ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-52

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 逃走するミネズの背を追う親衛隊隊員の二人――

 素性が知れた身で、今さら何処へ逃げようと言うのか。
しかしその背はなりふり構わず全力で逃げ、

『止まりなさァい、ミネズ殿ォ!』
『止まりなァさ!』

 追いながら静止を促したが、彼は一向に立ち止まる様子さえ見せず、
(止むを得ん!)
 隊員の一人が強硬手段の決意と共に走りながら、

≪天世の恩恵を以て我は願う!≫
 その身を白き輝きに包み、
≪拘縛(こうばく)!≫

 右手を振るうと、白き輝きの一部が鞭のようにしなってミネズの「不格好な全力疾走の背」に向かって伸びて行き、

「!」

 胴に巻き付かれた彼は逃走の疲労も重なり、
「うわぁ!」
 躓(つまず)き地に転がった。

『大人しく縛に就きなさァい、ミネズ殿!』

 即座に駆け寄る、隊員二人。
 地に転がる彼を見下ろし、

『調べは付いているのですよ!』
(!)

 ミネズは悟った。
 一連の事件への関与が、既に露見している事実を。
 今更ながら、

(つっ、捕まれば重刑は免れない!)

 事の重大さを認識した彼は、

(なればぁ!)

 何を思ったか、右手に握っていた「何か」を自身の口の中に放り込んだ。
 それは幾つかの黒い粒状の物で、

『何か飲み込んだぞぉ!』
『自決する気なのでは?!』

 隊員二人が慌てると、天法の白き縄に巻き付かれ横たえていたミネズは急に、

『ぎぃやぁわぁあぁぁ!』

 人とは思えぬ悲鳴を上げ、
「「!?」」
 それと呼応する様に、焼け残ったごみ箱や、先日の戦闘で合成獣が倒れた痕跡など、周辺に存在する「地世と縁(ゆかり)を持った場所」から黒いシミが滲み出て来て、彼を目指して集まり始め、

『『何だコレは!?』』

 咄嗟に飛び退く隊員二人の前でミネズの全身にまとわり、じわじわ体の中に浸透して行き、

『熱い、熱いぃぉ! 体がぁやけるぅウぅゥッ!』

 拘束されたままのたうち回り、

「なっ、何なんだぁ!」
「何が起ころうとしてるんだァ!」

 慄く隊員たちの前で、体を「黒き輝き」で発光させ、

『ギャアシャアァアァァァ!』

 獣のような雄叫びを上げながら、その姿を徐々に人狼に変えて体躯を肥大化。
ついには天法による光の拘束を、手も使わず弾き飛ばし、

『ばっ、馬鹿な!』
『地世のチカラで天世の拘束を打ち破るなど!』

 驚愕の声を上げたが、驚いている場合では無かった。
 集まった地世のチカラは膨大で、人狼と化していくミネズの全身から黒煙として溢れ出すと隊員の一人がまかれ、
「う、うわぁあぁ何だコレはぁあぁぁ!」
 振り払おうとするが払えず、もう一人の隊員がスグさま、

『今助けるっ!』
≪天世の恩恵を以て、≫

 前小節を唱えてその身に白き輝きに包み始めたが、詠唱が終わるより先、

「やっ、やめぇ、うわぁあっぁぁぁああっぁ!」

 その姿を人狼へと変え始めてしまい、
(このままでは自分も巻き込まれるっ!)
 口惜し気に大きく飛び退いた。
 しかし、

『ッ!』

 足首に巻き付くは、地世の黒煙。
 既に自身も囚われの身であるの気付いた彼は即座に、

≪天世の恩恵を以て我は願う!≫

 前小節を唱えてその身を白き輝きに包み、黒煙を霧散させたが、
「なっ!?」
 ミネズから溢れ出る膨大な「地世の黒煙」は津波のように押し寄せ、彼を輝きごと飲み込み、
(もはやこれまでかぁ!)
 死を覚悟したが、

『そんな事はさせない!』

 勇ましい声と「白き輝きの一刀」の下に地世のチカラを斬り払い、彼を救ったのはラディッシュ。
 天世の剣である「天流護聖剣」を振りかざし、仲間たちと共に、

『これ以上の被害は出させない!』

 身構えた。
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