ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-22

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 勇者組の各々が、過去に直面した「地世が絡んだ事象」を想う中、
「救い難い悪党どもが持つ「負の感情」ってぁ、この世界の維持に好適(こうてき)なのさぁねぇ~キィッシッシッ♪」
 悪辣(あくらつ)の徒(と)が相手の話とは言え、人を物として捉え、人を人とも思わず、自業自得とでも言いたげな笑い声に、

『なんと無慈悲な事を致しますわのォオ!』

 ドロプウォートは堪らず声を荒げたが、
「無慈悲ぃ?」
 ラミウムは「ククッ」と嘲笑い、皮肉たっぷり、

「相変わらずお行儀のぉ良い、優等生な「問い詰め」さねぇドロプぅ♪」

『んなぁっ、何でぇすってぇぇえ!』

「ならぁ逆に問うがぁ、何の落ち度も無い一般人が犯罪者に襲われ命を落すのを、アンタは「無慈悲」とは言わないのさねぇ?」
「そっ、それは……」
「地世は「人に害ナス連中」を、有効活用してるだけさぁねぇ♪ キッシッシッ♪」

 ケタケタ笑い出すと、積もりに積もった鬱積を一気に吐き出すように、

『ラミィの顔と声でぇ下品に笑うなァアアァア!』

 ラディッシュが怒声を上げ、嫌悪の怒りで以て、

『オマエはラミィじゃナイッ!』

 向けられた強い拒絶の眼差しに、
「…………」
 彼女は下卑た笑いの中に、ほんの一瞬、微かな表情変化を滲ませ笑いを止めた。
 その僅かに見せた表情変化が意味する物が、怒りであるのか、寂しさであるのか、両面が複合された物であるかは不明であるが、仄暗い気配は強さを増し、笑いを収めながら無感情に、

{先代とアタシが天世で受けた数々の屈辱を、非情な仕打ちを、向こうの世界に絶望したアンタなら、理解してくれると思っただけどさぁねぇ}
『『『『『『『!』』』』』』』

 宝石アメジストのようであった美しき瞳が、艶やかであった薄紫の髪が、放つ地世のチカラの上昇に合わせ、ドス黒い赤紫に変色して行く。
 憎悪を増しながらラディッシュを睨むように見据え、

{思い出させてやるさぁねぇ、ラディ。アンタが味わった「絶望」ってヤツをさねぇ}

 右手をかざすと、

「うぅっ動けないぃ!?」
『『『『『『『ッ!』』』』』』』

 ドロプウォート達は即座に彼の救助、援護、そして反撃、各々の判断で動こうとしたが、
{邪魔はさせないさぁねぇえ}
 ラミウムは左手を仲間たちの方へ向け、

((((((うごけない!))))))

 話す事さえ許されないほど、動きを強く封じられ、

{そこで黙って見ているさぁねぇ。ラディが記憶を取り戻し、アタシと同じになる様(さま)をさねぇ♪}
((((((!))))))

 深い闇を感じさせる笑みを浮かべ、
{さぁ、ラディ}
 動けぬラディッシュに視線を戻すと、

{絶望を思い出す時間の始まり始まり、始まりさぁねぇ~♪}

 一瞬にして暗闇と化す視界。
 やがて、

 キィ~ンコンカァ~ンコォ~ン♪
 キィ~ンコォンカァ~ンコォ~ン♪

 何処からともなく、気の抜けたメロディーが耳に。
 記憶にない曲である筈が、

(これは!)

 懐かしさを感じてハッと両目を開けるラディッシュ。
 しかし眼を開け、放った第一声は、

「みんなは!?」

 仲間の身を先に案じる辺り何とも彼らしくはあったが、周りを見回し、

(何処……?)

 西陽が差し込むアルミサッシの大きな窓に、コンクリート打ちっ放しの無機質な長い廊下。
 目の前の大部屋には椅子とセットになった机が数多く整然と並び、窓の外や遠くからは、何人もの掛け声や、笑い声が聞こえて来る。
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