ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-43

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 馬車で街道を進む勇者一行――

 エルブ国やフルール国と比べるまでも無い、なんとも短い滞在期間を経て。
 その理由は不敬に当たる為、表立って口にこそしなかったが、

《天世と勇者の女子組たっての希望》

 数日続いた「悪い意味での漢祭り」に、女子組は辟易していたのであった。
 次第に遠ざかるカルニヴァ国王都カルブレスを背に、

『まだぁまだぁカルニヴァに居たいョぉお~出るのがぁ早いョぉ~!』

 駄々っ子のようにゴネる、百人の天世人の序列三位ゴゼン。
 カルニヴァ国への入国を、あれほど嫌がっていた同一人物とは思えぬ有り様で、行きも帰りも結局は「ゴネる男」に仲間たちは、

(((((((((ウザイ)))))))))

 苦笑したり、呆れてため息を吐いたり、各々困惑以上に迷惑していたが、苛立ちが顔に露に出てしまっていた天世と勇者の女子組。
総じて、

《天世フリカケを忘れて腹でも下せば良かったのに!》

 嫌悪が、無言の怒りが、意地悪い想いとなって身から溢れ出ていた。
 女子たちの怒りように宥める手段も思い付かず、

「「あはははは……」」

 もはや笑うしかないラディッシュとターナップの男子二人。
 すると、いつまで続くか分からぬ「同胞の愚行」に、

『面倒クサイのしぃ!』

 腹に据えかねたリンドウの怒りがついに爆発し、

「ウットウォシイのしぃゴゼぇン!」
「だってぇだってぇ短いョお~」

 ゴゼンが重ねて愚痴ると堪忍袋の緒が切れたヒレンも、

『ぁあーもぅッ!』

 我関せずを決め込み読んでいた本を手荒く「バァン」と閉じ、

『ウッサイわねぇアンタ達ィ! ゆっくり本も読めやしないじゃなァい!』

 諍いに参戦の意を表明。

『あっ、アーシぉせいじゃナイしぃ!』

 即座に反論するリンドウ。
 そこへ、

「責の所在の押し付け合いとはぁ~感心せぇんぇ~♪」

 からかい目的の本音が見え隠れするカドウィードも加わり、事態の悪化を阻止すべく、
「けぇっ、ケンカはダメなのでぇすぅ!」
 パストリスまでもが参戦。
 大モメの大人たちに、

「オトナゲナイなぉ~♪」

 幼きチィックウィードが呆れ笑い、大人ぶるその様をターナップが苦笑で見つめていると、混沌の度を深める荷台の騒ぎに御者台から、

『いい加減にするのですわぁ貴方たち!』

 ドロプウォートが委員長的ポジションの生真面目から苦言を呈したが、
『放って置きゃぁイイのさぁ~♪ みんなぁ暇なんだろう~♪』
 ニプルウォートが「キィシッシッ」と笑いながら横槍。
 その様に、

「!」

 日頃の不満とが相まって、

「どうして貴方はいつもいつもそうやって適当ですわのぉ!」
「適当、上等じゃないさぁ♪ むしろ、ちょうど良い具合の「イイ加減」と言って欲しいさぁ~♪」
「あっ、貴方がそうやってぇ!」

 混乱はラディッシュを間に挟んで御者台にも飛び火し、もはや苦笑するしかない手綱を握る彼は、

「つ、次はぁアルブル国だねぇ~♪」

 新たなる話題を、試みとして提供してみた。
 すると、

『『『…………』』』

 急に黙り静まる、震源地の天世三人。
 異様なほどの、神妙な面持ちで。
 釣られて静かになった勇者組は訳が分からず、

「「「「「「「?」」」」」」」

 ラディッシュ達には思い至らなかったのである。

《天世人にとって「今のアルブル国の姿」がどんな意味を持っているのか》

 かの国はリンドウ達にとって同胞の序列一位ハクサンが暴挙を働いた中心地であり、ラディッシュ達の活躍が間に合わなかったら有り得たかもしれない、想像するのも恐ろしい、天世の未来の姿であった。
 同胞を止められなかった自責と、崩壊の悪夢を甦らせるに十分な地。

 しかし様々な世界、国、地域で勇者としての務めを果たして来たラディッシュ達にとって「それは解決した事例の一つ」に過ぎず、天世人がどれ程の「トラウマと罪悪感」を抱えていたかなど知る由も無かったのである。
 言い知れぬ緊張を纏った天世の三人を伴い、歓待を以て勇者一行を迎えるアルブル国の関所を抜け、最も被害の大きかった王都アルブレスを目指す。

 その間、町や村、人の居る所では、荷台から顔すら出さない天世の三人。

 抱えた複雑な心情を聞き、ラディッシュ達が「責任を感じ過ぎ」と宥めても一様に首を振るばかり。
「「「「「「「…………」」」」」」」
 心配をよそに、
「「「…………」」」
 食事も喉を通らぬ様子の数日が過ぎ、やがて御者台から、

『王都に着いたよぉ♪』

 手綱を引くラディッシュの声が。
 その声に、

「「「!」」」

 不安を隠し切れぬ顔を上げる、荷台でうつむいていた天世の三人。
 彼の声は「明るかった」にも関わらず。

《馬車の外は「同胞が壊滅させた町」だから》

 想像に浮かぶは、王都であった華やかしき頃の面影さえ消え失せたスラム街。
 建物はことごとく崩壊し、飢えに苦しむ人々が町を彷徨う、天世に起こり得た現実世界。

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