ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-18

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 息を呑む勇者組の見つめる先にあるのは、言わずもがな全身鎧。

 プエラリアが先に発した言葉が事実なら、三代目魔王の誕生であったから。

 それを証明するかのように魔王プエラリアが消えたにも拘らず、地世の世界から感じる地法、地技に、変化は無く、チカラの継承が、否(いな)、強奪が、スムーズに行われたのを示していた。

(敵? 味方? どっち?!)

 判断に迷うラディッシュ達。
 素顔を覆い隠すフルフェイスの兜からでは、性別どころか、何を思っているか、何を見ているかさえ、判断がつかない。

 すると剣を突き立てた格好のまま、彫像のように微動だにしなかった全身鎧が、
「…………」
 無造作に剣を一振り。

 剣先に纏わる「主を失った衣服」を邪魔だと言わんばかりに払い落とすと、鎧に「ギシリ」と音を立て、
「…………」
 明らかにドロプウォート達を見据えた動きを見せた。
 仲間たちに及ぶ危機の気配に、

『!』

 即座に視線を遮るよう、間に割って立つラディッシュ。
 緊迫の表情で切っ先を全身鎧に向け、仲間たちを背に守る気概を見せ付けたが、守ったつもりの仲間たちから、

「未知の敵を相手に、一人で何をしてますわのラディ♪」
「タイマンの約束はプエラリアだけだろうさぁ♪」
「兄貴は一人で背負い過ぎなんスよ♪」
「好いた男に守られてばかりぁ「オナゴが廃(すた)る」と言うモノにありんすぇ♪」
「なのでぇす♪ なのでぇす♪」
「オナコがしたるぅなぉ♪」

 笑顔の苦言の数々。
 横に並ぶ、頼もしい六つの顔に、

「みんな……」

 ラディッシュは感動を覚えつつ、緊張感を以て仲間たちと武器を構え直した。

 不意を狙った一刺しでプエラリアを葬った相手とは言え、地世を統べる魔王に殺意を気取らず命を奪った「腕利き」である。
 しかも「魔王のチカラ」まで手に入れ、有する実力は単純計算でもプエラリア以上に。

 全身鎧の戦闘スタイル、手の内が分からぬ今、ラディッシュだけに戦闘を強いるのは、あまりにリスキーなのであった。

 一人対七人。

 しかも七人は「一般兵」などではなく、
《中世の英雄、七草》
 実力が計り知れない相手だとしても、ラディッシュたちの優位性は揺ぎない筈であったが、緊張を緩めることなく、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 身構える七人。
 不安めいた言葉は誰も口にしなかったが、数々の戦いで培われた「勘」が危険を知らせていた。

《甘く見ていると足元をすくわれる》

 両陣、互いに無言で対峙し、
「…………」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 静けさが場を支配する中、唐突に、

「「「「「「「!」」」」」」」

 全身鎧の両肩が、微かに小刻みに上下した。
 見えぬ表情からでは真意が読み取れず、戸惑うラディッシュたち勇者組。
(((((((…………)))))))
 せめて一挙手一投足を見逃さぬよう、睨むように見据えていると、

『キィーーーシッシッ♪』
「「「「「「「!?」」」」」」」

 全身鎧が兜の額を抑えて笑い出し、そのあまりに特徴的な笑い方に、
(((イリス!)))
 ニプルウォート、カドウィード、チィックウィードが彼女を連想してギョッとしたが、ラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ターナップの古参の四人は、

『『『『そぉっ!?』』』』』

 我が耳を疑った。
 その声に、笑い方に、ふとした仕草に、驚愕の驚きを以て。

 笑い続ける全身鎧から目が離せず、打ち震えるラディッシュ。
「「「「「「「…………」」」」」」」
 七者七様、天地がひっくり返ったような驚き顔で固まる七人を前に、愉快気な笑いで肩を上下に揺らす全身鎧は、自身の兜に両手を掛けながら、

『何てぇマヌケ面してるのさぁねぇ~♪』

 脱いで露にした素顔にラディッシュ達は、その艶やかな薄紫の髪に、紫水晶アメジストのような美しい瞳に、

《ラミィ!!!》

 エルブ国を、中世の民を守る為に命を落した筈の彼女であった。
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