ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十章

10-28

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 幼きチィックウィードが一人の青年の未来を救って後――

 村内のとある喫茶店の、穏やかな陽の差す窓辺の席で、
「「…………」」
 午後の紅茶を優雅に嗜むのは、パストリスとカドウィード。

 カップに注がれた紅茶を上品に一口、口元に運んで後、
「ボク達って……」
「カディらぁは……」
 静かに下すと、

『『いったい何をしているの(でぇす・でぇありぃんしょぅ)……』』

 一転したどんより顔に。
 落ち込みモードの彼女たちは、

「チィちゃんは一人の青年を救ってぇ……ニプルはラディの代理で働いていて、」
「タープも、坊(ぼう:インディカ)の修行の相手ぇ……他の者らも鍛錬の後ぃ、各々活動しているに拘らずぅ……」

 平たく言えば、暇を持て余していた。
 ここが戦場ならば重宝されていた二人の高い技術も、より専門性が高く、より豊富な知識と経験を持ったプロフェッショナルが集まる村の中では、

《お気になさらず我らにお任せ下さい♪》

 協力を丁重に断られる、悪く言えば邪魔者でしかなかったのである。
 免許を取得していない付焼刃的な技術は、平時において「施しを受ける側」にとっても不要なのである。

 逆を言えば無免許の二人を必要としない「平和な証拠」であり、「暇が悩み」とは何とも贅沢な悩みではあった。

 しかし二人は「中世を守る七草」である。
 何かせずには居られない責任感に、何かしなければいけない義務感を加え、仲間たちはそれぞれに活躍の場を見付けている中、する事が見つけられないパストリスはテーブルに突っ伏し、

「ボクたちにも、何か出来る事はないのでぇすぅ~? 何が必要とされているかぁ、せめて「情報が欲しい」のでぇすぅ……」
『それでぇありんすぅ♪』

 彼女の嘆きに、突如目を輝かせるはカドウィード。
 驚き、不思議そうな顔をするパストリスに彼女は、

『する事がナイのならぁ「探す」でぇありぃんすぅ♪』
『なるほどなのでぇす♪ 断られたのなら自分の足で探せば良いのでぇす♪』

 パストリスも目を輝かせノリノリで身を乗り出したが、
「…………」
 瞬間的に冷静を取り戻し、

「でも、どうやってぇなのでぇす?」

 肝心な「探し方」を失念していたのに気付いた。
 するとカドウィードは妖艶な笑みを浮かべ、

『こうするでぇありぃんすぅ♪』
『!?』

 気が付けばパストリスはカドウィードと共に、とある酒場のテーブル席に。
 ウイッグにカラコン、服装も好んで着ている普段着からかけ離れた物を互いに着用して。

(きぃ、着慣れなくてぇ少し気恥しいのでぇすぅ……)
(素性を悟らせぬにはぁこれ位が丁度良きにぃありんすぇ♪)

 ようするに「変装しての情報収集」である。
 そうでもしなければ名前と顔が知れ渡った二人は「町に埋もれる生の声」を耳に出来ないと判断したから。

 今日は酒場で、明日は女子の間で有名な「こじゃれたカフェ」で。
 店を変え、装(よそお)いを変え、討伐依頼の無い鍛錬あとの自由時間を惜しみなく使い、情報収集に勤しむ二人。

 仲間たちのように「活躍できる場」の情報を探し求め。
 ある時は茶を、ある時は人気のパフェのような物を食べながら。

 そんな日々が続いたある日、その日の調査対象に選んだカフェのオープンテラスで、
「「…………」」
 暗い顔をしてうつむく、変装姿のパストリスとカドウィード。
 まるで調査活動を開始するより前の「どんより」で。

 二人は注文した軽食を前に、
「「…………」」
 しばしの沈黙の後、

「意外と……異常はナイのでぇす……」
「平穏は良きにぃありぃんすが……」

 二人のチカラが必要とされそうな情報は、得られなかったのである。
 知り得た情報と言えば、

《各店自慢の一品は、噂に違わぬ美味しさ》

 発展著しく人が集まる所には「美味い物も集まる」と言ったところか。
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