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第九章
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インディカの「衝撃の告白」からしばし後――
息も絶え絶え、荒い呼吸をするのは、
「らぁ、らぁぁ、も、もぉ、勘弁してぇ欲しぃっスぅ……」
まともに話す事も出来ない汗だくのインディカであり、
『何の弱音を吐いてるさぁねぇ! 漢になりたいんだろぉお!』
尻を叩くように折檻(せっかん)するのは、妖精ラミウム。
彼女の気合の一喝により、
「にぃっ、ニギィギギギギギィイ!!!」
歯を食いしばる彼は、スクワットの真っ最中。
大岩を、両腕で頭上に持ちながら。
戦う術(すべ)を教えてもらえるつもりでいた彼は、少々常識から逸脱しているように思える基礎トレーニングに対し、
「なぁ、なぁんでぇ、オレっちだけぇ、今更ぁ、こんなぁ」
不平不満を口にしたが、彼が掲げる大岩の上に涅槃像姿で横たえる妖精ラミウムは、彼の訴えを「甘え」とばかり断ずるように、
『ガキがぁ生(ナマ)言ってんじゃナイさねぇえ!』
短く鋭く突っ撥ね、
「アンタにぁその基礎ってヤツが足りてねぇのさねぇ! しかも魔王がいつ攻めて来るかも分からない今ぁ、促成で地力を上げるのさねぇ!」
「そぉ、ぉりゃぁ、そぉ、かもぉ、スぅ、けどぉ、限度ってぇ、モンがぁ」
滝のような汗を流し、両足をプルプル言わせ、今にも膝から崩れ落ちそうになりながらもスクワットを続ける気概を見せておきながら、弱音を口にする彼に、
「…………」
何を想ったか妖精ラミウムは素っ気なく、
「ならぁ止めるさねぇ?」
「!」
顔色が急変した彼に改めて自問を促すよう、
「そもそも、そこらのゴロツキどもが相手なら、複数人を一人で相手に出来る腕っ節ぉアンタがぁ、何でぇそこまでぇ「マジの鉄火場(戦場)」にこだわるさねぇ?」
「…………」
「坊主ってなぁ後方で治療を、」
『それじゃダメなんっスぅ!』
「?!」
疲労困憊の筈のインディカはハッキリした口調で、
「それじゃダメなんスよぉ、ラミィ姐さん」
「…………」
弱気に染まっていた目の色に鋭さが戻り、
「むっっウ、ムゥギギギgィ!」
今にも終わりそうになっていたスクワットを、必死に、さらに続け、その姿を大岩の上から、
「…………」
無言の涅槃像姿で、しばし見下ろす妖精ラミウム。
彼の異様な頑張りを、しばしの無言で眺めて後、
「不愛想な「本好きオンナ」なんぞの、何がそんなに良いのさぁ~ねぇ~?」
ため息交じりの唐突な問いに、
『のぉあぁおっ!!!?』
激しく動揺するインディカ。
大岩を落としそうになるほどバランスを崩し掛けたが、辛うじて体勢を立て直しつつ早口に、
「んなぁ何言ってんスかぁラミィ姐さぁん! おぉっオレっちがぁヒレン様にぃなんてぇ!」
「アタシぁ「ヒレン」なんてぇ、一言も言ってないさぁねぇ~キィシッシッ♪」
彼女のからかいの笑顔に、
『ほぉうっ!』
慄くインディカ。
過剰なトレーニングによる物か、羞恥による物か、火でも出そうな真っ赤な顔して、
「…………」
大岩で見えぬ彼女の様子を窺うように、
「おぉ、オレっちてぁ……そんなに分かり易い……っスかぁ?」
すると妖精ラミウムは大岩から顔をのぞかせニカッと笑い、
『気付かぬはぁ本人ばかりってさねぇ♪』
「!」
彼女は事あるごとにチラチラとヒレンの様子を横目で窺う、彼の姿を思い返してニヤリと笑い、ガサツで名を馳せる然(さ)しものインディカも、
「くぅ……」
これには羞恥の気マズイ顔を見せた。
しかし恥ずかしいからと言って、大岩を頭上に持ち上げ身動きできぬ今、
(に、逃げられねぇえぇ……)
逃げも隠れも叶わぬ晒し者状態で、ある種の拷問。
「…………」
沈黙するしかない、自称硬派に妖精ラミウムは、
「ほらぁほらぁ御足(おあし)が止まってるさねぇ♪」
「…………」
トレーニング再開を促すことで、羞恥を薄める気遣いを見せつつ、
「…………」
スクワットがゆっくり再開されるや否や、
「それでぇ、アレ(ヒレン)の何処に惚れたのさねぇ?」
『オーバーキルってヤツっスかぁあ! オーバーキルは「礼儀を欠く」ってぇ大兄貴に聞いたっスよぉおぉ!』
「キッシッシッ♪ アタシの知ったこっちゃナイさぁねぇ♪」
「くぅうぅ……」
半泣きのインディカの嘆きに、妖精ラミウムは笑みを見せながら、
「アンタの目にぁ何が見えてんのか? アタシぁ単純に、それが知りたいだけなのさぁねぇ」
