ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-12

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 ひと気の無い通路まで導かれるターナップ。
 流石に痺れを切らし、

「どこまで行く気だゴゼン! お嬢の試合が始まっちまうだろぅが!」

 前を行く背に不満をぶつけると、
「だよねぇ♪」
 ゴゼンはやっと足を止めて振り返り、ターナップも足を止め、パストリスの一世一代に同席していない現状に苛立ちを覚え、

『こんなトコまでぇ何の話だ!』

 不機嫌な問い掛けに彼は呆れ笑い、

「短気は損気ぃ♪ それにパストちゃんの晴れ舞台を早く見に行きたいのぁ一緒なんだよねぇ~何が悲しくてこんな大事に男と二人きりでぇ、」
『オメェが連れて来たんだろぅが!』

 ターナップは憤慨。

「いつもの悪フザケならぁ俺ぁ行くぞ!」

 背を向けると、その背に、

「ねぇタープきゅん、キュミさぁ♪」
「んぁ?」
「今のままだとぉ近いうちぃ、「確実に死ぬ」よぉん♪」
「んなぁっ?! それぁどう言う、」

 唐突な死亡宣告の真意を問おうとしたその瞬間、
『『ッ!』』
 通路の奥から響いて来たのは大歓声。

 それは応援と言うより罵声にも聴こえる無数の雄叫びであり、話は大事なところであったが、

(お嬢!)

 言い知れぬ不安が胸をよぎったターナップは反射的に、歓声の聴こえた方へ全力疾走、走り出した。
 薄暗い通路の奥、小さく見えている、声が聴こえた出口の光に向かって。

 その後ろから、
「たぁっ、タ~プゥきゅん~待ってぇ~話はまだぁ~それにぃ鎧が重くてぇ、早くぅ、走れないんだよねぇ~」
 ゴゼンが息も切れ切れ鎧をガシャガシャ言わせながら叫んだが、彼は走りを止めず苦笑で振り返り、

『知るかぁボケェ! そんなん着てる自業自得だろぅがよ! オメェなんぞぉ待ってられるかぁ話もアトだぁあ!』

 悪態を吐いて抜け出た光の先は、闘技場の客席のど真ん中。
 周りは熱狂して雄叫びを上げる合成獣たちで埋め尽くされ、

(お嬢は?! 試合はどうなってる!)

 焦り、会場を急いて見たターナップは、

『!』

 驚愕した。
 師団長の大きさに比べ、豆粒ほどに見えるパストリスは、

(防戦一方だとぉ?!)

 壁際に追い込まれないよう円形闘技場の形を利用して円を描くように後退しながら、回避と受け流しの繰り返し。
 そんな一方的な試合展開に合成獣たちが、批判の雄叫びを上げていたのであった。

《弱き王など不要》

 完全アウェイで精彩を欠くパストリスの動き。

 かつて見たことのない鈍い戦いを見せる彼女に、彼はワナワナと打ち震え、
(どうしちまったんだぁお嬢は!)
 自身の不調のように苛立ちを覚えていると、やっと来たゴゼンが試合を見るなり冷やかに、そして軽薄に、

「おやぁおやぁ早くも世代交代の予感♪」
「!」

 苛立つ神経を、更に逆なでする一言を。

『お嬢の実力はこんなモンじゃねぇえ!』

 ターナップは激昂すると、沸き立つ合成獣たちを強引に搔き分け客席を突き進み、会場と隔てる壁まで進んで周囲の騒ぎに負けぬ怒声で、

『お嬢ォオ! その程度を相手にいつまでも遊んでんじゃねぇえ!!!』

 地世の魔王様となったパストリスに公然と罵声を浴びせた。
 周囲の歓声を、一人で打ち消そうかとの気概と気勢で以て。
 すると彼の叫びが耳に届いてか、

(お嬢が笑った?!)

 彼女は防戦一方ながらも口元に笑みを浮かべたが、その笑みは、

「ぐぅぎぃ!?」

 師団長の怒りを買ってしまった。
 一方的に攻撃を繰り出す師団長ではあったが、致命傷を与えられそうで与えられないことにフラストレーションを溜めていて、そこに「不敵と見える笑み」を見せられたから、

『オデェをぉバカにするなブルゥ!!!』

 怒り爆発。
 凄まじき地世の黒きチカラが、大樹の如き棍棒を振るう右腕に収束。

「ふぅんぬぅ!」

 黒き稲光を発しながら、彼女の頭上を目掛けて振り下ろされた。
 強烈な一撃が、ロリな容姿の少女の下に、

 ドォゴガァアァァァァアァ!

 直撃。
 頑強に造られた筈の闘技場の地は割れ、裂け、轟音と衝撃はクレーターを造り、舞い上がった激しい砂塵は客席にまでおよび、視界が奪われる中、

『お嬢ォオォオーーーーーーッ!』

 悲痛な声を上げるターナップ。
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