ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-117

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 話は今に戻り――

 倫理的に問題ある行為に、心の引っ掛かりを残すターナップ。
 信仰心と、聖職者と言う職業柄、やむを得ない憂(う)いであったが、心が晴れない彼は珍しくも「兄貴と慕うラディッシュ」の揚げ足を取るように、

「元の記憶は一緒なんスからぁ、イリィの記憶は肉体に残したままで、魂だけ移した方が楽だったんじゃないっスかぁ? まぁ言うても今更っスけどぉ」

 労した手間と時間に不満をこぼすと、

『うん。正直な話で、僕もそう思う』
「?!」

 ラディッシュは反発するでもなく素直に頷き、

「ニプルが凄く頑張ってはくれたけど、何かの拍子にイリィの記憶が蘇る可能性が「無くはない」と思うからね」
「それが分かって、何でっスか?」

 ドロプウォート達も抱いていた違和感だったようで、
「「「「「…………」」」」」
 興味津々答えを待つと、

「生き抜くチカラを残したかったから……かなぁ」
「生き抜くチカラ、っスか?」
「「「「「…………」」」」」
「うん。イリィがイリィとして、僕達と旅をする中で身に付けた「強さ」みたいな物まで失って欲しくなかったんだ」
「「「「「「…………」」」」」」
「これから先も、きっと色々な苦難が待ち受けてるだろうからね。だから……」

 淡々と語っていたが、

(!)

仲間たちから向けられていた感嘆の視線に気付き、

『なっ、なんてぇ、僕如きが上から目線で格好つけ過ぎかなぁ♪』

 照れ臭そうに笑いながら、
「ま、まぁ単純に僕たちの事を心の片隅に、完全には「忘れて欲しくなかった」のも理由の一つだけどね♪」
「…………」
 黙するターナップ。

(ラディの兄貴はそこまで考えて、あの判断を……それに比べて俺は「坊主としての道理」ばかり口にして……)

 柔軟性を欠いた自身の思慮を密かに嘆き視線を落とすと、ニプルウォートが見透かしたようにニヤリと笑い、

「何さぁ、しょぼくれてぇさ。ケンカ相手が居無くなってぇ寂しいのか~?」
『んなっ訳あるか!』

 過剰に強く否定。
 当たらずと雖(いえど)も遠からずな故に。
 すると「イジリ甲斐のある獲物」を見つけた彼女は仲間たちの苦笑をよそに、わざとらしく、大袈裟にパストリスをチラ見してから動揺を隠せぬターナップに、

「ついに「ロリ好き」もぉ卒業かぁ?」
『ばっ!』

 ギョッとした。
 好意を寄せる相手が居る前で「ロリ好き」とからかわれた以上に、「他の女に気がある」と言い回された事に。
 焦るターナップの一方、想われ人の「パストリスは?」と言うと、

『ボクはぁロリじゃナイのでぇすぅ!!!』

 ロリと言われた事の方に反応して憤慨。
 地団駄を踏んで見せながら、

『ロリじゃないのでぇすぅ!』

 否定を重ねる愛らしい怒りように、
(((((♪♪♪)))))
 見つめるラディッシュ達の目尻は下がり、

『ッ!?』

 納得いかない見た目幼女が「怒り(微笑ましい)」を増すと、見かねた幼きチィックウィードが彼女なりの気遣いから、
「アメちゃんぉあげるからぁ、オチツクなぉ♪」
 懐から飴を取り出し、今さっき憤慨していた筈が、

「わぁー♪ ありがとうなのでぇすぅ~♪」

 満面の笑顔で受け取ろうとした。
 しかし、

『!』

 生温かく見つめる仲間たちの視線に我を取り戻し、
「ぼっ、ボクは大人なのでぇすぅ! チィちゃんが食べると良いのでぇすぅ!」
 後ろ髪を引かれる様子をあからさまに見せながらの、懸命な受け取り拒否。
 そんな「見た目幼女」の愛らしい姿に、目尻が下がりっ放しの仲間たちは、

「「「「「うんうんうん♪」」」」」

 笑顔で何度も何度も頷いた。
 まるで初孫を見つめる、祖父母のように。
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