680 / 896
第十章
10-31
しおりを挟む
男女が持つ黒球の回収を頼んだカドウィードの声色の微妙な変化から、傷心を察したパストリスは静かに頷き、
「…………」
男女の手から取り上げると、カドウィードは押さえ付けたままの二人に向け、
「確かに、天世に改善すべき点は幾つもあるさぁ……けどねぇ!」
「「?!」」
『それとこれとを一緒くたにしてぇ、中世の同胞や自分の命を安売りしてぇんじゃねぇ!』
「「ッ!」」
『命は時が経てば変わる「流行りの着飾り」じゃねぇんだぞオ! 浅い思慮の結果でも「失われた命」は、二度と戻りはしねぇと肝に銘じておきやがれぇえ!』
「「…………」」
その言葉には「確かな重み」があった。
悲しき過去の積み重ねから紡ぎ出された言葉であり、机上の説教を長々聴かされるよりよほど骨身に応える。
「「…………」」
怯えるだけであった男女の眼からは、落胆と後悔が。
すると彼女は不機嫌に、
『チッ! 何の志(こころざし)も持たず、流行(はや)り廃(すた)りに乗っかるだけの連中はスグこれだァ!』
苛立ちを露に、
「簡単に後悔する位なら最初から首なんぞを突っ込んでじゃねぇ!」
無造作に男女を解放し、ヒヤヒヤしながら見守っていたパストリスに、
『行くぞ』
先んじて歩き出した。
「え?! えとぉ???!」
黒球を両手に狼狽するパストリス。
法を犯した男女を警備隊に突き出す訳でも、心のケアをする訳でもない背に戸惑い、
(ふっ、二人は放置なのでぇす?!)
そうこう悩んでいる間にも背はズンズン遠ざかって行き、
(うっ、うぅ~~~ぅ!)
回復役を担う事もありヒーラー気質の表れなのか、心根の優しさがそうさせたのか、変装姿のパストリスは放心してへたり込む男女に、
『がっ、ガンバって生きて下さいなのでぇすぅ!』
取り急ぎ頭を下げると、
『まぁっ! 待って下さいなのでぇすぅうぅ!』
慌ててカドウィードの背を追った。
大通りに出て、追いつき、並び歩き、
「…………」
正面を見据えて歩き続ける彼女の横顔を、それとなくチラ見。
仮装に等しい派手メイクの下は平静に見えたが、
(まだ怒っているのでぇす……)
長い付き合いから、心の内が見て取れた。
無理もない話である。
守っている人間たちが、自らの意志で、嬉々として火中に飛び込む真似をしているのを目の当たりにしたのだから。
自国の兵、騎士、警備隊隊員など、最前線で命懸けの戦いをしている者達の献身の上に成り立っている平和にも拘らず。
会話をきっかけに「ガス抜きが出来れば」と思い至るパストリスではあったが、元よりコミュ障の集まりのような中世の七草に、そんな「気の利いた言葉」がポンポン浮かぶ筈も無く、
(……何も思い浮かばないのでぇす……)
思い煩う彼女であったが、
(コレなのでぇすぅ!)
丁度良い「話のタネ」が両手に。
『ねぇカディ、この黒球はどぅするのでぇす♪』
「?」
振り向くカドウィード。
訊くまでも無く警備隊に渡すだけの物であり「何を今更」とも思ったが、目にした彼女の笑顔に、振り向いたのをきっかけに、
(!)
周囲に不機嫌を、無意に振り撒いていた自身に気が付いた。
そして思った。
(カディもぉ、まだまだ精進がぁ足りんせぇんなぁ~)
気遣いに自嘲気味の笑みを小さく浮かべると、いつもの妖艶な笑みを取り戻し、密かな気遣いには気付かぬ体で最もらしく、
「押収品、証拠品としてぇ警備隊に渡すがぁ一番にありぃんしょうなぁ~♪ 男女に関しては取り逃がしたとでもぉ誤魔化しんしょぅ♪」
カドウィードの笑みから思惑が知られてしまったのに気付きはしたが、ガス抜きが出来たと分かる「いつもの笑顔」に、
『ハイなのでぇす♪』
内心で喜ぶパストリスも屈託無い笑顔を返した。
「…………」
男女の手から取り上げると、カドウィードは押さえ付けたままの二人に向け、
「確かに、天世に改善すべき点は幾つもあるさぁ……けどねぇ!」
「「?!」」
『それとこれとを一緒くたにしてぇ、中世の同胞や自分の命を安売りしてぇんじゃねぇ!』
「「ッ!」」
『命は時が経てば変わる「流行りの着飾り」じゃねぇんだぞオ! 浅い思慮の結果でも「失われた命」は、二度と戻りはしねぇと肝に銘じておきやがれぇえ!』
「「…………」」
その言葉には「確かな重み」があった。
悲しき過去の積み重ねから紡ぎ出された言葉であり、机上の説教を長々聴かされるよりよほど骨身に応える。
「「…………」」
怯えるだけであった男女の眼からは、落胆と後悔が。
すると彼女は不機嫌に、
『チッ! 何の志(こころざし)も持たず、流行(はや)り廃(すた)りに乗っかるだけの連中はスグこれだァ!』
苛立ちを露に、
「簡単に後悔する位なら最初から首なんぞを突っ込んでじゃねぇ!」
無造作に男女を解放し、ヒヤヒヤしながら見守っていたパストリスに、
『行くぞ』
先んじて歩き出した。
「え?! えとぉ???!」
黒球を両手に狼狽するパストリス。
法を犯した男女を警備隊に突き出す訳でも、心のケアをする訳でもない背に戸惑い、
(ふっ、二人は放置なのでぇす?!)
そうこう悩んでいる間にも背はズンズン遠ざかって行き、
(うっ、うぅ~~~ぅ!)
回復役を担う事もありヒーラー気質の表れなのか、心根の優しさがそうさせたのか、変装姿のパストリスは放心してへたり込む男女に、
『がっ、ガンバって生きて下さいなのでぇすぅ!』
取り急ぎ頭を下げると、
『まぁっ! 待って下さいなのでぇすぅうぅ!』
慌ててカドウィードの背を追った。
大通りに出て、追いつき、並び歩き、
「…………」
正面を見据えて歩き続ける彼女の横顔を、それとなくチラ見。
仮装に等しい派手メイクの下は平静に見えたが、
(まだ怒っているのでぇす……)
長い付き合いから、心の内が見て取れた。
無理もない話である。
守っている人間たちが、自らの意志で、嬉々として火中に飛び込む真似をしているのを目の当たりにしたのだから。
自国の兵、騎士、警備隊隊員など、最前線で命懸けの戦いをしている者達の献身の上に成り立っている平和にも拘らず。
会話をきっかけに「ガス抜きが出来れば」と思い至るパストリスではあったが、元よりコミュ障の集まりのような中世の七草に、そんな「気の利いた言葉」がポンポン浮かぶ筈も無く、
(……何も思い浮かばないのでぇす……)
思い煩う彼女であったが、
(コレなのでぇすぅ!)
丁度良い「話のタネ」が両手に。
『ねぇカディ、この黒球はどぅするのでぇす♪』
「?」
振り向くカドウィード。
訊くまでも無く警備隊に渡すだけの物であり「何を今更」とも思ったが、目にした彼女の笑顔に、振り向いたのをきっかけに、
(!)
周囲に不機嫌を、無意に振り撒いていた自身に気が付いた。
そして思った。
(カディもぉ、まだまだ精進がぁ足りんせぇんなぁ~)
気遣いに自嘲気味の笑みを小さく浮かべると、いつもの妖艶な笑みを取り戻し、密かな気遣いには気付かぬ体で最もらしく、
「押収品、証拠品としてぇ警備隊に渡すがぁ一番にありぃんしょうなぁ~♪ 男女に関しては取り逃がしたとでもぉ誤魔化しんしょぅ♪」
カドウィードの笑みから思惑が知られてしまったのに気付きはしたが、ガス抜きが出来たと分かる「いつもの笑顔」に、
『ハイなのでぇす♪』
内心で喜ぶパストリスも屈託無い笑顔を返した。
0
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる