。それは遥か昔から使われている技術で、各家庭にも普通にあり、未だかつてその様な事故が起きた事など皆無で、しかも、」
 やおら手に持つと、何をするのかと見守るラディッシュ達の前で、

「そぉりゃ!」
 ガァン!
 
 調理台の角にいきなり激しく叩き付け、
「「「「「「「!!!」」」」」」」
 青ざめる勇者たち。
 
 地世のチカラが漏れ出て来たらと心配したが、野次馬元老院の一人は何食わぬ顔して無傷のごみ箱を見せながら、
「ほらぁ、この通り。踏んでも壊れませぬぞ♪」
 軽やかに笑って見せた。
 しかし、
 
「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

 ギョッとするラディッシュ達。
 何故なら、それまで無音であったごみ箱が、急に「ぶぉ~ん! ぶぉ~ん!」と異音を立て始めたから。
 ミネズが怒りをぶちまけた時と同様に。

「ほっ、本当に大丈夫なんですかぁ?!」

 ラディッシュ達は焦りを覚えたが、スパイダマグをはじめとする野次馬元老院の御歴歴は一様に、呑気に笑いながら、
「よくある事ぉ♪」
 手にしたごみ箱を、投入口を上にして調理台の上に置くと、

「「「「「「「?」」」」」」」

 突如、
「えい!」
 ビシッ!
 右斜め四十五度の角度から空手チョップ。

 すると異音はピタリと止み、
「ほらぁ、この通り♪」
(((((((…………)))))))
 何ら問題無い事を笑顔で証明して見せ、

(((((((そんなんでイイんだ……)))))))

 些か腑に落ちなさを滲ませるラディッシュ達。
 ごみ箱に対する不安は軽減されたものの、その一方で、

(((((((…………)))))))

 違和感を覚えていた。
 それは、

((((((ゴミを地世に……))))))

 今まで地世側がして来た所業を思えば、その様な扱いも「止む無し」と理解出来なくも無いが、
((((((…………))))))
 それでもやはり違和感は拭い去れず、幼いチィックウィードでさえ、

「バッチイのぉは、みぃんなチゼ、なぉ?」

 すると野次馬元老院の御歴歴は、みな一様に少々の驚きこそ一瞬見せたものの、幼き子供の「戯言(たわごと)」と捉えたのか、当たり前と捉えているのか「ハハハ」と笑い合い、

「地世には構わぬのじゃよ♪」
「地世とは、そう言う場所なのですよぉ♪」
「悪党と穢れの溜まり場には「似合いの扱い」と言うモノぉ♪」

 悪びれた様子も見せない一同を前に、

(((((((…………)))))))

 文化、価値観の違いと、自身を納得させるより他なかった。
 何故ならここは「中世」ではなく「天世」なのだから。
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