ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十章

10-21

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 監視男の排除を一先ず棚上げするキーメ、スプライツではあったが、チィックウィードも含めて気を許した訳では決してない。
 
《三人(トロペオラム達)に悪意を向けたら許さない》

 男が、まかり小器用に追跡者を演じていたならば現状は違っていて、そう言った意味合いにおいて「彼は幸運であった」と言えるのかも知れない。
 当人にとっては辛く、悩ましくとも。
 
 失態の連続は、男にとって「不幸中の幸い」ではあったが、
(…………)
{{…………}}
 彼の纏う空気の変化を敏感に感じ取る、キーメとスプライツ。

 それは謝罪を繰り返す中に見え始めた「声のトーンの次第な消沈」からも感じた変化であり、漂い始めた仄暗さに、
{{ジコケンオ(なんぉ・なんのぉ)?}}
 男の人生に何があったのか、他愛無い会話に花を咲かせる「幼き四つの背」に何を見たのか、それは中世の世界を守護する七草の一人チィックウィードと言えど、見通すことの出来ない心の内であり、

(きゅうにゲンキなくなったみたいなぉ?)
{{…………}}

 それはキーメとスプライツも同じ。
 精神系天技のスペシャリストであるニプルウォートであったなら、可能な御業であったかも知れないが。

 彼女たちは気付けなかったのである。
 無垢なる笑顔が、他愛無い会話が、大人社会で散々打ちのめされて来た男の苦悩の数々を、対比的に、否が応にも甦らせてしまっていた事に。

 しかしそれは、

《チィックウィード達に何ら責任のカケラも無い話》

 それでも男は失敗を繰り返すたび、謝罪を繰り返すたび、纏う「負の気配」を増して行き、

{{ホウチしててダイジョブ(なんぉ・なんのぉ)?}}

 警戒レベルを上げていく、キーメとスプライツ。
 トロペオラム達に対する場当たり的な、八つ当たり的な強襲を懸念して。

 男の次第な悪化を目の当たりに、
(…………)
 流石のチィックウィードも「安易な心配無用」は口に出来なかった。

 監視男への対処を決断できぬまま時間ばかりが経過し、やがて迷いの内に幼き自警団の「本日の見廻り」と言う名の遊びは無事な終了を迎え、
「「「じゃぁまたぁ♪」」」
「またぁなぉ~♪」
 普段通りを装い、見送り、自身も帰路に就きつつ、

(…………)

 男の動向を気配で探知。
 すると気配はトロペオラム、オキザリス、フリージア、誰の後を追うでも無く何処かへ向かい始め、三人を追尾する他の怪しい気配も感じられず、

(ツイセキをカイシするなぉ)

 チィックウィードは帰路から外れ、
{{…………}}
 キーメ、スプライツと共に「追跡者側であった男」の追跡を開始した。

 家路を急ぐ人々の背がチラホラ見られ始めた時間の中、自信なさげの前屈みですれ違う人々を避け、
「…………」
 人目を気にしてコソコソ歩く背に、

{{まるでラクゴシャ(なんぉ・なんのぉ)}}

 不快感を滲ませる、元暗殺者のキーメとスプライツ。
 自信の無い暗殺者になど命令は下らず、命令を出せない不要な兵士を生かしておくほど籍を置いていた軍は甘くなく、それ故に「初めから自信を放棄している」に見える背が、まるで自身の命の選択権まで「他人に委ねている」かに見えたから。

{{カクゴがナイなら、はじめからアクジにテをそめなければヨイ(なんぉ・なんのぉ)}}

 冷たく突き放す二人に、
(そういうコト、いっちゃダメなぉ♪)
{{…………}}
 チィックウィードはお姉さんぶった口調で窘(たしな)め、

(オトナにはコドモにわからないじょうがイロイロあるなぉ♪)
{{…………}}

 優しく苦言を呈したが、

{{だからってコドモをコソコソつけまわしてヨイリユウに、ならない(なんぉ・なんのぉ)}}
(にゅっ?!)

 これには返す言葉も無かった。
 二人の暗殺者目線を正そうと想い口にした言葉であったが、二人の言い分は正論であったから。
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