ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-6

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 地世王ラミウムの企ての一部が成就したのを知らされた勇者組――

 黒球の発動条件が何であったのかは「不明のまま」ではあったが、副隊長たち親衛隊の言葉に、

((((中世が無事で良かった……)))))

 一先ずの安堵を覚えた。
 しかし、

「「「「「…………」」」」」

 素直に、手放しで喜ぶことは出来なかった。
 天世人であるリンドウとヒレンの胸の内を思えば。

 結局、天世への攻撃までは防げなかったから。

 聴かされた「地技の規模」から類推して天世の人的被害は免れず、一般人にまで被害が及んでいるのは容易に想像でき「中世の無事のみ」を以て安易に喜ぶことは出来なかったのである。

 天世が受けたであろう被害を、仲間たちより深刻に受け止める天世人の二人ではあったが、
「「…………」」
 その想いは複雑。

 救援に向かう手立てを「すぐにでも考えよう」と言い出さなかったのは、言えなかったのは、若い部類の天世人である二人も知らなかった「天世の自業自得な一面」を、前地世王ラミウムから知らされてしまったから。

 彼女の言葉の全てを信じた訳ではなかった。

 それでも天世の政(まつりごと)の中央近くで長く過ごした経験から、彼女が語った言葉には腑に落ちる箇所が幾つもあり、
((…………))
 二人が疑心暗鬼に囚われるに、十分。

 それ故に、
「「…………」」
 何も言い出せなかったのである。

 二人の内なる葛藤を察するラディッシュ、ニプルウォート、カドウィードではあったが、苦悩する仲間に対し、

(((言葉が見つからない……)))

 故郷を別にする三人が、今、どの様な言葉を用いたとしても、詰まるところ「中身の薄い気休め」にしか聴こえない気がして。
 神経を逆なでする言葉なら、

《言わぬが華》

 しかし甚大な被害を受けたであろう天世ばかりを心配しても居られない事実が、ニプルウォートの口から。
 怪訝な顔をした彼女は親衛隊副隊長を見据え、

「ちょっと良いさぁ、フクタイチョウ」
「?」

 即座に「呼称の訂正」を促そうとする彼を、

「それは今はイイさ」

 手で制し、懸念の色濃い声で、
「展開中の「天技の盾」は、いつまで張って居られるモノなのさぁ?」
「「「「え?!」」」」
 ギョッとするラディッシュ、カドウィード、リンドウ、ヒレン。

 限界があるなど思いもせず、また深刻な口振りから「さほど猶予が無い」のも感じ取り。

 緊迫を以て答えを求められた副隊長はいきなり集まった視線にたじろぐ動きを見せ、
「…………」
 しばし黙して後、観念したのか、考えがまとまったのか、一枚布で素顔を隠されていては表情から読み取るのは不可能であったが、素振りから平静は取り戻した様子で、

「仰る通りであります」

 静かに頷くと、

「試用段階にありながら、これほど早く運用機会が訪れようとは思っておらず」
「「「「「…………」」」」」
「今は試験による大量消費を想定して備蓄していた恩恵を使って、維持をしているのですが……」
「「「「「…………」」」」」

 口籠りから心中を察したラディッシュは、類推から彼が口にするのを躊躇った言葉を代弁するように、
「消費に補充が追い付かない?」
「!」
 推察は正しかったようで副隊長は小さな驚きを見せ、

「開発途上で効率化が図れておらず消費が激しいのに加え、これから届く「天世からの恩恵」が従来の期待値を大きく下回るのが予想され……」
「天世からの恩恵が減る? 減らされるの? 被害を受けて出せなくなる、とか?」

 地球育ちの勇者の素朴な疑問に対し、

『それはナイしぃ』

 声を上げたのはリンドウ。
 確信を感じさせる物言いで、

「被害が出て「出せなくなる」は、ナイのしぃ」

 補足する形でヒレンも、

「そうよ。天世の主要な機関は全て「先人の失われた英知の天技」で守られてるの。例え地世の直接攻撃を受けたとしても被害は皆無だわ」

 自信を以て答える二人に、
「それならどうして……?」
 更なる疑問が。
 
 すると
『お人好しさんは、分かっちゃいないねぇ~♪』
「?!」
 ニプルウォートの笑い声が。

 振り向くと彼女は苦笑を浮かべていて、彼女の隣に立ち、共に理由が分かった様子を窺わせるカドウィードも妖艶な笑みを浮かべながら、
「先王ラミウムの話を聴いきぃんした中世人の如何ほどがぁ、以前と変わらぬ「無償の祈りを捧げたい」と思うにありんしょぅなぁ~♪」
「あっ!」
 ハッとする、御人好し勇者。

 信仰に等しく、文化として深く根付いていたとは言え「搾取されていた」と知らされた人々が変わらぬ祈りを捧げ続けるとは到底思えず、止めてしまう人が続出するのは当然の流れであり、人情であり、先王ラミウムが語った言葉を信じるならば、

《止めた人の数だけ天世からの恩恵は目減りする》

 目減りするとは「中世を守る盾」の稼働を続けるのに必要な天法も、十分な量を補充できないのを意味していた。

 しかし天世からの恩恵の「目減りの害」は、それだけに留まらない。
 天候の安定にしろ、農作物の成長にしろ、中世人の健康にしろ、中世の安寧は「天世からの恩恵」に支えられているのが現実であったから。

 とは言え「祈りの放棄」は止む無し。
 一般論として搾取されていると知りながら尚も献身を続けるなど「度が過ぎた正直者」でしかなく、世界の何割の人がそれに当てはまるのか。

 天世の存在をバックに絶大な強権を振るって来た教会でさえ、もはや強要はできなかった。
 組織の弱体化が目に見える上に、以前のような強引な強制や取り締まりは世界を敵に回す可能性さえあったから。

『それでぇさぁ』

 ニプルウォートが逸れた話を本筋に戻し、
「見立てで「天技の盾」は、どれ位もちそうなのさぁ?」
 すると副隊長は、

「正直、分からないのであります……実用段階での使用が初めてな上に、展開させるのに必要な天法の補充がままならないとなれば……」

 躊躇いを見せながら口籠りつつ、

「開発者たちの「見積もり」で良ろしければ」

 重々しく口を開くと、

「数週間……一か月は持たないであろうと」
(((((数週間……)))))

 長いようで短い期間。
 この期間にラディッシュたち勇者組を含め中世の指導者たちは、打開策を見付ける必要に迫られたのであった。
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