「…………」
しばし黙するインディカ。
息も絶え絶え、荒い呼吸をするのは、
「らぁ、らぁぁ、も、もぉ、勘弁してぇ欲しぃっスぅ……」
まともに話す事も出来ない汗だくのインディカであり、
『何の弱音を吐いてるさぁねぇ! 漢になりたいんだろぉお!』
尻を叩くように折檻(せっかん)するのは、妖精ラミウム。
彼女の気合の一喝により、
「にぃっ、ニギィギギギギギィイ!!!」
歯を食いしばる彼は、スクワットの真っ最中。
大岩を、両腕で頭上に持ちながら。
戦う術(すべ)を教えてもらえるつもりでいた彼は、少々常識から逸脱しているように思える基礎トレーニングに対し、
「なぁ、なぁんでぇ、オレっちだけぇ、今更ぁ、こんなぁ」
不平不満を口にしたが、彼が掲げる大岩の上に涅槃像姿で横たえる妖精ラミウムは、彼の訴えを「甘え」とばかり断ずるように、
『ガキがぁ生(ナマ)言ってんじゃナイさねぇえ!』
短く鋭く突っ撥ね、
「アンタにぁその基礎ってヤツが足りてねぇのさねぇ! しかも魔王がいつ攻めて来るかも分からない今ぁ、促成で地力を上げるのさねぇ!」
「そぉ、ぉりゃぁ、そぉ、かもぉ、スぅ、けどぉ、限度ってぇ、モンがぁ」
滝のような汗を流し、両足をプルプル言わせ、今にも膝から崩れ落ちそうになりながらもスクワットを続ける気概を見せておきながら、弱音を口にする彼に、
「…………」
何を想ったか妖精ラミウムは素っ気なく、
「ならぁ止めるさねぇ?」
「!」
顔色が急変した彼に改めて自問を促すよう、
「そもそも、そこらのゴロツキどもが相手なら、複数人を一人で相手に出来る腕っ節ぉアンタがぁ、何でぇそこまでぇ「マジの鉄火場(戦場)」にこだわるさねぇ?」
「…………」
「坊主ってなぁ後方で治療を、」
『それじゃダメなんっスぅ!』
「?!」
疲労困憊の筈のインディカはハッキリした口調で、
「それじゃダメなんスよぉ、ラミィ姐さん」
「…………」
弱気に染まっていた目の色に鋭さが戻り、
「むっっウ、ムゥギギギgィ!」
今にも終わりそうになっていたスクワットを、必死に、さらに続け、その姿を大岩の上から、
「…………」
無言の涅槃像姿で、しばし見下ろす妖精ラミウム。
彼の異様な頑張りを、しばしの無言で眺めて後、
「不愛想な「本好きオンナ」なんぞの、何がそんなに良いのさぁ~ねぇ~?」
ため息交じりの唐突な問いに、
『のぉあぁおっ!!!?』
激しく動揺するインディカ。
大岩を落としそうになるほどバランスを崩し掛けたが、辛うじて体勢を立て直しつつ早口に、
「んなぁ何言ってんスかぁラミィ姐さぁん! おぉっオレっちがぁヒレン様にぃなんてぇ!」
「アタシぁ「ヒレン」なんてぇ、一言も言ってないさぁねぇ~キィシッシッ♪」
彼女のからかいの笑顔に、
『ほぉうっ!』
慄くインディカ。
過剰なトレーニングによる物か、羞恥による物か、火でも出そうな真っ赤な顔して、
「…………」
大岩で見えぬ彼女の様子を窺うように、
「おぉ、オレっちてぁ……そんなに分かり易い……っスかぁ?」
すると妖精ラミウムは大岩から顔をのぞかせニカッと笑い、
『気付かぬはぁ本人ばかりってさねぇ♪』
「!」
彼女は事あるごとにチラチラとヒレンの様子を横目で窺う、彼の姿を思い返してニヤリと笑い、ガサツで名を馳せる然(さ)しものインディカも、
「くぅ……」
これには羞恥の気マズイ顔を見せた。
しかし恥ずかしいからと言って、大岩を頭上に持ち上げ身動きできぬ今、
(に、逃げられねぇえぇ……)
逃げも隠れも叶わぬ晒し者状態で、ある種の拷問。
「…………」
沈黙するしかない、自称硬派に妖精ラミウムは、
「ほらぁほらぁ御足(おあし)が止まってるさねぇ♪」
「…………」
トレーニング再開を促すことで、羞恥を薄める気遣いを見せつつ、
「…………」
スクワットがゆっくり再開されるや否や、
「それでぇ、アレ(ヒレン)の何処に惚れたのさねぇ?」
『オーバーキルってヤツっスかぁあ! オーバーキルは「礼儀を欠く」ってぇ大兄貴に聞いたっスよぉおぉ!』
「キッシッシッ♪ アタシの知ったこっちゃナイさぁねぇ♪」
「くぅうぅ……」
半泣きのインディカの嘆きに、妖精ラミウムは笑みを見せながら、
「アンタの目にぁ何が見えてんのか? アタシぁ単純に、それが知りたいだけなのさぁねぇ」
「…………」
しばし黙するインディカ。
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