ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
368 / 895
第六章

6-20

しおりを挟む
 村に戻ったラディッシュ達――

 掟を破った子供たちとインディカを待っていたのは当然の如く、親たちと大司祭からの大目玉。
 ラディッシュの取り成しもあってお説教もそこそこに、安堵の両親と抱擁し、泣いて謝る子供たちであったが、インディカはあまり骨身に応えた様子も無く、むしろ危険に身を晒した事で、

≪箔が付いた!≫

 漢を上げたと言わんばかりの、満足げ。
 そんな彼の姿に困惑笑いのラディッシュと、呆れ笑いの仲間たちではあったが、地世の七草サロワートの件があり、マッタリしている場合では無く、妖人の村であり、盗賊村でもあり、パストリスが生まれ育った場所でもある村に向かう支度を早々に始めた。
 そんな中、

『パストさん』
「?」

 ラディッシュに呼ばれて振り返るパストリス。
 そこには不安げに見つめる顔があり、彼は彼女の顔色を窺うように、

「今回の遠征には、無理して参加しなくても良いんだよ?」
「!」

 パストリスは驚きを見せ、準備中であった仲間たちも驚きを見せたが、彼女はラディッシュの「心優しき意図」を瞬時に理解し、陰りの無いニコやかな笑顔で、

「大丈夫なのでぇす、ラディさん♪」

 気遣いには感謝しながらも、
「ボクの心の整理をつける為にも、今は行きたい気分なのでぇすぅ♪」
 屈託無い笑顔。
 その笑顔に、

「「「「「「…………」」」」」」

 仲間たちは「これから向かう村」で、彼女が数々の辛い憂き目に遭って来た話を思い出した。
 すると彼女の並々ならぬ決意に触発されてか、ドロプウォートが唐突に、

『私は村に残る事にしますわ』
「「「「「「えぇ!?」」」」」」

 ラディッシュ達が動揺を隠せずに居る中、彼女は努めて平静に、
「地世の七草が「どの様な策」を弄しているか不明の今、私はこの国の四大貴族が一子の責務として、先ずは「この村の人々」を守らねばなりませんのですわ。ですから、」
 ラディッシュを真っ直ぐ見据え、

「七草の彼女への対応は、貴方にお任せ致しますですわ」

 身を裂かれる想いを内に秘めての、彼女なりの決意であった。
(コイツッ!)
 本意を隠す彼女に苛立ちを覚える、ニプルウォート。
『はいはい、ちょ~と待つのさぁ~!』
 話に割って入り、

「誓約者のアンタが勇者と離れてどうすんのさぁ? それに村を「守るダケ」ならぁウチにも出来んだろぅさ」
「そ、それは、」
「敵軍大将討伐と現地調査も「民を守ると同意」で、四大としてぇ重要なんじゃないかと言ってんのさぁ~それとも何かぁい? アンタはウチが「村も守れないボンクラだ」とでも思ってるのかぁい?」
「そんな……」

 正論の数々に返す言葉を失うと、ニプルウォートは皮肉った笑みを浮かべ、
「この地と縁(えにし)の薄いウチが出掛けたところで、結局は野次馬根性に毛が生えた程度の物見遊山にしかならないしさぁ」
 部屋から去り際、ドロプウォートの耳元に、彼女にしか聞こえない小声で、

(アンタは、もぅ少し自分の気持ちに素直になってイイんじゃないさ)
「え?!」

 本音と職責の狭間で思い悩む内心を見透かされていたと知り、驚き、振り返る彼女をその場に残し部屋から出て行った。


 少し日が傾き始めた村の中をそぞろ歩くニプルウォート――

 やがて小川の土手まで来ると、
「…………」
 川縁に静かに腰を下ろし、

(ウチも大概だねぇ……)

 煌めく水面を少し寂しげな表情で見つめながら、
(なにが「素直になれ」さ……自分だってラディに付いて行きたいのに、カッコつけてぇさぁ……)
 自嘲していると背後から、

『おぅおぅカッコウぅつけ過ぎなんじゃねぇのかぁ、ニプルさんよぉ~』
「!」

 見透かし、からかう男の声が。
 しかし相手が誰なのか分かっているニプルウォートは振り向きもせず「へっ」と小さく笑い、声の主が傍らに並んで座るや否や、

「この時宜に「ここに来た」って事ぁアンタも辞退ってかぁい?」
「ん? まぁなぁ~」

 苦笑して見せたのはターナップ。

「アンタも大概お人好しだねぇ~無理しちゃってさぁ。本音はパストに付いて行きたいだろぅにぃさぁ」
「ハン。んなぁモン、お互い様だろぅ?」
「まぁ、そぅさなぁ~♪」

 二人が小さく笑い合っていると背後から、

『あらぁあらぁ二人揃って「鞍替え」でありんすぅ~?』
『『誰が鞍替えかぁ!』』

 誰の声か分かっている上で、即座にツッコミを入れるニプルウォートとターナップ。
 そんな二人の前に立っていたのは、妖艶な「からかいの笑み」を浮かべたカドウィードであったが、
((!))
 彼女の真意が「からかい目的」ではないのを瞬時に悟った二人は、返す「からかいの笑み」を揃って浮かべながら、

「上っツラや物言いは変わってもさぁ~♪」
「素直じゃねぇ中身までは、変わんねぇのなぁ~♪」

 見透かした物言いに、

『のぉなぁ!?』

 ギョッとするカドウィード。
 自分も「二人と同類である」と早々に見抜かれるなど考えもしなかったようで、羞恥を交えた驚きを顔に出してしまったが、今さら取り繕ったところで後の祭り。
 瞬時に気持ちを切り替え、苦笑交じり、
「そうでありんすぅ、アタシも同じにありんすぇ」
 見透かされていたのを悔し気に、

「パストが辛い過去と向き合おうとしている中ぁ、それを知らない新参のアタシが行ってもぉニプルのぉ言った通り、興味本位の野次馬にしかならないのでぇありんす」

 二人の傍らに座り、
(((もっと早くに知り合って居れば……)))
 いつもは勝ち気な三人組が「気遣い」と「本音」、そして「嫉妬」が入り混じったとりとめのない想いから愁い、水面(みなも)を眺めていると、

『『『!!!?』』』

 三人は同時にビクッと驚いた。
 背に体当たりする様な勢いで、急に誰かに抱き付かれたのである。
 完全に気を抜いていた訳ではない。
 しかし、勇者と行動を共にする程の実力者三人が、

(((気配に気付けなかった?!)))

 恐る恐る、三人揃って振り返ると、

『ビックリしたなぉ♪』

 満面の笑顔を見せたのは、チィックウィード。
 彼女も「ここに来た」と言う事は、幼いながらに「三人と同類」である事の表れであり、それが分かったニプルウォート。ターナップ、カドウィードは苦笑し合い、

「やっぱぁ「類は友を呼ぶ」のさなぁ~」
「長く居りゃぁ、そりゃ「似て来る」ってぇ事かも知れないぜぇ~」
「ほんにぃイヤぁでぇありんすなぁ~」

 辟易笑いをする三人にチィックウィードは、
「ニヒヒィ♪」
 愛らしい笑顔を見せながら、

『みんなナカヨシなぉ♪』

 笑って見せた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

処理中です...