ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-37

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 白熱のライブが終わりを迎え――

 楽屋でキラキラした汗を流すリンドウ。
 充実に浸る彼女に、ヒレンが唐突、

「もう十分でしょ」
「ん? 何がしぃ♪」
「アイドル活動よ」
「ほぇ?」
「いつまで危険に身を晒すつもり?! 中世人の中にも、天世人を快く思ってない連中は沢山居るのよ」
「地世信奉者たちの事しぃ? アーシが連中に何かされるってぇ?!」

 ケラケラ笑うリンドウに、

『その油断が命取りになるって言ってのよ!』

 珍しくも熱を帯びて叫ぶヒレン。
 そんな彼女に「からかいの笑み」ながらも、語る目は優しく、

「心配してくれてるのしぃ?」
「べっ、別にアンタの身を案じてる訳じゃないわよ。反旗の御旗であるアンタに何かあったら、元老院に対する反抗が終息するからよ」

 少し言い訳がましい物言いに、

「ありがとうしぃ♪」
「!?」

 リンドウは笑顔で汗を拭きながら、素直な感謝を口にはしたものの、

「でも、みんながアーシを待ってるのしぃ♪」
「…………」
「それにアーシが天世と中世の架け橋になる事でぇ、天世人は元老院みたいな連中ばかりじゃないってぇ分かってもらえる、」
『あぁ分かったわよ!』

 ヒレンは彼女の言葉尻を食い気味に、
「ならぁ好きにすれば!」
 声を荒げて楽屋から出て行ってしまった。

 不機嫌に去った後ろ姿に、ボディーガードのターナップは苦笑い。

「あぁ~あ怒らせちまったぁ。まぁオメェ(リンドウ)の使命感ってヤツも、分からねぇワケじゃねぇけどなぁ」
「そんなエラそうなモノじゃナイしぃ♪ アーシぁみんなと楽しい時間を共有してるダケなのしぃ♪」

 その場にはインディカも居て、
(分からねっす……)
 彼は人知れず悩む。

(実行犯と接触している可能性のあるヒレン様と、リンドウ様の身を案じるヒレン様……)

 モヤモヤとした想いを抱えたインディカは、
(…………)
 気付けばヒレンの後を追っていた。
 そして、

『ヒレン様ぁあ!』

 必死の声で呼び止め、
「…………」
 立ち止まりはしたものの不機嫌が収まらない様子の彼女の背に、

「そっ、その……ちょっとお話があるっスぅ……」
「…………」

 周囲の人目を気にし、
「ここじゃ、ちょっと……」
「…………」
 人気の無い、建物の裏手に導き満を持し、

『こっ、困っている事があったら話して欲しいっス!』
「はぁ?」
「り、リンドウ様の周りで何かが起きる時ぁ……その……決まって、同じ気配が、あるのに、気付いたんス……」
「…………」

 訥々と、奥歯に物が挟まる物言いで語るインディカに、ヒレンが訝し気な顔して「それが」と問い返すと、彼は苦悶の表情で、真に言い辛そうに声を絞り出し、

「こ、この間、図書館で、ヒレン様と居た気配と、」
『アタシが主犯だって言いたいワケね』

 言い終わりを待たず、叫ぶでもない淡々とした口振りからは苛立ち以上の物が感じられ、

『ちっ、違うっスぅ! オレっちぁタダぁ!』

 慌てて真意を説明しようとしたが、彼女は即座に口元に嘲笑いを浮かべ、
「アタシが主犯だって言うなら証拠を持って来ることね」
 一瞥くれると彼の返事を待たず、反応を窺う事さえ無く、その場から去った。

 失意のインディカをその場に残し。

「…………」

 ショックのあまり下を向き、
(違うんス……ヒレン様……オレっちぁ、ただ……ただヒレン様のチカラになりたくて……)
 伝えられなかった想いに唇を噛んだ。

 打ちひしがれる彼の姿を、
「…………」
 物陰から密かに窺う何者か。
 歩み寄り、声を掛けるでもなく、

「…………」

 その場から静かに立ち去った。
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