ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第七章

7-43

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 地世の七草サロワートの見立てで一軒の食堂に入る勇者組――

 八人と言う大所帯が故に、店内の端に陣を取り、隣席のテーブルを付けて食事スペースを確保。
 なんとなく、いつもの定位置にそれぞれ着席し、メニューを手にしたラディッシュは、

「!?」

 少し驚いた。
「読める……」
 その感想は、中世で生きて来たドロプウォート達も同じであり、メニューに書かれた「初となる地世の文字」を意外そうな顔して見つめていると、

『当たり前でしょぉ?』
(((((((?)))))))

 サロワートが呆れを交えた笑みを浮かべながら、さも当然と言った口振りで、
「この世界は、初代魔王が中世に似せて創った世界なんだから」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 各々に、思う処は色々あった。

 訊きたい事も、色々あった。

 しかし初めに「答えない」と釘を刺されている以上、またこの世界において「頼れる存在」が彼女しか居ない現状、禁を破って彼女の機嫌を損ねる訳にはいかなかった。

(それでも!)

 ラディッシュは腹を括り、
「ね、ねぇサロワ」
「?」
「さ、サロワにも立場とか、色々あるのは理解してるつもりで、だから、その……」
(!)
「こっ、答えたくない質問には答えなくて良いから! そのぉ……幾つか質問しても良い……かなぁ? それとも……」
「…………」
「やっぱりダメ、かなぁ……?」
 主人の顔色を窺う子犬のような潤んだ眼差しに見つめられ、

(ぅぐっ……)

 内心で、母性本能のド真ん中をズバンと射抜かれるサロワート。
 惚れてしまった「弱み」と言ってしまえばソレまでかも知れないが、

(そっ、そんな顔されたらぁ断り切れないじゃなぁいぃ!)

 隠しきれぬ恋慕から少し顔を赤らめながら、

「あぁ~もぅ分かったわぁ分かったわよぉ!」

 表面上の口振りはヤレヤレと言った風を装い、
「し、仕方ないわねぇ」
 表情を緩めたが、

「でも、答えたくない質問には「本当に何も答えない」から。それでイイわねぇ?」

 改めて釘を刺した。
 しかし、
「ありがとう、サロワぁ♪」
 自然な笑顔を返されると、思わず「ボっ」と顔の赤みを増し、

(い、インチキ臭い「魅了のイケメンスマイル」が消えた代わりにぃ、天然たらしに磨きを掛かっちゃってさぁ! ま、まったくぅもぅ)

 照れ隠しの「不満を持っているかのような眼差し」で見つめると、額面通りにしか受け取れないラディッシュは、あからさまな「戸惑い」と「うろたえ」を覚え、

「どっ、どうかしたのぉ?!」
(ぼっ、僕ぅ、気付かないうちに「また何か」やらかしたぁ?!!!)

 焦りを露にすると、誤解された理由を説明する訳にもいかないサロワートは、

『なっ、何でもないわぁっ!』

 通常運転の憤慨で誤魔化し、察したドロプウォート達女性陣の苦笑を横目に、
「そぉ、それでぇ、ラディは何が訊きたい訳ぇ?」
「えっ?!」
「えっ、じゃないわよぉ、訊きたい事があるんでしょ?!」
「あ、う、うん! え、えぇとぉ……」
 ラディッシュは「この機を逃すまい」と、頭の中を高速回転。

 数ある「問いたい質問」の中から、彼女の機嫌を損ねず訊ける問いを慎重に選び、結果として「最初に選んだ問い」は、

「こぉ、この世界に来てから僕たち、凶悪な汚染獣に一度も襲われてないけど、どうしてぇ?!」

 すると彼女は呆れたように、彼と同じ顔をする勇者組を見回し、

「アンタ達ってば……地世を何だと思ってるのぉ? 地世が「怪獣天国だ」とでも思ってたワケぇ?!」
「だっ、だって地世のチカラが濃かった「遺跡の周り」はスゴかったし! それに中世の森を歩いて遭遇しなくても、危険な気配の一つや二つは普通にしたよ?! でも地世の森では、」
「野生動物が無暗やたらと人を襲う訳が無いでしょぉ~?」

 ため息交じりの答えに、
(((((((やせいどうぶつ?!)))))))
 何故に「野生動物」と言う言葉を用いたのか、勇者組は疑問に思ったが、彼女はソレには明確に答えず、

「中世に幾つかある遺跡には「地世と中世を繋ぐゲート」があって、それを維持する為には莫大な量の「地世のチカラ」が恒常的に必要で、中世側に色濃く漏れ出た地世のチカラの影響を受けてるのよ」
「げ、ゲートぉ?」
「そぅよ。地世と中世を繋ぎ止める、天技に相当する地技の一つよ。まぁもっともぉ、ゲートを囲うように遺跡を建てたのは天世の方だけどぉ。守護者付きでね」

((((((しゅごしゃ!))))))

 ラディッシュ達が「天技で造られたゴーレム」を思い出す中、眼の色をギラリと変えたのは、地世信奉者たちの手により両親を殺害されたターナップ。

『ならぁそのゲートって奴を片っ端からぶっ壊せばァ!』

 わだかまりを残していたニプルウォートとカドウィードも、

「「!」」

 彼に賛同の眼をすると、サロワートが即座に、
『地世の民がこれ以上に苦しむ行為はアタシが許さないわ』
 その物言いには、静かなれど「重みと覚悟」が。

 刺すような眼差しでこそあったものの、強く反発しなかったのには彼女なりの「内なる計算」も。
 彼女の「冷静な一言」により、

(((!)))

 矛を、収めざるを得なくなった三人。
 その理由とは、

 ≪中世の人々の「暮らしを守る」を大義名分に、地世の人々の暮らしを踏みにじって良いのか?!≫

 敵とみなしていた世界の人々の「平穏な日常」を見てしまったが故の、葛藤であった。
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