ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-13

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 パストリスに落とされた強烈な一撃にターナップが悲痛な叫びを上げ、会場の誰もが師団長の勝利を確信した。
 強烈な一撃を見舞った当人でさえ、

『かぁっ、勝ったでブル♪』

 勝利を確信したが、

 ビキキィイッ!

 闘技場に響く、何かが割れる音が。

「うごぉ?!」
「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」

 それと同時、押し潰されたパストリスの亡骸が横たわるであろう筈の場所から、
「!」
 黒き稲妻を伴った烈風が吹き荒れ視界を覆う砂塵を消し飛ばすと、嵐の目の中央には、

『うのぉ!?』

 巨大な棍棒を右の細腕一本で受け止めるロリな容姿の少女、地世の黒きオーラを纏ったパストリスのケモ耳姿が。

 しかも、無傷。

 いつもの温和な笑みは消え、彼女は獲物を前にした鋭き眼光で以て、

「これは邪魔なのでぇす!」

 自身の姿がすっぽり隠れる巨大な棍棒を受け止める右手にチカラを込め、

 バァキャァアァアァン!

 独特な破裂音を上げさせ、粉々に粉砕。

『『『『『『『『『『!!!!!!!!!!!!』』』』』』』』』』

 一気に上がる会場のボルテージ。
 それと相反し、砕け散った相棒の唯一残った柄を握り、

『おっ、オデェのぉサイキョウがぁあぁあ!』

 打ち震える師団長。
 戦友の喪失に、今にも泣き出しそうな、戦意消失寸前。
 
 そんな状態の彼を前にパストリスは平静なれど、強い威圧を伴った口調で、

『貴方の闘い方、戦闘力は、十分に見させてもらいましたのでぇす』
「うごぉ!?」

 一方的に攻めることが出来ていたのは、

《圧倒していたからではない》

 手玉に取られていたと知る。
 完敗であった。

 そして地世の世界で「上位の存在に盾を突いて負ける」とは、殺されても文句が言えない状況であり、尋常ならざる覇気を全身から放ちながら、

「失うには、あまりに惜しい人材なのでぇす」

 一歩、また一歩と徐々に近付くロリな容姿の少女に、

「あば…あばばば……」

 さしも一騎当千師団長も畏れを抱き、

「あぁ……あぁあぁ……」

 足がすくみ、逃げる事さえままならない。
 目に映っていたのは、悪魔か、死神か。

 足元に立つパストリス。

 立ち尽くす彼を悠然と見上げ、

「どうするのでぇす? 服従するか、それとも、」

 敗者の戦士としての「潔い死」を望むか、問うより先、

 ドォウドザザァアァ!

 失意の師団長は両膝を、地鳴りを伴い地に付け、
「おでぇの……オデェの負げぇブル……マオウ様ぁぁ……」
 敗北を認め、

『『『『『『『『『『!!!!!!!!!!!!』』』』』』』』』』

 闘技場は大歓声に包まれた。

(お嬢ぉ……)

 安堵を覚えるターナップ。
 すると彼の視線に気付いたパストリスが、いつもに戻った愛らしい笑顔でVサイン。
 釣られて彼も満面の笑顔でVサインを返し、地世の世界のこれからを占う一戦は、新王パストリスの圧勝で幕を下ろした。

《どちらの勝利が地世にとっては良かったか》

 それは、後の世になってみないと不明であるが。
 難しい話は一先ず脇に、パストリスの圧勝を今は単純に喜ぶターナップ。
 闘技場から上機嫌の帰りしな、

「それでぇゴゼン♪ 俺が何だってぇ♪」

 死ぬと言われたことさえ忘れたような笑顔を見せると、ゴゼンはいつも通りの軽薄な笑いを見せながら、

「良かったよねぇ~タープきゅん♪」
「んぁ? お嬢が勝ったことか?」

「違うよぉん♪ キュミの命が「首の皮一枚」で繋がったことだよぉん♪」
「はぁ?! そりゃどう言う、」

「試合を見た全員がぁ「勘違い」してくれたみたいでねぇ~♪」
「勘違い? 何だそりゃ?!」

「キュミが居ないと、キュミの言葉が無いと、魔王様は「真のチカラを発揮できない」ってねぇ~♪」
「んなっ?!」

 信じ難いと言った顔に、ゴゼンは過剰に近づき耳元に、周囲に聴かれない小声で、

「はっきり言ってあげようか、最弱きゅん♪」
「!?」
「今のキュミのチカラじゃ、謁見の間に居た誰にも勝てやしないよぉん♪」
「ッ!」

 ゴゼンはギョッとする顔から離れ、

「ここは天世の恩恵が届かない地世の世界♪ 隔離された世界♪ 恩恵を代用させてくれるラディも居ない♪ 天世のチカラを使って戦うキュミには、相性最悪の世界だよぉん♪」
「…………」

 分かっていた事であった。
 しかし、

「…………」

 考えないようにしていた。
 気付いていないフリをしていた。
 何故なら、

(ソイツを認めちまったら俺ぁ、誰にも、何も言えなくなっちまいそうで……そしたらぁお嬢の隣に立つ資格も……)

 チカラが全てを決定する地世なればこその悩みであり、目を逸らしていた現実を改めて突きつけられ、
「…………」
 黙ってしまった。

 それでも、
《非力を嘆くことはしなかった》
《俯くことはしなかった》
 何故なら、
 
(周囲のどこに眼があるか分かんねぇ中、コイツの前で下を向いちまったらぁそれこそ何もかもが終わりだ!)

 耐え難い現実を前にしてなお正面を見据え、

(お嬢の隣に真に立てるチカラを、俺ぁ必ず見付けてみせる!)

 目の奥に宿るは、消えぬ意志。
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