715 / 895
第十一章
11-9
しおりを挟む
ラディッシュが大国の諸王を前に大見得を切った少し前――
中世を幾度も救った勇者から全幅の信頼を表明されたパストリスは、
「…………」
些か緊張した面持ちながらも毅然と正面を見据え、魔王城謁見の間の玉座に座していた。
右には金狼グランを、左には中身が地世に堕とされたゴゼンである全身鎧とターナップを立たせ。
そして玉座が置かれた壇上の数段下がった床には、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
整然と整列して跪く、武装した合成獣たちの姿が。
玉座に近いほどヒト型に近く、それは知力、戦闘力の高さを示し、離れるほど野性味を帯びる合成獣たちの優劣により、謁見の間は埋め尽くされていた。
だからと言って、それが全てではない。
慣例として座る位置が序列を表してはいたが、一部に例から外れた「特例の並び」もチラホラと。
その最たる者が言わずもがな、ターナップである。
中世では人並外れた天法を有し、類い稀な治癒能力のみならず、身体強化により剛腕も振るった彼ではあったが、ここは地世である。
天世の恩恵が届かぬこの世界で彼は戦士として「最弱」であった。
その自覚は本人にもあった。
しかしそれを認め、首を垂れてしまっては、
《お嬢の隣に立って支えられなくなる!》
城の外にも、拝謁を許されない合成獣たちの姿が。
知能が高く兵士である者は地世の各地に配され、そうでない者も各地でバラバラに生息していたのだが、新王の尊顔を拝するは叶わずとも、
《新時代の幕を開の舞台に少しでも近づいて居たい》
本能的な欲求か、それとも見知らぬ強大なチカラに引き寄せられてか、埋め尽くされていた。
やがて金狼グランが、同じ側近クラスの位置に立つゴゼンとターナップを差し置いて、
『皆の者、聴くがよい! 此方におわすパストリス様が、我らの「新たな王」であらせられる!』
新王誕生を高らかに宣言。
右側にキーマンを立たせるは、世の理(ことわり)なのか。
それはさて置き「新たな王」の誕生に、
『『『『『『『『『『ギャァオオォォオォオーーーーーーッ!』』』』』』』』』』
耳を劈く歓声を上げる合成獣たち。
城の外でも、中から聴こえた歓声に呼応して咆哮する合成獣たち。
堅牢な城が振動していると思わせるほどの大騒ぎに、思わず両手で両耳を塞ぎ、
『ったくゥウルせぇえぇなぁあぁ!』
悪態を吐くターナップであったが、パストリスを新王として迎える合成獣たちの姿勢に、困惑笑いを浮かべながらも嬉しそうな彼女の堂々たる姿に、
(…………)
思わず口元が緩むと、中身がゴゼンである全身鎧が彼の顔を覗き込み、
「こんなにウルサイのにキュミは何をニヤニヤしてるぅんだぁい~キュミってマゾ系だよねぇ~」
「にっ、ニヤケてぇねぇしマゾでもねぇ!」
即で憤慨、
「ってぇかオメェの方こそ何で平然としてられるだよ!」
「俺くぁい? この鎧には色々な効果が付与されているからぁねぇ~♪」
「なっ?! 汚ぇえぇオメェだけぇ!」
「先輩特権だよねぇ~♪」
「何がぁ誰の先輩だぁ!」
壇上でモメ始めると金狼グランが小さなため息を一つ吐き、
「仲良しは後にしてもらえるか?」
呆れ顔に、
『誰が仲良しだぁ!』
ターナップが即でツッコミ返すと、騒ぎに気付いた玉座のパストリスが小さくクスクス笑い、
「寂しくなさそうで良かったのでぇす♪」
その笑顔に彼は苦笑を返し、
「お嬢までぇ勘弁してくれぇよ~」
辟易した顔で嘆いた。
すると金狼グランが「与太話(よたばなし)はこれまで」と言わんばかり、歓喜の渦にある合成獣たちに向かって毅然を以て、
『静まりなさァアァい!』
一喝。
促された静粛に、
「「「「「「「「「「ッ!」」」」」」」」」」
合成獣たちは一斉に静まり、粛々と跪いた。
より強い者の声に異を唱えず従う、純然たる縦社会。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
水を打ったような静まりに、彼は響く凛とした口調で、
「パストリス陛下。皆の者に御言葉を」
下げる頭に、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
張り詰める空気に、
(お、お嬢ぉ……)
ターナップが思わず息を呑んだ。
彼女の緊張が如何ほどであるか、その心中を慮り。
しかし、地世の世界の玉座に座する覚悟を決めた彼女の心は、彼が想像していたような柔(やわ)な物ではなかった。
中世を幾度も救った勇者から全幅の信頼を表明されたパストリスは、
「…………」
些か緊張した面持ちながらも毅然と正面を見据え、魔王城謁見の間の玉座に座していた。
右には金狼グランを、左には中身が地世に堕とされたゴゼンである全身鎧とターナップを立たせ。
そして玉座が置かれた壇上の数段下がった床には、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
整然と整列して跪く、武装した合成獣たちの姿が。
