ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-12

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 しばし後――
 
 ターナップの生家でもある教会の中から、

『ふぉふぉふぉ!』

 聞こえて来たのは大司祭の、愉快げな高笑い。
 誤解が解けたのか、自嘲気味に笑いながら、

「確かにのぉ。ちょっと考えれば分かりそうな事じゃったわぁい♪ 確かに「血の繋がり」が無くとも。信頼しおぅておれば家族じゃて。それに、」

 小さく苦笑すると、
「血の繋がりがあるのに「信頼できぬ者」もおる。のぉ、ドロプウォート様ぁ」
 彼女の叔父である「父親の実弟」を暗に差し、

「あはははは……確かにですわぁねぇ」

 身内の恥を、笑ってお茶を濁すより他ないドロプウォートと、くつろぎの仲間たちであったが、その輪にターナップの姿だけが無く、
「あれ? タープさんは?」
 ラディッシュの気付きに、

「そう言えば居りませんですわねぇ?」
「ウチも気付かなかったさ」
「でぇすでぇすねぇ」
「いつも騒がしい分、静かに不在にされると気付かぬでぇありんすぅ」

 周囲を見回すと、チィックウィードと手遊びをしていた大司祭が、何処か寂し気な笑みで以て、
「両親に会いに行ったのじゃろぉ」

(((((両親って確か……)))))

 幼少期に汚染獣の大群に襲われ、既に亡くなっていたのを思い出すと、悲しみを敏感に感じ取ったチィックウィードが不安げな眼差しで大司祭を見上げ、

「タープぅのじぃじぃ、おむねイタイイタイなぉ?」

 幼子の気遣いに、大司祭は微笑を浮かべながら、

「痛くないと言ったら嘘になるがのぉ、チィちゃんが心配してくれたからもう平気じゃよぉ。じゃからチィちゃん、笑ってくれるかのぉ?」

 するとチィックウィードは、

「じぃじぃのために、えがおイッパイするなぉ♪」

 無垢なる満面の笑顔を見せ、仲間たちもその笑顔に心が軽くなる思いがした。
 その頃ターナップは大司祭が言った通り、両親の墓石の前に屈んでいた。

 祖父と似た微かな笑みを浮かべ、
(すまねぇオヤジ、オフクロ。中々顔を見せに来れねぇでぇ。まぁ、便りが無ぇのが「元気な知らせ」とでも思っててくれやぁ)
 苦笑して見せると、唐突に、

『見つけたぞぉゴルァアァァァアアァ!』

 明らかにターナップに向けられた、墓所には不似合いな怒声が。
(なんだ?)
 振り返ると、ヤンキー張りにイカツイ顔した、目つきの鋭いモヒカン頭が、

『死ねぇやゴルァ!』

 ジャンプ一番、ターナップ目掛けて右拳を振り下ろして来て、
「なんだぁあんだぁ?! 何ごとだぁ?」
 咄嗟に飛び退き、難なく回避。
 しかし「謎のモヒカン頭」は右拳が空を切るや、着地するなり、

『逃げんなやぁゴルァアァ!』

 素早く地を蹴り土煙を上げ、再び右拳を振りかざして猪突猛進、足を止めたターナップの顔面目掛けて、

『死にさらせぇやぁあぁ!』

 拳を容赦なく振り抜き、
 バッバァシィイィィィィィイイィィ!
 肉と肉が激しくぶつかり合う音が響き、右拳に伝わる確かな手応えに、
「クヒヒィ♪」
 ニヤリと笑うモヒカン頭であったが、

「んなっ!?」

 拳はターナップの顔面に届いてはいなかった。
 ターナップは彼の勢い、体重、全てが乗った一発を、
(ばっ、馬鹿な! オレっちの鍛えた素手ゴロの一撃を、右手一本で受け止めやがっただとぉ!?)
 慄いたのも束の間、

『痛っえぇじゃねぇか、鳥頭がァアアァァ!!!』
 バァバキィーーーッ!

 豪快に左拳で殴り返され飛ばされ、返り討ち。
 翻筋斗(もんどり)打って、ど派手に地に転がり、
「かぁ……」
 たった一撃で、意識の全部を持って行かれた。

 ボロ雑巾のように地に横たえる、憐れな謎のモヒカン男。
 そんな彼の眼に、最後に映ったのは徐々に近づくターナップの足先と、
「ったく痛ぇなぁ、あんなんだぁコイツぁいきなりよぉ? ってか、コイツが着てるのウチの修道服じゃねぇかぁ」
 呆れ声であった。
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