ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

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 船着き場で下船するラディッシュ達――

 愛想の良かった船頭と笑顔で別れ、青空の大地に降り立つと、ラディッシュ達は久々の陸を堪能するかのような笑顔で、
『うっ、うぅーーーーーん♪』
 空に向かって大きく背伸び。

「なぁ~んかぁ地面が揺れてる気がするねぇ~♪」

 長時間、船に乗っていたが故に起きた「未知の感覚」に笑い合ったが、一人、
「…………」
 浮かない顔の仲間が。

 イリスである。

 頻度が増した頭痛も手伝ってか、あまり良いとは言えない顔色に、ニプルウォートが彼女らしい言い回しの気遣いで以て、
「だらしないねぇ~イリィ。水の国アクアの人間ともあろう者が船酔いとはさぁ~♪」
 からかいを交えて皮肉った途端、

『イリィッ!』

 咄嗟に支えるラディッシュ。
 イリスが前触れなく膝から崩れ落ちになり、慌ててそれを支えたのである。

「大丈夫イリィ!?」

 溢れる不安を隠せない表情で仲間たちが見つめる中、彼女はラディッシュに支えられながら、血の気が失せた真っ青な顔を見せながらも気丈に「キィシッシッ」と自嘲気味に笑い、
「ニプルの言う通り、酔っちまったのかねぇ……家(城)を前に……まったく情けない話さねぇ……」
 流す汗の量は尋常ではなく「只事ではない」と感じたラディッシュは「迷惑を掛ける」と嘆く彼女を宥め抱き支えながら、

『とにかく休める宿をスグに探そう!』

 即応で頷く仲間たちは宿を求めて散開した。


 しばし後――

 ゆっくり眼を開けるイリス。
「…………」
 いつ、気まで失っていたのか、
(あたしぁいったい……?)
 眼には見た事の無い天井が映り、体はフカフカなベッドの上に横たえていた。
 すると、

『イリィおねぇぢぁゃぁん!』

 涙でグズグズ顔のチィックウィードが視界に入り、
「チィ……坊ぉ……?」
 チカラ無く呼んだ途端、彼女は横たえたままのイリスに激しく泣き付いた。

 言葉になっていない何かを喚き散らしながら。

 泣きじゃくる幼子の姿に、
(ははは……コイツぁかなりの心配を掛けちまったようさねぇ)
 小さく苦笑していると、

『やっとこぉ「眠り姫」の御目覚めのようさぁ♪』

 からかいの声が。
「!?」
 部屋の入り口に視線を移すと、そこにはニプルウォートが立って居て、いつもと変わらぬ「人を小馬鹿にした笑み」を見せていたが、そんな彼女の背後から、

『一番動(どう)じていた貴方が憎まれ口など、みっともないですわよ♪』

 姿を見せたのは、呆れ笑いのドロプウォート。

「ばっ、なぁ、何言ってるのさぁドロプぅ! ウチは別にぃ!」

 慄き振り返った、狼狽露わな彼女の揚げ足を続けて取るように、
「赤面顔でぇ動揺しんしてはぁ~本音がダダ漏れでぇありんすぇ~」
 妖艶な笑みを浮かべたカドウィードも姿を見せ、ダメ押しに反論の言葉を失った彼女は、

「ぅくっ……」

 もはや羞恥を隠せず、不機嫌を装いソッポを向いた。
 そんな彼女たちの下へ、

「イジリ過ぎは良くねっスよぉ姉さん方ぁ~」
「なのでぇすよぉ~」

 パストリスを伴った苦笑のターナップも姿を見せながら、

「悪りぃなぁ、イリィ。怪我だったら診てやれるがぁ、何せ専門外でなぁ」
「ボクもなのでぇすぅ、ゴメンナサイなのでぇすぅ」

 続々と見舞いに訪れる仲間たちに、イリスは自嘲気味の笑みを浮かべ、
「普段でかい口を叩いてるアタシがぁこのザマじゃ、何とも情けない話さぁねぇ~」
 重い体で、のっそり起き上がろうとした。
 すると、

『まだ横になってた方がイイよぉイリィ!』

 悲痛を帯びた声で駆け寄ったのはラディッシュ。
 自分の身に降り掛かった不幸の様な顔する彼に、
「なぁんてぇ顔してるのさぁねぇ、アンタはぁ」
 彼女は小さく笑いながら、

「故郷に帰って来てぇ、緊張糸が切れでもしたんだろうさぁねぇ~まぁ少し休みゃぁいつも通りさねぇ」

 ラディッシュ達の心配をよそに、ゆっくりと上体を起こし、
「あまりモタついても居られないしさねぇ」
 暗にディモルファンサの「王位継承の件」を示した。
 しかし、

「それで焦って体を壊したら、元も子もないよ」
「!?」

 ラディッシュが諭すように気遣い、
「城には僕とドロプで行って来るから、イリィは休んで待ってて。だって僕は曲がりなりにも勇者で、ドロプはエルブ国の四大貴族なんだから」
「し、しかしさぁねぇ、」

『これはパーティーリーダーとしての命令だよ』

「…………」
 気弱が平常運転の彼が、いつになく「固い意志」を感じさせる物言いをし、
(アタシの為に……)
 そこはかとなく嬉しく思うイリスであったが、他の仲間たち、特にラディッシュに想いを寄せる少女たちの手前、顔には出さず、仕方がないと言った素振りの半笑いで、

「分かったさぁねぇ~」

 再び横になりながら、
「アンタの世界で言う「果報は寝て待て」を、アタシぁ信じて待つにするさぁねぇ」
 笑みを見せた一方、心の内で、 

(正直な話で助かるさねぇラディ……城まで体がもつ気がしない……アタシの体は、いったいどうしちまったのさぁねぇ……)

 言い知れぬ不安にも苛まれていた。
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