玉座に近いほどヒト型に近く、それは知力、戦闘力の高さを示し、離れるほど野性味を帯びる合成獣たちの優劣により、謁見の間は埋め尽くされていた。
だからと言って、それが全てではない。
慣例として座る位置が序列を表してはいたが、一部に例から外れた「特例の並び」もチラホラと。
その最たる者が言わずもがな、ターナップである。
中世では人並外れた天法を有し、類い稀な治癒能力のみならず、身体強化により剛腕も振るった彼ではあったが、ここは地世である。
天世の恩恵が届かぬこの世界で彼は戦士として「最弱」であった。
その自覚は本人にもあった。
しかしそれを認め、首を垂れてしまっては、
《お嬢の隣に立って支えられなくなる!》
城の外にも、拝謁を許されない合成獣たちの姿が。
知能が高く兵士である者は地世の各地に配され、そうでない者も各地でバラバラに生息していたのだが、新王の尊顔を拝するは叶わずとも、
《新時代の幕を開の舞台に少しでも近づいて居たい》
本能的な欲求か、それとも見知らぬ強大なチカラに引き寄せられてか、埋め尽くされていた。
やがて金狼グランが、同じ側近クラスの位置に立つゴゼンとターナップを差し置いて、
『皆の者、聴くがよい! 此方におわすパストリス様が、我らの「新たな王」であらせられる!』
新王誕生を高らかに宣言。
右側にキーマンを立たせるは、世の理(ことわり)なのか。
それはさて置き「新たな王」の誕生に、
『『『『『『『『『『ギャァオオォォオォオーーーーーーッ!』』』』』』』』』』
耳を劈く歓声を上げる合成獣たち。
城の外でも、中から聴こえた歓声に呼応して咆哮する合成獣たち。
堅牢な城が振動していると思わせるほどの大騒ぎに、思わず両手で両耳を塞ぎ、
『ったくゥウルせぇえぇなぁあぁ!』
悪態を吐くターナップであったが、パストリスを新王として迎える合成獣たちの姿勢に、困惑笑いを浮かべながらも嬉しそうな彼女の堂々たる姿に、
(…………)
思わず口元が緩むと、中身がゴゼンである全身鎧が彼の顔を覗き込み、
「こんなにウルサイのにキュミは何をニヤニヤしてるぅんだぁい~キュミってマゾ系だよねぇ~」
「にっ、ニヤケてぇねぇしマゾでもねぇ!」
即で憤慨、
「ってぇかオメェの方こそ何で平然としてられるだよ!」
「俺くぁい? この鎧には色々な効果が付与されているからぁねぇ~♪」
「なっ?! 汚ぇえぇオメェだけぇ!」
「先輩特権だよねぇ~♪」
「何がぁ誰の先輩だぁ!」
壇上でモメ始めると金狼グランが小さなため息を一つ吐き、
「仲良しは後にしてもらえるか?」
呆れ顔に、
『誰が仲良しだぁ!』
ターナップが即でツッコミ返すと、騒ぎに気付いた玉座のパストリスが小さくクスクス笑い、
「寂しくなさそうで良かったのでぇす♪」
その笑顔に彼は苦笑を返し、
「お嬢までぇ勘弁してくれぇよ~」
辟易した顔で嘆いた。
すると金狼グランが「与太話(よたばなし)はこれまで」と言わんばかり、歓喜の渦にある合成獣たちに向かって毅然を以て、
『静まりなさァアァい!』
一喝。
促された静粛に、
「「「「「「「「「「ッ!」」」」」」」」」」
合成獣たちは一斉に静まり、粛々と跪いた。
より強い者の声に異を唱えず従う、純然たる縦社会。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
水を打ったような静まりに、彼は響く凛とした口調で、
「パストリス陛下。皆の者に御言葉を」
下げる頭に、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
張り詰める空気に、
(お、お嬢ぉ……)
ターナップが思わず息を呑んだ。
彼女の緊張が如何ほどであるか、その心中を慮り。
しかし、地世の世界の玉座に座する覚悟を決めた彼女の心は、彼が想像していたような柔(やわ)な物ではなかった。
0
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に失敗したと捨てられましたが、魔王の家政婦になりました。
藤 ゆみ子
ファンタジー
家政婦として働いていた百合はある日、会社の倒産により仕事を失った。
気が沈んだまま家に帰り、おばあちゃんの仏壇に手を合わせていると突然知らない場所にいた。
訳がわからないまま、目の前にいる神官に勇者の召喚に失敗したと魔王の棲む森へと捨てられてしまう。
そして魔物に襲われかけたとき、小汚い男性に助けられた。けれどその男性が魔王だった。
魔王は百合を敵だと認識し、拘束して魔王城へと連れていく。
連れて行かれた魔王城はボロボロで出されたご飯も不味く魔王の生活はひどいありさまだった。
それから百合は美味しいご飯を作り、城を綺麗にし、魔王と生活を共にすることに。
一方、神官たちは本物の勇者を召喚できずに焦っていた。それもそう、百合が勇者だったのだから。
本人も気づかないうちに勇者としての力を使い、魔王を、世界を、変えていく。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる