ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-79

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 イリスがお約束の落ちを見せてしばし後――

 ラディッシュ達の姿は、アルブル国に最も近い違法村にあった。
 アルブル国の復興状況を確認する目的がありながら、何故に入国しなかったのか、それは、

≪アルブル国の復興後見人である勇者一行として入国しては忖度され、見えなくなる現状がある≫

 国政の近くに居たドロプウォート、ニプルウォート、カドウィードの意見を取り入れた結果であり、書類上では見えて来ない実情を知る為、一先ずの情報収集として立ち寄ったのであった。
 そこには、

≪役人は自身の査定に響くから良い話しか上げて来ない≫

 役人と言う人種に対する「三人の恨み節」も見え隠れ。
 意外であったのは、イリス。
 決め事があると、必ずと言って良いほど注文を付けたがる彼女が今回に限っては、

≪アタシぁモノノケのように、アンタ達に「憑いて歩くダケ」さぁねぇ~♪≫

 自虐的な物言いでケラケラと笑うだけで、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 ラディッシュ達は違和感と共に、予感めいた「漠然とした不安」を抱いた。

 とは言え理由の分からぬ不安感にヤキモキしていても時間は歩みを止めてはくれず、宿を取ると三々五々、アルブル国の情報収集に散った。
 しかし、

「どぅ~するぅ~?」

 困惑顔をするのはラディッシュ。
 情報収集を終えた仲間たちと合流し、歩きながら結果報告を出し合う中、聞こえて来たのは立場が違えば見方も変わる「ふわっとした噂話」ばかり。
 これではアルブル国に直接入国したのと何ら変わらぬ状態で、

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 途方に暮れ、仲間たちと村内を漫然と歩いていると、

『アルブル国復興作業員の募集だよ~ぉ! 長期、短期、日雇い、年齢ぇ身分も問わないよ~ぉ!』

 呼子の声が聞こえて来た。
 四国同盟の一角を担う国家としてのプライドを度外視した、セキュリティもへったくれも無い、なりふり構わぬ、人員不足を露呈した募集であったが、

((((((((これだ!))))))))

 曇っていた表情を一変させるラディッシュ達。
 正に、渡りに船。
 アルブル国の現状を、役人に知られず探るには絶好であった。

『行こうぉ♪』

 ラディッシュが先陣切って、大手を振って呼子の下に歩み寄ろうとすると、

『『『『『『『ちょーーーとぉマッタぁあ!』』』』』』』

 仲間たちが首根っこ掴んで強引に引き止め、

「ぅえぇ?! 何?!! なんで止めるのぉ?!!!」
 困惑する彼に、
『『『『『『『なんでじゃナイっ!』』』』』』』

 苦笑のツッコミ。

「何を考えてますわのぉラディ!」
「へ?」
「「へ」じゃナイさぁ! アルブル国の復興事業の交渉は誰がしてるのさぁ!」

 ドロプウォートとニプルウォートの詰め寄りに、
「僕だけど……」
 今さら何をと言わんばかりの顔をする彼であったが、

「あっ……」

 とある、最も基本的な失念に気が付いた。
 現場担当者たちに顔が知れ渡っている自分が作業に加わっては、潜入調査の意味が無い事に。
 結果として居残り組は、ラディッシュと、アクア国の冒険者に「狙われているイリス」、それに加え「幼いチィックウィード」。

『なんでぇなぉ! チィもオシゴトできるなぉ!』

 憤慨する幼女。
 年齢不問の募集とは言え、流石に「年端もいかぬ彼女」が作業員として受け入れられる筈も無く、加えて無用の混乱(※チィックウィードの駄々)を回避する為、

≪イリィには護衛役が必要なんだよ♪≫

 父(仮)ラディッシュの甘言に気を良くした彼女は、

「まかせるぅなぉ♪」

 態度を一転させて快諾した。
 組み分けと活動方針が決まった一方で、気になる噂も。
 ターナップが仕入れて来た情報で、

≪天世の怒りを買ったアルブル国が勇者支援四国同盟から外されるのでは≫

 天世側のゴタゴタが原因とは言え、天世に弓を引いた事が原因とされる、出どころ不明の話であったが、火のない所に煙は立たぬ。
 工事の人員が集まりにくい理由の一つが、そこにあった。

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 言い知れぬ不安を抱えつつ、作業に参加するドロプウォート、パストリス、ニプルウォート、カドウィード、ターナップが、募集書類に「偽名」と「偽の経歴」を書いて、呼子と居並ぶ係員に手渡した。
 しかし、

「…………」

 怪訝な視線を向けられる五人。
(な、何か私達……怪しまれてませんですわのぉ?!)
(で、でぇすでぇすねぇ……もしかしてぇバレてるのでぇす?!)
(か、髪の色くらい染めて来れば良かったさぁ?!)
(い、今さらでぇありんしょぉ?!)
(と、とにかく今は愛想良くするしかねぇっスよぉ!)
 ターナップの締め括りに、仲間たちは小さく頷き、

 ニコリ♪

 多少引きつりが交じった愛想笑いを浮かべると、

『アンタらもぉ好きだねぇ~♪』

 係員は愉快そうに笑い出し、
(((((へ?)))))
 キョトン顔の五人に、

「今までも勇者一行と「髪の色」や「格好」を真似る連中は何人か居たけどねぇ~アンタ達みたいに、メンツまで揃えて来たのは初めてだよぉ~。よっぽど好きなんだねぇ~」
(((((コアなマニアと思われてるぅ?!)))))

 今の五人にとっては「ありがたい誤解」であったが、コスプレ集団扱いされている事に、

「「「「「…………」」」」」

 釈然としない思いを抱きつつ、不採用にならないよう目一杯の愛想笑いで濁すと、五人から「不穏な圧」を感じた係員は、
「?!」
 手渡された書類に、事務的に目を通しながら、

「ま、まぁコッチとしては仕事だけキチンとしてくれれば、あとの趣味や嗜好は問わないからねぇ」

 色物扱いに、
(((((趣味や嗜好……)))))
 作り笑顔の下に隠した内心に、

「「「「「…………」」」」」

 若干の苛立ちを覚えた。
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