ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-32

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 惹かれた理由を妖精ラミウムに問われ、しばし沈黙するインディカであったが、やがてヒレンが見せた、ふとした仕草や、無愛想が通常運転の彼女が時折見せた愛らしい笑みを想い起こし、
「…………」
 厳しいトレーニングのまっ最中ながらも若干表情を緩め、

「き、聴いてもぉ、何の面白味のねぇ、くだらねぇ、単純な話っスよぉ……」
「くだらねぇかぁアタシが決める話さねぇ♪」
「…………」

 やがてインディカはポツリ、ポツリと、

「その……オレっちの周りにぁあんま居ねぇ……そんな存在なんっスよ……」
「ぉん?」
「オレっちの周りぁラミィ姐さんや、ドロプの姉さん方みてぇに、腕っぷし一本で天辺獲った「豪傑揃い」でぇ……」
「…………」

 少々腑に落ちない妖精ラミウム。
(アタシら女に「豪傑」さぁねぇ……)
 それでもツッコミを入れなかったのは、話の腰を途中で折らない為。

 黙って(我慢して)話を聞いていると、
「ヒレン様ぁみてぇな方ぁ、オレっち……初めて……だったんスぅ……」
 ガラッパチな男の独白に、妖精ラミウムは「なるほど」とばかり、両手をポンと打ち鳴らし、

「手の付けられないヤンキーが「文学少女にデレた」ってぇ事さねぇ♪」
『単純にまとめねぇで欲しいッっスぅ!』

 苦言を呈しこそしたが、その心の内では、
(そもそもオレっちぁ、ラディの大兄貴たちとぁ違ってぇ中世の無力な一般人……住む世界が違い過ぎっ……鍛えたところで何の意味が……)
 葛藤も。
「…………」
 口にはしなかった落ち込み、虚無を、改めて抱いていると、妖精ラミウムが大岩の上から、

『イイんじゃねぇ、さねえ♪』
(?!)

「アタシは嫌いじゃないさぁねぇ♪ テメェの頭で考え、何か一つでもタマ(命)ぁ張れる物があるってぇのは、さねぇ♪」
(姐さん……)

 感動を覚えるインディカ。
 そんな彼に、
「しっかしぃさねぇ~」
 彼女はヤレヤレと言った口振りで呆れ笑い、

「アンタもぉ、エライ女にタマぁ賭けちまったモンさぁねぇ~あの女は一筋縄じゃいかないさねぇ~」

 からかうように「キッシッシッ♪」と、ヒト笑い。
 すると横たわる大岩の下から、

「ら、ラミィ姐さぁん……」
「んぉ?」
「ガサツなぁオレっちぁこう言うのもなぁんスけど、その……」
「?」
「女子が、公然と、人前で「タマタマ言う」ってのぁ世間的に、どうなんスかぁねぇ……?」

『!?』

 彼が言わんとしている意味を瞬時に理解した彼女は羞恥で顔を真っ赤に跳ね起き、

『んばあっ! 馬鹿言ってんじゃナイさね! 意味が違うさねぇ意味が! アタシぁ下ネタ言ってんじゃナイさねぇえ!』

 早口で捲(まく)し立て恥をはぐらかすように、
「ホラァ! 足が御留守になってるさねぇ! 鍛錬を続けるさねぇ! ワケ(事情)を知ったからにぁアタシぁ容赦しないから覚悟するさねぇ!」
「ぅえぇ!? これ以上っスかぁ?! それとコレたぁ、」
『つべこべ言うんじゃナイさねぇえ!』
 妖精ラミウムは一喝し、

「横に並びたいんだろ!」
「!」

 弱気に気付かされたインディカではあったが、疲労困憊の体は既に誤魔化しようも無く、

「そぉ、そぅっスけどぉ……マぁジっスかぁ」
「さっさと始める、さねぇ!」

 容赦なく煽り立てた。
 一見すると中世の一般人を相手に、無謀な、理不尽とも思える指導ではあったが、彼女には「口にしなかった思惑」も。

《コイツぁ地力を上げれば必ず化ける》

 彼の中に見た「中世の一般人」と括れぬほどの潜在能力に。

 将来性を買ってのシゴキではあったが、それを告げなかったのは、彼が硬派を自称しながら「お調子者」であるが故。
 可能性の芽を、自ら潰させない為の配慮からでもあった。
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