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第九章
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一撃一撃ごとに強さを増して行く勇者ラディッシュに、怒りを上乗せしていく魔王プエラリア。
戦いが激しさを増す中、成り行きを見守る事しか出来ない仲間たちは彼の戦いぶりに、
「「「「「「…………」」」」」」
新たな不安を見ていた。
いつもの彼を知っているからこそ気付けた、懸念。
プエラリアが感じた通り、剣先に見る「速さと重さ」は着実に増していたが、
((((((ブレてる……))))))
迷いが感じられ、いつもより精彩を欠いていた。
言うなれば、雑(ざつ)。
敵将の命を奪う気概が、剣先から欠落しているように感じられたのである。
直接対峙している魔王プエラリアが気付けているか微妙なほどの、些細な機微。
とは言え「剣技勝負」において、彼が圧倒しつつあるのは事実であり、愛らしい笑顔の魔王は、
(このボクが「こんな出来損ない」に気圧されているだってぇ?!)
笑顔の下に焦りを隠し、
(地世を統べる王たる「このボク」がぁ!)
両目はつぶったままの、未だ本領を発揮していてない様子を見せながらも、
(有り得ない! 認めない! ボクは絶対に認めなぁい!)
顔は辛うじて笑顔のまま、旗色の悪さを薙ぎ払うように素早く剣を振るうプエラリア。
平静を失いつつある魔王を相手に、
(この人は斬らないといけない相手ぇ!)
苦悩を抱えながらも毅然と善戦を繰り広げ、そこに「ヘタレ勇者の二つ名」を欲しいままにした弱腰は皆無に見えたが、心根優しき勇者は、
《斬りたくない!》
《斬るべき相手!》
葛藤を拭えずにいた。
相反する「二つの想い」はジレンマを生み、生まれたジレンマは彼の心を荒ぶらせ、
『プエラリアぁああぁ=========ァ!!!』
猛る勇者は切れ間なく、速度を増した左右の剣技を繰り出した。
かつてない神速とでも呼べる速さで。
しかし相手は「地世を統べる魔王」である。
並の相手ならばその斬撃で細切れに出来たであろうが、
『調子に乗り過ぎなんですよぉ、ラディイ♪』
無数に放たれた光速剣の一筋に難なく刃を合わせると、愛くるしい笑顔のまま、ついに閉ざしていた両眼を見開き、
『百人の(勇者の)残りカス如きがぁあぁぁあ♪』
真っ赤な瞳の笑顔で見下しをあらわ、その身を漆黒に輝く炎で包み、鍔迫り合いからチカラ任せの強引で彼を弾き飛ばし、
『ラミウムを守れなかった「負け犬」がァア♪』
愛らしい笑顔の憤怒で仁王立ち。
見下ろす姿は雄弁に、
《彼女の隣に立つべきは自分であった》
渾身を、いとも容易く退けられ、弾かれるラディッシュではあったが、特別な存在であったラミウムを引き合いに出され、おめおめ引き下がれよう筈も無く、飛ばされ体勢を崩しながらも、
(ラミィイ!)
彼女の笑顔が胸をよぎって奥歯をギリッと噛み鳴らし、
(負けられなァい!)
即座に体勢を立て直して地を蹴り、
『ラミィだけを中世に置き去りに! 魔王に堕ちた貴方が言えた事かぁーーーッ!』
『知った風なァ口を叩きますねぇラディイ♪』
両雄、再び激突。
剣技と剣技の応酬。
意地と意地の、激しいぶつかり合い。
そこにあるのは同じ女性に想いを寄せた者同士の、譲れぬ意地。
想いの深さが、強さが、「勝敗を分ける」とでも言いたげな。
戦いが激しさを増す中、成り行きを見守る事しか出来ない仲間たちは彼の戦いぶりに、
「「「「「「…………」」」」」」
新たな不安を見ていた。
いつもの彼を知っているからこそ気付けた、懸念。
プエラリアが感じた通り、剣先に見る「速さと重さ」は着実に増していたが、
((((((ブレてる……))))))
迷いが感じられ、いつもより精彩を欠いていた。
言うなれば、雑(ざつ)。
敵将の命を奪う気概が、剣先から欠落しているように感じられたのである。
直接対峙している魔王プエラリアが気付けているか微妙なほどの、些細な機微。
とは言え「剣技勝負」において、彼が圧倒しつつあるのは事実であり、愛らしい笑顔の魔王は、
(このボクが「こんな出来損ない」に気圧されているだってぇ?!)
笑顔の下に焦りを隠し、
(地世を統べる王たる「このボク」がぁ!)
両目はつぶったままの、未だ本領を発揮していてない様子を見せながらも、
(有り得ない! 認めない! ボクは絶対に認めなぁい!)
顔は辛うじて笑顔のまま、旗色の悪さを薙ぎ払うように素早く剣を振るうプエラリア。
平静を失いつつある魔王を相手に、
(この人は斬らないといけない相手ぇ!)
苦悩を抱えながらも毅然と善戦を繰り広げ、そこに「ヘタレ勇者の二つ名」を欲しいままにした弱腰は皆無に見えたが、心根優しき勇者は、
《斬りたくない!》
《斬るべき相手!》
葛藤を拭えずにいた。
相反する「二つの想い」はジレンマを生み、生まれたジレンマは彼の心を荒ぶらせ、
『プエラリアぁああぁ=========ァ!!!』
猛る勇者は切れ間なく、速度を増した左右の剣技を繰り出した。
かつてない神速とでも呼べる速さで。
しかし相手は「地世を統べる魔王」である。
並の相手ならばその斬撃で細切れに出来たであろうが、
『調子に乗り過ぎなんですよぉ、ラディイ♪』
無数に放たれた光速剣の一筋に難なく刃を合わせると、愛くるしい笑顔のまま、ついに閉ざしていた両眼を見開き、
『百人の(勇者の)残りカス如きがぁあぁぁあ♪』
真っ赤な瞳の笑顔で見下しをあらわ、その身を漆黒に輝く炎で包み、鍔迫り合いからチカラ任せの強引で彼を弾き飛ばし、
『ラミウムを守れなかった「負け犬」がァア♪』
愛らしい笑顔の憤怒で仁王立ち。
見下ろす姿は雄弁に、
《彼女の隣に立つべきは自分であった》
渾身を、いとも容易く退けられ、弾かれるラディッシュではあったが、特別な存在であったラミウムを引き合いに出され、おめおめ引き下がれよう筈も無く、飛ばされ体勢を崩しながらも、
(ラミィイ!)
彼女の笑顔が胸をよぎって奥歯をギリッと噛み鳴らし、
(負けられなァい!)
即座に体勢を立て直して地を蹴り、
『ラミィだけを中世に置き去りに! 魔王に堕ちた貴方が言えた事かぁーーーッ!』
『知った風なァ口を叩きますねぇラディイ♪』
両雄、再び激突。
剣技と剣技の応酬。
意地と意地の、激しいぶつかり合い。
そこにあるのは同じ女性に想いを寄せた者同士の、譲れぬ意地。
想いの深さが、強さが、「勝敗を分ける」とでも言いたげな。
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