ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-51

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コマクサが拭えぬ懸念に苛まれてしばし後――

 聖都プロンズアルピニスの北地区に、突如として上がる爆音と火の手。
 そして、

『合成獣が出たァアァァァァアッァ!』
『汚染獣もだァアアッァァァァ!』

 再び上がった人々の悲鳴と怒号は、南へ向かって一斉に逃げる。
 同じ場所で同じ事件は「スグには起きない」と、偶然の一致をみた集団心理か、はたまた最初に逃げ出した者の後を「無意に」追ってしまう本能か。
 そんな中、血相を変えて逃げ惑う人々の流れに逆らい満面の笑顔で、

『どけどけぇどけどけぇえぇえぇぇえ!!!』

 両手持ちの大剣を振りかざして突き進むのはサーシアム。

『オメェ等の事はァこの「オレ様」が守ってやんよォオ!』

 勇ましい雄叫びを上げながら人狼の群れに向かって行ったが、そんな彼に「賛辞を贈る者」や「声援を贈る者」は無く、それが天世における「天世の七草サーシアム」の世間一般の評価であった。
 しかし敵を見据えた彼は、気にする風も無く人の流れに逆行し、

『この溜まりに溜った鬱憤(うっぷん)! テメェ等で存分に晴らさせてもらうぜぇ!』

 人目もはばからず「救援の為の戦い」を、平然と「憂さ晴らし」とのたまい斬り掛かった。
 その頃、これから大勢の人が逃げて来る、被害の爪痕が未だ生々しい無人の南地区を、ふらふらと歩く一つの人影が。
 瓦礫と化した家々の間を彷徨いながら、口元には歪んだ笑みすら浮かべ、焼け残ったごみ箱に歩み寄ると、
「…………」
 手に握った「何か」を、投入口から放り込もうとする動きを見せた。
 その時、

『そこの御人。ちょっとよろしいですか?』
「!」

 声を掛けられ振り向くと、そこには一枚布で素顔を隠した、親衛隊の制服を纏った隊員たち複数名の姿があり、
(検証の終わった筈のこの場所にぃどぅして親衛隊がぁ?!)
 心の内で焦りを覚えたのは、宮廷料理人ミネズ。

 何か後ろ暗い所があるのか、彼は平静を務めた様子で、
「あ、アタクシに何か御用ですか?」
 すると班長と思しき隊員は、
「これはこれはミネズ殿でしたかぁ」
 纏う空気を気さくな色に変え、ミネズも内心ではホッとしながらも、

「お、お勤め、ご苦労様です。北地区の方で何か騒ぎがあったようですね」
「えぇ。合成獣が再び出現して親衛隊の別働隊が向かっているところです。それで大勢の避難者が「こちらに向かっている」との情報を得まして、危険が無いか確認をしに」
「そ、そうですか。それはご苦労様です。それではアタクシは少し先を急ぐのでこれにて」

 早々に、足早に立ち去ろうとしたが、

『少々お待ちいただけますかな、ミネズ殿』

 呼び止められ、
「なっ、何でしょう?」
 引きつり気味の笑顔で足を止めて振り返ると、親衛隊の面々は今し方の友好的な空気から一転した、ピリピリとした空気で以て、

「先程から、その「手にしている品」は何ですかな?」
「ッ!」

 思わす数歩後退るミネズ。
 焦りの色を隠し切れず、握り込まれた右手をチラ見し、

「ご、ゴミですよ、単なる。御見せする程の事も無い」
「ならば御見せいただけますかな?」

 得も言われぬ緊張を纏い、半歩歩みを寄せる親衛隊たち。
 その姿に、

(こっ、コイツ等、まさか気付いてるぅ?!)

 息を呑むと、
「「「「「?!」」」」」
「?!」
 急激に近づく、悲鳴と怒号を伴った地鳴りが。
 それは北地区から、命からがら血相を変えて逃げて来た大集団。

 決壊して押し寄せる濁流の如き様であったが、その中の一組である「母親に手を引かれていた幼子」が、人々の流れに乗り切れず押し倒され、

『うわぁ!』
『『『『『ッ!?』』』』』

 隊員たちは短い悲鳴を聞き分け、反射的に振り向いた。
 そこには、急流の中に置かれた石のように抱き合い縮こまる「母子の姿」と、容赦なく次々押し寄せる、自身の命を守る為にヒステリー状態で駆け続ける大勢の人々の姿が。

 母子の命は、まさに風前の灯火。

 一心不乱に逃げる人々に、立て続けに踏みつけられでもしたら、命を落とすは時間の問題。
(((((助けに向かわなければァ!)))))
 隊員たちは瞬間的に思ったが、その間隙を縫い、

(((((!)))))

 逃走するミネズ。
「クッ!」
 班長と思しき隊員は彼の「使命感に付け込んだ愚行」に苛立ちを覚えながらも、避難者の数と勢いを瞬時に分析し、

『二人は「ミネズの確保」を!』
『『了解しました!』』

 ミネズを追わせ、班長を含めた三人は即座に母子救出へ向かった。
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