ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

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逃走用に確保した二艇のうち、一艇にはターナップが既に操船席に座り、パストリス、チィックウィードが乗っていて、ラディッシュ達はカドウィードに従い彼女のボートに乗り込むと同時、

≪天世より授かりし恩恵を以て我は願う!≫

 ターナップとカドウィードはそれぞれ天法を発動。
 その身を包む「白銀の輝き」を舵輪に注ぎ込むと、ボートは甲高い唸りを上げ、
「「「「「「!」」」」」」
 仲間たちがボートの縁(へり)に即座に掴まるや否や、

『逃げるでぇありんすぇ!』

 カドウィードの一声で二艇は急発進。
 水しぶきを勢いよく上げ、急加速で水上を走り出した。
 その頃、ニプルウォートが撒いた煙の中からおっとりがてら、

『『『『『『『『『『待てぇーーーーーーっ!』』』』』』』』』』

 飛び出す騎士、兵士たち。
 ボートで逃走するラディッシュ達の姿を目の当たりに慌てて残りのボートに飛び乗ったが、

『『『『『『『『『『舵輪が無ぁーーーいっ!』』』』』』』』』』

 天法を注入して操船する為の舵輪が引き抜かれ無くなっていた。
 水の都で船を使って逃げる相手を、陸路で追って捕えるなど不可能であり、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 逃げるラディッシュ達を、ただ呆然と見送るしかない、騎士、兵士たち。
 そんな彼らの様子を、逃走を続けるボートから、
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
 安堵の息で見つめるラディッシュ達であったが何かを目の当たりに、

『『『『『『『『なんですとぉお!!!?』』』』』』』』

 驚愕した。
 それは、何処からともなく現れた「同じ紋章を持ったボート」群。
 猛スピードで迫る姿に、未だ頭痛が治(しず)まらない様子のイリスは痛みに額を押さえながらも、

『しくじったさねぇカディ!』

 目くじら立てるとダメ出しに、
『騒ぎをデカくした張本人が「カディの保険」に文句言ってんじゃないさぁ!』
 ニプルウォートがキレ、
『罵り合ってる場合ですわのぉ!!!』
 ドロプウォートが割って入ったが、その間にも乗員数で「重量的に有利」なディモルファンサ私兵のボート群は四方八方から急接近。
 瞬く間に距離を縮めて来て、

『直(じき)に天技の射程内に入りましてですわよぉ!』

 ドロプウォートの焦りの声に、ニプルウォートもボートから振り落とされないよう縁にしっかり掴まりながら、

『船の使い方を教えたのアンタだろうさぁイリィ! 船を大破させる事なく止める方法は無いのさァ!』

 するとイリスは何か思い付いた様子で、緊迫のさ中に平静に、

「人と違って「物の天技」は、どう言う仕組みで発動させてるか知ってるさぁねぇ?」
『講釈している場合ですわのぉ!』
『そんなモン! 固有の天技が刻まれた鉱石に天法を流し込んで使ってる! 子供でも知ってるソレが何だってのさぁ!』

「原理はコイツも同じさねぇ。しかし、ちょいと違う所があってさぁね、安定して使う為に天法を一旦溜めて、溢れた分で天技を発動させて、」
『『だから何(ですわのぉ・なのさぁ)!』』

 もどかし気に急く二人にイリスは辟易顔して、

「察しが悪いさぁねぇ~鉱石の場所が分からなくとも、天法が過剰に蓄積されている所を感知して、射抜けば船は止まると言ってるのさね」
『『出来るかぁーーー!』』

 思わず苦笑でツッコム、ドロプウォートとニプルウォート。
「理論上は可能としてもですわよ! 高速航行している小型の船の「天法が強く感じられる場所」を特定した上に正確に射抜くなどぉ!」
「舞い散る花びらに空中で縫い針を通す曲芸じゃないさぁ!」
 呆れ叫ぶ二人は、

『もっと簡単な手段はありませんわのぉ!』
『このままじゃ追い付かれちまうさぁ!』
「…………」

 黙る、イリス。
 彼女の中に「もっと簡単」で「容易に船を止める方法」が、無い訳ではなかったから。

 不確かな的を狙わずとも、ごく僅かのリスクで確実にボートの足を止め、追跡を振り切る方法が。
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