ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-15

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 一撃一撃ごとに強さを増して行く勇者ラディッシュに、怒りを上乗せしていく魔王プエラリア。
 戦いが激しさを増す中、成り行きを見守る事しか出来ない仲間たちは彼の戦いぶりに、

「「「「「「…………」」」」」」

 新たな不安を見ていた。
 いつもの彼を知っているからこそ気付けた、懸念。
 プエラリアが感じた通り、剣先に見る「速さと重さ」は着実に増していたが、

((((((ブレてる……))))))

 迷いが感じられ、いつもより精彩を欠いていた。
 言うなれば、雑(ざつ)。
 敵将の命を奪う気概が、剣先から欠落しているように感じられたのである。

 直接対峙している魔王プエラリアが気付けているか微妙なほどの、些細な機微。

 とは言え「剣技勝負」において、彼が圧倒しつつあるのは事実であり、愛らしい笑顔の魔王は、
(このボクが「こんな出来損ない」に気圧されているだってぇ?!)
 笑顔の下に焦りを隠し、

(地世を統べる王たる「このボク」がぁ!)

 両目はつぶったままの、未だ本領を発揮していてない様子を見せながらも、

(有り得ない! 認めない! ボクは絶対に認めなぁい!)

 顔は辛うじて笑顔のまま、旗色の悪さを薙ぎ払うように素早く剣を振るうプエラリア。
 平静を失いつつある魔王を相手に、

(この人は斬らないといけない相手ぇ!)

 苦悩を抱えながらも毅然と善戦を繰り広げ、そこに「ヘタレ勇者の二つ名」を欲しいままにした弱腰は皆無に見えたが、心根優しき勇者は、

《斬りたくない!》
《斬るべき相手!》

 葛藤を拭えずにいた。
 相反する「二つの想い」はジレンマを生み、生まれたジレンマは彼の心を荒ぶらせ、

『プエラリアぁああぁ=========ァ!!!』

 猛る勇者は切れ間なく、速度を増した左右の剣技を繰り出した。
 かつてない神速とでも呼べる速さで。

 しかし相手は「地世を統べる魔王」である。
 並の相手ならばその斬撃で細切れに出来たであろうが、

『調子に乗り過ぎなんですよぉ、ラディイ♪』

 無数に放たれた光速剣の一筋に難なく刃を合わせると、愛くるしい笑顔のまま、ついに閉ざしていた両眼を見開き、

『百人の(勇者の)残りカス如きがぁあぁぁあ♪』

 真っ赤な瞳の笑顔で見下しをあらわ、その身を漆黒に輝く炎で包み、鍔迫り合いからチカラ任せの強引で彼を弾き飛ばし、

『ラミウムを守れなかった「負け犬」がァア♪』

 愛らしい笑顔の憤怒で仁王立ち。
 見下ろす姿は雄弁に、

《彼女の隣に立つべきは自分であった》

 渾身を、いとも容易く退けられ、弾かれるラディッシュではあったが、特別な存在であったラミウムを引き合いに出され、おめおめ引き下がれよう筈も無く、飛ばされ体勢を崩しながらも、
(ラミィイ!)
 彼女の笑顔が胸をよぎって奥歯をギリッと噛み鳴らし、

(負けられなァい!)

 即座に体勢を立て直して地を蹴り、

『ラミィだけを中世に置き去りに! 魔王に堕ちた貴方が言えた事かぁーーーッ!』
『知った風なァ口を叩きますねぇラディイ♪』

 両雄、再び激突。

 剣技と剣技の応酬。

 意地と意地の、激しいぶつかり合い。

 そこにあるのは同じ女性に想いを寄せた者同士の、譲れぬ意地。
 想いの深さが、強さが、「勝敗を分ける」とでも言いたげな。

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