ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
409 / 895
第六章

6-61

しおりを挟む
 入村して早々の騒ぎの後――

 イリスからの、
≪情報を集めるなら酒場だろう≫
 ベタ過ぎる提案に、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 躊躇を覚えるラディッシュ達ではあったが、村内を闇雲に歩き回っても非効率な上、新たなトラブルを誘発するとの考えに思い至り、一先ず彼女の提案に乗っかる形で、目に付いた酒場に足を踏み入れる事にした。
 異色すぎる一団の入店に、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 異物を見る眼を向ける、イカツイ客たち。

 しかし小さい村ゆえに、先の騒ぎが既に広まっているらしく、ちょっかいを出す「強者(愚者)」は皆無であった。
 一様に迷惑顔ではありながらも。

 年配の店主も不要のトラブルを警戒してか「露骨な迷惑顔」でこそあったが、接客業と言う事もあり、
「何か飲むのか?」
 仏頂面した、ぶっきらぼう。
 来店客に対する、飲食店経営としてあるまじき塩対応に、
(飲むのか、って……)
 思わず苦笑するラディッシュ。

 指摘したい気持ちはあったが、その様な勇気はハナから無く、また「歳下からの指摘」にヘソを曲げられ情報が聞き出せなくなる可能性もあり、加えてラディッシュ達はこの世界においても未成年。
 当然、飲酒は禁止されていて、

「ご、ゴメンなさい。僕たち未成年なんです。だからお酒は、」
『だったらとっとと帰りな』

 店主は素気無く追っ払う仕草を見せ、
「ここは「大人が飲む店」だ」
「で、でも僕たち情報が、」
 少ない勇気を振り絞って食い下がろうとすると、チィックウィードがラディッシュのズボンの端を引っ張り、

「パパぁ」
「?」
「オナカすいたなぉ……」

 その弱り切った悲しげな顔に、
「!」
 ハッとするラディッシュ。
 何ごとか気付きを見せた彼はすかさず店主に、

「それなら何か食べ物を!」

 注文して飲酒代わりの情報料にしようと思い立ったが、

『ここは「大人が飲む店」と言った』

 店主は聞く耳持たずに切って捨て、
「…………」
 ラディッシュは下を向いた。

(やっぱり僕って、無力だ……)

 落ち込みを見せると、店主の対応に苛立ちを覚えていた仲間たちのうち、我慢と言う物を知らぬイリスが皮肉な笑みを浮かべながら、
「よしとけぇよしとくさぁねぇ、ラディ」
「?」
「こんな場末の酒場の飯なんぞ食ってぇぼったくられた挙句、チィが腹でも下したらどうするさねぇ♪」
「!」
 店主が眉間に不快な深いシワを寄せ、

「「「「「「!?」」」」」」

 焦りを覚える仲間たち。
 情報が聞き出せなくなる可能性にラディッシュは慌てに慌て、
「ちょ、イリィ! しっ、失礼だよぉ!」
 しかしイリスは常連客たちがせせら笑う中、何食わぬ顔で、

「アタシの言った事が「気に入らない」ってんならぁ、ウチのラディと料理対決をしてみぃなやぁね、なぁ店主ぅ?」
「何だと?」
「えぇ?!」

 苛立ちから怒りに顔色を変える店主と、寝耳に水でギョッとするラディッシュ。
 そんな二人を尻目に、
「勝ったらアンタの持ってる情報を話してもらさぁねぇ」
 彼女は騒ぎを更に煽り立てるように、

「まぁっもっともぉ、こんな「場末の酒場の安酒」で満足してる程度の客を相手にしてるアンタじゃ、「ウチのラディ」に勝てる筈がナイさぁねぇ~♪」

 これには他人事と嘲笑いを決め込んでいた常連客たちもカチンと来て、

「言うじゃねぇかネエチャンよ!」
「誰が「この程度」だ!」
「オヤジ! ガツンと見せたれぇ!」
「若造どもの鼻っ柱を叩き折ったれぇ!」

 騒ぎを聞きつけ集まった野次馬連中と共に、買い言葉の大合唱。
 対決の空気は否応無し高まり、
(キッシッシッ♪)
 腹の中で、してやったりのイリス。
(どうせぇ金を払ったって本当の情報を言うか分からない連中さねぇ。だったら「商売人としての誇り」とやらを叩き折って、ベコベコに弱らせた上で、知ってる真実ってヤツを吐かせた方が確実なのさぁねぇ♪)
 底意地の悪い企てを以て、

『さぁあてぇ、どうするよ店主さぁんよぉ? 逃げるかぁい?? どうするさねぇ???』

 答を迫る彼女に、
(((((絶対に楽しんでる……)))))
 見透かした苦笑を浮かべるニプルウォート達。

 すると店主は、飲食店店主としてのプライドからか、客の熱に当てられてか、引くに引けない所に追い詰められた故か、
「仕方ねぇ」
 重く腰を上げ、

「その勝負、受けて立とうじゃないか。ただし、」
「あん?」
「判定は公平を期す為、客を含めた全員の判定にするが、それでも良いのか?」

 その数、数十名。
 しかし「逃げ」を嫌うイリスは二言返事で、

『あぁ構いやしないさねぇ♪』

 斜に構えた笑みに、
(((((!!!)))))
 ドロプウォート達が慌てて取り囲んで、語気強めの責めるような小声で、

(ちょ、イリィ! 貴方は状況が分かってますの!)
(アンタが煽ったせいで今は完全敵地さ!)
(数でぇ圧倒的不利にありんすぇ!)
(客どもが意趣返しにわざと「マズイ」っつったら、どぅスンだぁ!)
(なのでぇす! なのでぇす!)

 しかし彼女は何処から来る自信なのか、

『ハァン。それでも「ラディの飯」が負ける筈がナイのさぁねぇ♪』
(((((!?)))))

 仲間たちの不安を一蹴し、
「それに負けたところで情報が得られないだけで、コッチの腹は別に、」
 痛みはしないと言おうとすると、店主がすかさず、

「因みにそっちが負けた場合、かかった費用は利子付きで、全額払ってもらうからな」
((((((ナンジュウニンブン×2ぃ!?))))))

 ギョッとした眼差しをイリスに一斉に向けると、彼女にとっても想定外の意趣返しであったのか内心ギクリとしたが、それでも「ラディッシュの飯の勝利」を信じ、それを心のよりどころに表面上は平気を装い、
「大丈夫、大丈夫さぁねぇ♪ ウチのラディが「唯一取り柄の料理」で負ける筈がナイさぁねぇ~♪」
 さりげにディスる余裕まで見せたが、

『元宮廷料理の意地を見せてやれぇ、オヤジィ!』
((((((キュウテイリョウリニン?!!!))))))

 客の中から店主に飛んだ声援に、背筋が凍る勇者一行と、
(そんな話は聞いないさねぇーーー!)
 心の中で頭を抱えるイリス。
 挑発して対決に持ち込んだ自分に今更ながら後悔を覚え。

 破産の二文字が頭をよぎる「懐事情が寒い勇者一行」は、必死の願いを込め、

『『『『『『『ガンバってぇ!!!』』』』』』』

 チカラ強くラディッシュに声援を贈った一方、贈られた当人は、不幸中の幸いと言うべきか「店主が元宮廷料理」であった件(くだり)は耳に届いていなかった様子で振り返ったが、

『んがっ、ガぁンバリまふゅぅ』

 過度の緊張で引きつった顔した、噛み気味の決意表明に、
(((((((…………)))))))
 不安しかない、仲間たちであった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。

藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。 気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。 訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。 そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。 魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。 連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。 それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。 一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。 本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...