ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-12

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 魔王の気配を手掛かりに初見の城内を駆ける勇者組――

 廊下の装飾や建物自体は「中世の城」と何ら違いがある訳では無かったが、通年曇っている世界が故(ゆえ)か内部は薄暗く、その薄暗さが魔王城である事実と相まって、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 得も言われぬ「オドロオドロしさ」を醸し出していた。

 廊下に響くは、ラディッシュたち勇者組の足音のみ。
「「「「「「「…………」」」」」」」
 薄暗い城内は静まり返り、敵兵や、汚染獣、合成獣の襲撃も無く、無い事がむしろ、

「気味が悪いですわぁ……」
「「「「「「…………」」」」」」

 ドロプウォートの走りながらの呟きは、仲間たちの総意でもあった。
 これが「魔王城の通常である」と、知らなかったから。

《チカラが全ての地世の世界》

 この世界において圧倒的チカラを有する魔王プエラリアと七草に襲い掛かろうとする、愚かな地世人、野生動物、合成獣など皆無であり、城内警備は不要なのである。

 逆を言えばラディッシュ達の侵入は警備を手配する時間さえ与えなかった「イレギュラーであった」とも言える。
 警備が手薄な理由が「グラン・ディフロイスの置き土産」であったなど、知る由もない勇者組。

 ラディッシュは仲間たちと上へ向かう階段を探し走りながら、
(罠も無ければ警備の兵も居ない……七草の挟撃(きょうげき)さえも……)
 不穏を感じると同時、

(もしかしてぇ下に見られてるぅ?!)

 若干の苛立ちを覚えた。
 中世や天世で仲間たちと積み上げて来た数々の実績を、自負を、踏みにじられた思いに駆られ。
 しかし勇者組が抱く、焦りや苛立ち、急(せ)く思いに相反し、

(上階へ中々進めない!)

 当然である。
 案内図がある訳でもなく、初見である事に加え、地世世界の絶対的君主たるプエラリアが住まう居城は、
(((((((ムダに、ひろいぃ!)))))))
 小さい訳が無いのである。

 幸いなことに、進む先に合成獣の気配や、敵兵の気配は未だ感じられなかったが、
(モタモタしてたら警備を固められちゃうかも知れない!)
 しかし焦ったところでプエラリアとラディッシュ達を隔てる空間は縮まらない。

 それは彼も分かっていた。

 分かっていても、焦りを覚えずには居られなかった。
 勇者組の七人が走っている世界は「敵地」であり、ここはその世界の王が住まう、敵陣のど真ん中なのだから。

 アリの巣の中に迷い込んだ、葉虫の様相。

 しかも目指す先から感じられるのは「魔王プエラリアと何者か」の気配、二つのみ。
 有象無象の敵兵や、合成獣たちの襲撃を退けながら進む覚悟をしていた勇者組にとって、正に「千載一遇の好機」であった。
 待ち構えているのが、例え罠であったとしても。

 一つのフロアを駆けずり回り、無駄に消費されていく時間に焦りを覚える中にあっても、
「「「「「「「…………」」」」」」」
一つ一つ着実に、階を登って行くラディッシュ達。

 やがて今まで見て来た扉より、ひと際豪華な装飾が施された「両開きの扉」の前に辿り着き、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 足を止める七人。
 閉まる扉で隔てられた空間の奥を「心の目」で見据え、

《居る!》

 感じ取ったのは、魔王プエラリアの確かな存在。
 決戦は目前。
「「「「「「「…………」」」」」」」
 息を呑む勇者組であったが、その張り詰めた空気を揺るがすような気の抜けた声が扉の向こうから、

『そんな所にいつまでも居ないでぇ入っておいでよぉ♪』
「「「「「「「!」」」」」」」

 見透かしたような、聞き覚えのある、性別不明な愛らしい声が。
「…………」
 ラディッシュは腹を括ると、緊張の仲間たちと頷き合い、そして意を決し、

「…………」

 扉を押した。
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