ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-11

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 何故、勇者討伐の師団の団長まで務めた強者(つわもの)が後列に甘んじて居るのか。

 理由は単純明快で「デカ過ぎる」から。

 まかり彼のような巨漢に最前中央に座られたら、後ろの者には不幸でしかない。

 謁見の間に入るのを許されたにも拘わらず、目の前に見えるのは彼の「巌(いわお)のような背」だけで「女王の尊顔を拝することが出来ない」と言う悲しい事態になるのである。

 立ち上がると更に大きく、目測で身長は二メートルを優に超え、筋骨隆々な体躯は受けた印象を倍化するのに一役買い、四メートルに迫ろうかと言う高さに思え、

(でぇ、デケェ)

 ターナップは内心で圧倒こそされたが、それで委縮するような彼ではない。
 むしろ立ち塞がる壁が高ければ高いほど気勢は昂まり、

『お嬢にキッチリカッチリ、ワビを入れさせてやるァア!』

 勝てるかどうかや皮算用など、もはや二の次

 しかし彼は気負うあまり、気付けていなかった。
 実力主義の地世において、序列上位の彼が「何故に後列に甘んじているのか」を。

 腕っ節が立つのは勿論のこと、仲間を気遣える懐の深さも兼ね備えた、言うなればカリスマ。
 多くの配下を従える師団長の肩書は、伊達ではないのである。

 ターナップはこの一件で知らず知らず、
((((((((…………))))))))
 彼の信者に等しい一部の熱狂的合成獣たちを、敵に回す結果を作ってしまった。

 強い反感を買ったとも気付かず、堪え切れぬ強い怒りを抱え、ひな壇から降りようとすると、

『待つのでぇす!』
「?!」

 毅然とした声で制したのは、玉座のパストリス。
 足を止め振り返るターナップに、

「それはボクの役目なのでぇす」
「えぇっ?! いやぁ、しかしお嬢ぉコイツぁ俺のぉ、」

 拳を振り上げた当人であるが故に申し出を断ろうとしたが彼女は続く言葉を手で制し、
「…………」
 悠然と立ち上がりながら眼前に跪く合成獣たちに向かい凛(りん)を以て、
 
 「皆さんの中には、ボクの「魔王としての資質」を疑っている人も居ると思うのでぇす」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 黙る合成獣たち。
 的を射られたか、それとも問う相手が魔王様だからか。
 そんな沈黙のただ中に威風堂々立つに師団長に、パストリスは毅然を崩さず、

『なのでぇボクと一騎打ちをしてくだ……いえ、しなさいなのでぇす!』
『願っだり叶っだりでブル♪』

 鼻息荒く快諾。

 自ら蒔いてしまった種に、
(お嬢……)
 ターナップは後悔と戸惑いにあったが、玉座の右に立つ金狼グランは何の躊躇いも無く、彼の感傷など意にも介する素振りもない物言いで、

「城に隣接する闘技場にて「雌雄を決する」のは如何でしょう?」

 女王と師団長に、戦いの場を提示した。
(!?)
 焦りを覚える、ターナップ。

(闘技場での一騎打ちともなれぁ簡単に助けにも飛び込めねぇ!)

 パストリスの身に何か起きた時のことを考えると矢も楯もたまらず「ちょっと待てぇ」と話に割り込もうとしたが声を上げるより先、
「!」
 何者かに無言で肩を掴まれ割り込みを制され、

(このぉ大事な時宜にチャチャ入れやがるのぁ誰だ!)

 苛立ち振り向くと、そこに居たのはいつもと変わらぬ軽薄な笑みをフルフェイスの兜から覗かせるゴゼンであった。

「止めちゃダメなんだよねぇ~タープきゅん♪」
「んなぁ?!」
「それとも何かなぁ~? キュミはパストちゃんが、あのブタくん如きに負けるとでも?」

『思ってねぇえ!』

「ならぁ構わないよねぇ~♪」

 同意を強制させる薄ら笑いに、
「クッ……」
 彼は異を唱えることが出来なかった。

(お嬢の勝利は信じちゃぁいるし、負けるなんてぁ微塵も思っちゃいねぇ。思っちゃいねぇが……ただ……)

 怪我をして欲しくなかった。
 傷付いて欲しくなかった。
 それが「一方的な願いから」で、あったとしても。

(…………)

 黙ってしまったターナップを置き去りに、パストリスと師団長の試合の話はトントン拍子で進んでいく。
 するとそんな彼を見かねてか、ゴゼンが呆れた様子で小さく笑い、

「タープぅきゅん♪ パストちゃんの試合の前に、ちょ~っと話があるから良いかなぁ♪」
「あぁ……分かった……」

 暗い口調で承諾。

 試合に向けた準備の為に離席するパストリスの小さな背を見送ってから、
「…………」
 彼の後に続いた。

 助言の一つさえも出来ずに。
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