ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-17

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 勇者組は何を目の当たりに、驚愕したのか。

 それは優位に立ったプエラリアが戦闘中であるにも拘らず、

「さぁラディ♪」

 あろう事か、無防備にも、彼に向かって両腕を広げ、

「キミが持つその剣でぇ、このボクを「サクッ」と貫いてごらんよぉ♪」
「「「「「「「!」」」」」」」

 愛らしい笑みは鳴りを潜め、嫌味なほどに苛立ちを覚える「半笑い」。
 切っ先を向けつつも、

「クッ!」

 後退るしかないラディッシュと、
((((((プエラリアァア!))))))
 耐え難い腹立ちに表情を歪める仲間たち。

 魔王を倒す千載一遇のチャンスではあったが、無策で実行すれば「地世の悲劇」が現実の物に。
(どうしたらぁ!?)
 そんな勇者の葛藤を嘲笑うように、

「さぁどうしたのぉ、勇者ラディ♪ ボクは抵抗しないよぉ♪ ボクをサクッと一突きで、」
 サクッ!

 プエラリアの上半身のど真ん中から剣先が飛び出し、

「そうそう♪ こんな風にサクッとぉ♪」

 思わぬ事態に、思わず笑顔のプエラリアであったが、
「ん?!」
 自身の胸元から突き出る剣先を改めて認識するや、

『なぁんだよぉコレぇえーーーッ!』

 戦慄の声を上げて驚愕。
「「「「「「「…………」」」」」」」
 それはラディッシュたちも同じ。
 背後から貫いたのが、

「…………」

 玉座の隣に坐していた、無言の「正体不明の全身鎧」であったから。
 嫌味なほどの「余裕の笑み」が失せた魔王プエラリアは、背中から貫かれながらも「信じられない」と言った形相で全身鎧を、真っ赤な両眼で恨めしく睨み、
「どぅしてぇ……」
 やっと開いた口元から、

「ごふっ」

 多量の鮮血を溢れさせ、

「ごっ、ごふふっ……」

 繰り返し多量の血を吐き、
(グランの裏切りが無ければぁこんな事にはぁ!)
 恨み節を思ったが、全ては因果応報。

 中世と天世の民を守る誇りを胸に戦いに臨むラディッシュ達を侮ったばかりか、古(いにしえ)の戦いで背中を預け合った元戦友たちを物扱いした報い。

 先に裏切っていたのはプエラリアの方でありながら、
(ボクは魔王だぞぉ! 地世の全ては「ボクの物」なんだぁ! こんな事が許される筈が!)
 醜く、現実と向き合おうともせず、自身の非を認めずに居ると、

『!?』

 全身を包む漆黒の炎が、背から刺さる剣を通って徐々に全身鎧の方へ。
 魔王の炎が弱まるに反比例して輝きを増し、

『ボクのチカラを奪ってるだってぇええぇ!』

 刺されて吐血しているとは思えない絶叫を上げたが、黒き炎の弱まりに合わせ、

「「「「「「「!」」」」」」」

 驚きを増す勇者組。
 女子とも、男子ともつかぬ愛らしい顔立ちが、風姿が、みるみるみるみる萎(しな)びていったのである。

 ラディッシュたちの様子からも、自身の異変に気付くプエラリア。
 シワが目立ち始めた両手で顔を覆い隠し、

《見ないでぇえぇぇぇぇえ!!!》
 ザァ!

 砂漠の風に舞う砂の如きに塵と化し、乙女のような断末魔がこの世で最後の、「最期の叫び」となった。
 狂騒から一転、

「…………」
「「「「「「「…………」」」」」」」

 静寂に包まれる、謁見の間。
 全身鎧が握る剣先に残る「主を失った性別を問わぬ衣服」が、魔王が実在した生き証人と化した中、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 息を呑む、勇者組。
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