ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-30

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 一夜明け――

 教会内の、いつもの一室でテーブルを囲むラディッシュ達。
 昨日の悪ふざけの「後味の悪さ」を若干引きずるリンドウとヒレンを交え、他愛無い話に花を咲かせていると、外から勝手口の扉を躊躇なく開け放ち、

『おっ早うぅございますっスゥウ!!!』

 腕白小僧のように元気よく姿を現したのは、インディカ。
 それも飛び切りの、満面の笑顔で。
 昨日の半泣き、飛び出しが、嘘のようなキラキラの笑顔に、事も無げに笑う彼に、

『『?!』』

 リンドウとヒレンの方が当惑し、

「あ、アータってば昨日のぉアーシらの……」

 傷口に塩を塗る可能性に思わず口籠ったが、彼は平然と、憂いのカケラも感じさせない笑顔で、

「昨日ぉ?! 何かぁあったっスけぇ♪」
『『!?』』

 あまりにあっけらかんとした態度に安堵より、むしろ苛立ちを覚えるヒレン。
(アタシ達の悶々とした一夜は何だったワケぇ?!)
 ムッとし態度を前面に、

『アタシ達がアンタだけに「冷やかし」で身分を偽った事よ!』

 オブラートに包まず、ド直球。
 文字列だけ見れば「謝罪の言葉」を遣い、怒り口調で責め立てた。

 しかし当のインディカは、
「あぁ~その事ぉっスかぁ♪」
 ケラケラ笑い、

「オレっちぁムズカシイ話は分かんねっスぅ♪」
「「!」」
「けどぉ、面倒臭ぇ話もぉ、くそダリィ話もぉ、飯喰って糞して寝りゃぁ、キレイさっぱりっスぅ♪」
「「く、して……?!」」

 品を著しく欠いた例えに、言葉を失う天世の二人。
 そして思う、自分たちの後悔は「何であったのか」と。
「「…………」」
 戸惑いの中、ラディッシュ達の無言の笑顔は語り掛ける。

《ターナップの話は本当だったでしょ?》

 その笑顔に天世の二人が、
((存分に……))
 納得の困惑を返していると、平然と笑っていたインディカが、

『それよりっスぅ!』

 唐突な真顔で妖精ラミウムに向き直り、
『ラミィ姐さん!』
「おん?」
 ラディッシュの肩に座って腕組みする彼女を前に、彼は両手を床につき、

『マジでぇ、すいやせぇんでしたぁあ!!!』

 頭突きでもしそうな勢いで頭を下げ、
「村のみんなから話ぁ聞きやしたぁ! 姐さんみてぇな御方ぉオレっちぁ「豆」だ、「小さぇ」だ、「ちんちくりん」だぁ、何だぁかんだぁとぉ!」
 誠を以ての、真摯な謝罪であったが、

「…………」

 少々納得いかない面持ちの妖精ラミウム。
 彼が並べ立てた言葉から、

「オメェ……本当に反省してんのさぁねぇ? 昨日ぁそこまで(酷く)言ってなかったさねぇ」

 懐疑的な顔するとラディッシュ達は思わず苦笑したが、一本気に「謝罪のつもり」の彼は微妙な空気に気付く事なく、

『マジっスぅ! 本っ当ぅうぅにぃ、申し訳ねぇっスぅ!!!』

 真意を疑いたくなる「謝罪の文言(もんごん)」は一先ず脇に置くとして、不器用ながらの「反省の心」は伝わった笑みを浮かべる妖精ラミウム。

 彼女の気質から、形はどうであれ誠を尽くされ悪い気はせず、また仲間たちからの「許してあげたら」と言わんばかりの笑顔の後押しもあり、彼女は「仕方が無い」とでも言いたげの笑みの後、踏ん反りのドヤ顔で、

『分かりゃぁイイのさぁねぇ♪』

 少し含んだ照れに気付いた気配も無いインディカではあったが、真に嬉しそうにニカッと笑い、

『あざあっスゥ! ラミィの姐さぁん!』

 彼らしい言葉遣いで感謝を口に、見守るラディッシュ達も微笑ましく思う中、
「…………」
 彼は笑顔ながらも、奥歯に物が挟まる物言いで、

「そぉ、それでぇ、そのぉ何スけどぉ、ラミィ姐さん……実ぁそのぉ……」
「何だい何だい、らしくないさねぇ~ハッキリ言ったらどうさねぇ?! 顔色窺いなんざぁアンタにぁ似合わないさぁねぇ~」

 辟易すると彼は満を持し、腹を括った勢いに任せ、

『オレっちぉ漢(おとこ)にして下せぇラミィ姐さぁん!!!』

 叫ぶような懇願に、

『『『『『『『『『『!!!?』』』』』』』』』』

 居合わせた全員が驚愕、硬直した。
 その言葉が持つ、大人な意味に。
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