ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-9

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 ラディッシュが大国の諸王を前に大見得を切った少し前――

 中世を幾度も救った勇者から全幅の信頼を表明されたパストリスは、

「…………」

 些か緊張した面持ちながらも毅然と正面を見据え、魔王城謁見の間の玉座に座していた。
 右には金狼グランを、左には中身が地世に堕とされたゴゼンである全身鎧とターナップを立たせ。

 そして玉座が置かれた壇上の数段下がった床には、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 整然と整列して跪く、武装した合成獣たちの姿が。

 玉座に近いほどヒト型に近く、それは知力、戦闘力の高さを示し、離れるほど野性味を帯びる合成獣たちの優劣により、謁見の間は埋め尽くされていた。

 だからと言って、それが全てではない。

 慣例として座る位置が序列を表してはいたが、一部に例から外れた「特例の並び」もチラホラと。
 その最たる者が言わずもがな、ターナップである。

 中世では人並外れた天法を有し、類い稀な治癒能力のみならず、身体強化により剛腕も振るった彼ではあったが、ここは地世である。
 天世の恩恵が届かぬこの世界で彼は戦士として「最弱」であった。

 その自覚は本人にもあった。
 しかしそれを認め、首を垂れてしまっては、

《お嬢の隣に立って支えられなくなる!》

 城の外にも、拝謁を許されない合成獣たちの姿が。
 知能が高く兵士である者は地世の各地に配され、そうでない者も各地でバラバラに生息していたのだが、新王の尊顔を拝するは叶わずとも、

《新時代の幕を開の舞台に少しでも近づいて居たい》

 本能的な欲求か、それとも見知らぬ強大なチカラに引き寄せられてか、埋め尽くされていた。
 やがて金狼グランが、同じ側近クラスの位置に立つゴゼンとターナップを差し置いて、

『皆の者、聴くがよい! 此方におわすパストリス様が、我らの「新たな王」であらせられる!』

 新王誕生を高らかに宣言。
 右側にキーマンを立たせるは、世の理(ことわり)なのか。
 それはさて置き「新たな王」の誕生に、

『『『『『『『『『『ギャァオオォォオォオーーーーーーッ!』』』』』』』』』』

 耳を劈く歓声を上げる合成獣たち。
 城の外でも、中から聴こえた歓声に呼応して咆哮する合成獣たち。
 堅牢な城が振動していると思わせるほどの大騒ぎに、思わず両手で両耳を塞ぎ、

『ったくゥウルせぇえぇなぁあぁ!』

 悪態を吐くターナップであったが、パストリスを新王として迎える合成獣たちの姿勢に、困惑笑いを浮かべながらも嬉しそうな彼女の堂々たる姿に、
(…………)
 思わず口元が緩むと、中身がゴゼンである全身鎧が彼の顔を覗き込み、

「こんなにウルサイのにキュミは何をニヤニヤしてるぅんだぁい~キュミってマゾ系だよねぇ~」
「にっ、ニヤケてぇねぇしマゾでもねぇ!」

 即で憤慨、

「ってぇかオメェの方こそ何で平然としてられるだよ!」
「俺くぁい? この鎧には色々な効果が付与されているからぁねぇ~♪」
「なっ?! 汚ぇえぇオメェだけぇ!」
「先輩特権だよねぇ~♪」
「何がぁ誰の先輩だぁ!」

 壇上でモメ始めると金狼グランが小さなため息を一つ吐き、

「仲良しは後にしてもらえるか?」
 呆れ顔に、

『誰が仲良しだぁ!』

 ターナップが即でツッコミ返すと、騒ぎに気付いた玉座のパストリスが小さくクスクス笑い、

「寂しくなさそうで良かったのでぇす♪」

 その笑顔に彼は苦笑を返し、

「お嬢までぇ勘弁してくれぇよ~」

 辟易した顔で嘆いた。
 すると金狼グランが「与太話(よたばなし)はこれまで」と言わんばかり、歓喜の渦にある合成獣たちに向かって毅然を以て、

『静まりなさァアァい!』

 一喝。
 促された静粛に、

「「「「「「「「「「ッ!」」」」」」」」」」

 合成獣たちは一斉に静まり、粛々と跪いた。
 より強い者の声に異を唱えず従う、純然たる縦社会。

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 水を打ったような静まりに、彼は響く凛とした口調で、

「パストリス陛下。皆の者に御言葉を」

 下げる頭に、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 張り詰める空気に、
(お、お嬢ぉ……)
 ターナップが思わず息を呑んだ。

 彼女の緊張が如何ほどであるか、その心中を慮り。

 しかし、地世の世界の玉座に座する覚悟を決めた彼女の心は、彼が想像していたような柔(やわ)な物ではなかった。

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