ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十章

10-37

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 村の名前決まってしばし後の某日――

 スッキリと晴れ渡った青空の下、遠くには名峰と呼ぶに相応しい「新緑の山々」が連なり、足元には艶やかで、色取り取りな花弁が美しく共演する花畑が何処までも広がり、平原に爽やかで心地良い風が吹き抜ける。

 その桃源郷とでも呼べそうな空間の中央に、草花で彩られた「美しき鳥かご」を模した西洋風東屋ガゼボが。

 中に二つの人影も。

 凛然と立つ一人の傍らには、大理石のように白く、S字曲線を多用したロココ調とでも称すべき、優美で、気品溢れるデザインのテーブルに、同じく優美な曲線を用いた椅子に上品に座り、白磁のティーカップで優雅に茶をたしなむ人物の姿が。

 それは美しく着飾ったフルール国女王であり、立って居たのは最側近のリブロン。
 笑みをたたえる女王の傍ら、毅然と、凛然と、何物にも揺るがぬ巌(いわお)のような表情と佇まいで。

 すると女王は、頬を撫でる微風に目を細めながら妖艶にクスリと笑い、
「リブロンやぁ」
「ハイ!」
「その様に緊張し通しでぁ最後までもちぃせぇんぇ?」
「!?」
 からかうような物言いに、少し痛い所を指摘された彼女は、

「でぇ、ですがぁ!」

 気心が知れた二人きりと言う事も手伝ってか、言い訳がましく取り繕うように、

「こぉ、これから何が起きるとも知れませぇんしぃ!」

 変わらぬ部下の生真面目を、女帝は扇子で隠した口元で「ほっほっほっ」小さく笑い、

「勇者様が用意された会見の場にぃありぃんすぇ、何を危惧しぃんしょぅ♪」
「うぅ……」
「初体験は一度きり。ゆえにぃ楽しまねばぁ勿体無きにぃありぃんすぇ♪」
「そっ、それは、そうかもですが……」

 躊躇いつつ、
(どうして女帝の時の陛下は、言い回しがこうも●●●なのでしょう……同人作家の時との振り幅が大き過ぎです……)
 戸惑いを見せた。

 すると、

『カァーカッカッ♪ 流石フルールの女帝じゃ腹の据わりが違うわい♪』

 いつからテーブルに着いていたのかエルブ王が、
「ワシなど年甲斐も無く、心が燥(はしゃ)いでおるわぁい♪」
 少年のような笑み。

 そこへ、

『流石はフルール国の天技だな♪』

 称賛の声と共に、テーブル席に一瞬にして姿を現したのはカルニヴァ王。
 座ったままの格好で姿を現し、

「仮想空間とは言えこれほどまでに美しいと知っていたら、妻のクラリアも連れて来るべきであったな♪」

 同盟国である二大国の王の称賛に、女帝フルールは気を良くしたのかフッと妖艶に笑いつつ、
「異世界の記憶を取り戻した勇者様の御助力があっての事にぃありぃんす♪ 通信の天技を斯様(かよう)に応用しようなどぉ思いつきもしやぁせぇんしたぇ♪」
 ラディッシュの功績であるのを強調した上で、妖艶に怪しく企んだ笑みを小さく浮かべてから、

「のぉリブロンや♪」
『のぉわぁ?!』

 突然の振りに、

「なぁっ、何故にそこで私に同意を求めるのですか陛下ぁ!」

 動揺を露にしたが、
「!」
 エルブ王とカルニヴァ王の察したニヤケ顔に、彼女は「コホン」と短い咳払いをしてお茶を濁してから平然を取り戻そうと、

『とぉ、取り乱し失礼致しました』

 しかしエルブ王は「カァーカッカッ♪」と愉快げに笑い、

「構わぬじゃて♪ 若いとは良き事よの♪」

 カルニヴァ王も、

「気にすんなぁ♪」

 気さくに笑うと、からかい半分、

『しかし側近殿も、えらく競争率の激しい男を見初(みそ)めたものだなぁ♪』
『いっ、いえいえ私は別にぃ!』

 赤面しながら慌てて取り繕うリブロンであったが、
「私など……」
「「「?」」」
 何を想ってか急に消沈、自嘲するかのような寂しげな笑みを浮かべ、

「私には、無理です……あの方が行った献身を前に私の覚悟など……足りぬ私など並び立つ資格が……」

 彼女が口にした「あの方」とはドロプウォートの事であり、察した各国王も、
「「「…………」」」
 それぞれに思う所があるのか黙ると、

『ちょっとちょっとウチ(恋敵)の前で、それを言うのさぁ~?』
「「「「!」」」」

 辟易した声を上げたのは、いつの間に同席して居たニプルウォート。
 彼女はラディッシュのアイディアを基に「通信の天技」を応用して作られた「仮想空間の天技」に不具合が起きていないか、また起きた場合の対処要員として参加していた。

 大まかな仕組みとしては、天技により肉体から離れた精神がクラウドサーバーで語らっているような物で、新技術の不具合発生時に即応できる「精神系天技のスペシャリスト」であり、開発にも携わった彼女に参加の白羽の矢が立ったのである。

 そして彼女には「アルブル国代表」としての役割も。

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