ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
668 / 895
第十章

10-19

しおりを挟む
 ある青年の心が幼女の機転で救われた少し前――

 ラディッシュの心優しき企てによる「トロペオラム達の誘い」で、

『いってくるなぉ♪』

 楽し気に家を後にしたのはチィックウィード。
 しかしいざ出掛けてみると、

(なぉ?!)

 何かに気付きハッと息を呑んだ。
 それは、

(コドモってぇ、ナニしてアソブものなぁお?!)

 世間の子供たちが何をして遊ぶのか、分からない自身に気付いたのである。
 だからと言って、

(どうやってアソブなぉってぇ、きくのはヘンなぉ……)

 天真爛漫が服を着て歩いているような彼女も、一般常識以前の問題を問うのには流石に躊躇いを覚えた。
 とは言え相手は大人でなく、同じ子供である。

 過剰に身構えたりせず、気軽に「何して遊ぶ」とでも訊けば良かったのだが、同年代と遊ぶ経験値が過度に少ない彼女にとって、それは「思い至る事の出来ない発想」だったのである。

 悩んだ末に彼女は、
(キーメ、スプライツ……)
{{?}}
 心の内にある二つの魂に、

(コドモってぇ、ナニしてアソブなぁお?)

 真顔の問い掛けに、
{{そっ、それは……}}
 答えに詰まる二人。
 当然である。

 二人もまた世間一般の子供たちとは異なり、暗殺者として生き、子供の遊びを知らずに来たのだから。
 とは言え、表(おもて)の人格である彼女に「分からない」と告げてしまうのは、裏の人格である二人にとってなんとなく、気分的に、釈然としない「負け」のような気がして意地を張って素っ気なく、

{キーメにきいて、どうするなんぉ}
{スプライツにきいて、どうするなんのぉ}

 声と気持ちを揃えて、

{{きくアイテをまちがえてる(なんぉ・なんのぉ)}}

 質問を突っ撥ねた。
 すると素直が売りの彼女はへそを曲げるどころか、憂い無く明るくパッと花でも咲いたような笑顔で、

(フタリのいうとおりなぉ♪)
{{うっ……}}

 少し後悔を覚えて黙る二人を置き去りに、前を歩く三つの背に、

「キョウぁナニしてアソブなぉ?」

 普通に問う事が出来て、
(これでヨイの、なぉ♪ ありがとぉなぉ♪)
 自身を称賛すると共に、きっかけを与えてくれたと思い込む二人に感謝した。

{{…………}}

 傷口に塩であるなど、露も思わず。
 一方で問われたトロペオラムはと言うと、

「チッチッチッ♪ アソビじゃないんだよなぁ♪」

 オキザリス、フリージアと共に含んだ笑顔で振り返り、
「オレたちは古カブのジュウ人として、村をまもるジケイダンをケッセイしたのさぁ♪」
「「なのさぁ♪」」
(ジケイダン……)
 言葉の意味を理解しているがゆえに嫌な予感しかしないチィックウィード。

 三人の暴走は今に始まった事では無く「またか」との思いに駆られ。
 幼いながらも訝しみ、

「またカッテなことするとぉ、オトナにまたまたおこられるなぁぉ~」

 何ともショッパイ顔をすると、三人は「過去に学んだ」と言わんばかりの慌てようで、
「まっ、「また」が多いしぃ! それにかってはもうしねぇよ!」
「おっ、親にしんぱいかけたりしなのだわ!」
「だっ、だよぉだよぉ!」
 釈明を口々に改めて、

「ナニかあったらオトナにスグ言うさぁ!」

 トロペオラムの宣言に二人もコクコク頷き同意を示し、その姿に、
「…………」
 チィックウィードも留飲を下げ、

「わかったなぉ♪ それでナニするなぉ?」

 すると三人はホッと胸を撫で下ろしてからニッと笑い、
「この村も、人がだいぶふえただろぅ?」
「なぉ」
「だからアタシたち、アヤシイのがいないか「村をジュンカイ」してるの♪」
「そうなんだよぉそうなんだよぉ♪」
 オキザリスとフリージアの補足に、

「なぉぅ……」

 なるほどと思いながらも少し考える。
 この時、彼女は既に「怪しい気配」が近くにあるのを察知していたから。
 察知していたのは彼女だけでなく、心の中の二人も当然ながら気付いていて、

{{チィ、どうするつもり(なんぉ・なんのぉ)?}}

 三人に災いが降り掛かる前の排除の提案をしたが、チィックウィードはニコやかに、

(キケンなサッキはかんじないからぁイマはダイジョブなぉ♪)
{{…………}}

 黙る二人。
 甘いと言える彼女の判断に憤りを覚え。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。

藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。 気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。 訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。 そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。 魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。 連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。 それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。 一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。 本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...