ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
672 / 895
第十章

10-23

しおりを挟む
 キーメとスプライツは監視男に対する無自覚嫉妬に端を発する「敵意むき出しな色眼鏡」に加え、報酬を受け取った姿に男の活動目的が「志(こころざし)」からではなく、信念など皆無な、金銭目当てに見え、

{{おカネがメアテでヒトにメイワクかける、ロクなヤツじゃない(なんぉ・なんのぉ)}}
(…………)

 チィックウィードは反論出来なかった。
 目の当たりにした光景から想像されるは「二人の言う通り」であり、男は少々決め付けがましく見られているとも知らず沈んだ気持ちから一転して中身を確認するや否や、

「昼飯一回分より……」

 思わず小さくこぼした。
 その呟きから「よほどの少額」であるのを察したチィックウィードは、
(シンポシャ、とってもケチなぉ……)
{{…………}}
 幼いながらも呆れた様子でなんとも渋い顔をしたが、無償で暗殺家業を強要されていたキーメとスプライツは嫉妬を抱かせる相手ながらも、

{{タダバタラキじゃないだけマシ(なんぉ・なんのぉ)}}

 同情の色を滲ませた。
 年端のいかぬ幼子三人から気遣われているなど、知る由もない男。
 子供の小遣い程度の少額にガッカリする様子を見せたが、そんな自身の心根を即座に猛省する様子も見せた。

 しかしチィックウィード、キーメ、スプライツの第三者的目線から見れば、

《地世信奉者たちに良いように使われている》
 
 その不憫を誘うほどの生真面目さに、
(…………)
{{…………}}
 三人は憐れみを禁じ得なかった。

 そして男の帰宅を見届け、その足で彼女たちが向かった先は、

『今日は如何なされましたかチィックウィード殿?』

 親衛隊副隊長の下。
 隊長であるスパイダマグは来(きた)る天世との衝突に備え、中世の各国に共闘を訴える外遊中で不在が続いている為。
 
 夕飯時が近いと言う時間帯にやって来た「思い掛けない来訪者」に、彼は一枚布で隠した素顔に驚きを隠せなかったが、彼女が眼にした一連の話を聴くなり、
「なるほど……」
 深く頷いてから、

「それで当方らは、何をすれば良いのでしょう?」

 相手が幼女だからと言って下に見たり、軽く扱ったりはしない。
 日頃は距離感を失念した言動や、過剰にこだわる呼称など、暑苦しさが悪目立ちする彼ではあったが、真剣に話す相手には真摯を以て話す、彼が村人たちから好感を以て受け止められている理由の一つであった。

 故にチィックウィードも気持ちを包み隠さず、
「パパぁおしごとでイエにイナイくて、そぉんでチィがカンシしてるときぃ、かわりにママをイエでまもってほしいなぉ」
「……つまり勇者殿には?」
 彼女は小さく「コクン」と頷き、

「ナイショなぉ」
「…………」

 即答できない副隊長。
 勇者ラディッシュの家庭の事情に、他人である自身が勝手に足を踏み入れるのを意味したから。
 距離感の欠如した言動が著しくとも、大人としての思慮は持ち合わせているのである。

 幼子からの懇願に、
「…………」
 彼は少し考えてから、

「勇者殿に秘密にする理由を御伺いしても宜しいか?」
「…………」

 黙するチィックウィード。
 幼いながらも今に適した言葉を探しているのか少し考えてから正直に、

「パパにフタンをかけたくないなぉ」
「負担……で、ありますか?」
「あのヒトをつかまえるのはぁカンタンなぉ。シンポウシャにキョウリョクするのぉイケナイなぉ」
「…………」
「でもぉでもぉあのヒトはとってもマジメでぇ、ジンセイうまくいかなくてぇ、シンポシャにつけこまれたダケ、」
「それだけが理由で?」

『!』

 素朴な疑問から生まれたと思われる指摘に、
「…………」
 彼女は首を静かに横に振り、

「チガウ……なぁぉ……」

 信奉者たちにそそのかされ監視男の生真面目な横顔と、ラディッシュの生真面目な横顔を想い、重ねながら、

「ブキヨウでマジメなパパにニテルきがしてぇ……ほっとけないなぉ……コドモのチィにぃパパのココロはぁ、すくえないなぉ……だからせめて……」

 幼いながらも微かな自嘲を伴った笑みからは、自身の幼さを憂いた悲しみが見て取れ、
(慈愛の強さと言うモノに、年齢は関係がない物なのですね……)
 幼女から学んだ副隊長は、

(女性に本音をここまで語らせておいて突っ撥ねるは武人の名折れ!)

 腹を括ると、

『分かりました! お引き受けいたしましょう!』
「!」

 要請を快諾こそしたが、

「ただし、」
「なぉ?!」
「お引け受けするに当たり、一つだけお約束下さい」
「アブナことぉしないな、」
「そのような心配はしておりません」
「なぉぉ?」
「七草殿に危害を加えられる強者など、そうは居りませぬ故に」
「ふにゅ?」

 愛らしい首傾げに、彼は一枚布の下に満面の笑顔を浮かべていると分かる声で、
『その者の迷える心を、必ずや救って下さい』
「!?」
 チィックウィードは少し驚いた顔を見せたが、すぐさま、

『やくそくするなぉ♪』

 キラキラ輝く天使の笑顔を見せた。
 愛らしい首傾げから流れるように続く、キラキラ輝く天使の笑顔のコンボ攻撃に、
 
(うぅっ!)

 胸の奥をキュンとさせられる副隊長。
 ロリと言う名の「禁断の扉」を開きかけ、

(いっ、いかぁん!!!)

 慌てて閉じ、そこまで彼女に気を掛けてもらっている監視男を少し羨んだ一方、信奉者の甘言に乗せられたしまった当人は、
「…………」
 その様な取り引きが行われていたなど知る由も無く「密かなつもりの監視」を以降も続けた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...