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第十一章
11-22
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勇者組が四大国三王の指針の決定を待つひと時の休息を得た頃――
地世の新王パストリスは公務に追われる毎日を送っていた。
《チカラこそが全てであった地世の世界の大改革》
それは悠久に渡る意識の改革を伴うものであり、悪しき慣習ではあるが、地世にとっては文化と言える物。
改革は、生易しいものではなかった。
強き者たちは弱き者たちを蹂躙するのが当たり前と思い、弱き者たちも蹂躙されて当然と思っている。
悪し様に言えば、
《負け犬根性》
一先ず彼女は「不当な私闘」を魔王権限で強引にしばり、違反者に重罰を科し、地世の世界各地に学校の創設を目指した。
学校を作る目的は、理知的な思考を身に付けさせる為であると同時、眠れる才(さい)ある人材の掘り起こし。
公務が終わると、私室で残務にあたる。
執務室で仕事を続けないのは家臣の為。
王が目の前で膨大な量の仕事を処理し続けていては、例え「帰って良い」と言われても気が引け、帰るに帰れないから。
彼女なりの気遣いである。
公務には国の政(まつりごと)に精通している元百人の天世人ゴゼンと、地世を知り尽くしている元人間、元七草の記憶を持つ金狼グランが同席し、中世の僧侶であり、有能な治癒士であったターナップはと言うと、
「…………」
魔王城内に私室として用意された部屋のベッドの上に一人、
「…………」
天井を見上げ、
「…………暇だ……」
彼のチカラを要する案件は、
「…………」
皆無であった。
それでも公務での同席を度々許されていたのは、
《彼の存在無くして魔王パストリスが真なるチカラを発揮するのは不可能》
誤解から。
魔王軍の中で「誤解である」と知っているのは側近の一人であるゴゼンだけ。
今や敵とも味方とも分からぬ彼が黙っていたのは、彼なりの損得勘定からであった。
ターナップが魔王パストリスの「真なるチカラの解放者である」との話とは別に、地世の世界において孤立無援、孤軍奮闘に等しい彼女における彼は、唯一気の休まる存在であり、精神的支えであるのは事実。
ターナップを失うと言うことは彼女の心が乱れるのを意味し、絶対君主制の世界において王の揺らぎは不穏を招き、やがて不穏は乱世へと繋がりかねず、百人の天世人として有していた絶大なチカラの全てを失った今のゴゼンが最も避けたい事態であった。
今のゴゼンがどれ程のチカラを有しているかは明かしておらず、金狼グランが誤認に気付いているかも現時点で不明ではあるが。
パストリスの公務が終わるとターナップは一人私室に戻り、食事や寝るまでの隙間時間に、
「フン! フン! フン!」
筋トレに励むか、
「…………」
惚けた時間を過ごす。
時間があるからと言って、魔王城の外へ出掛けることはしない。
城の外は魔王パストリスの目が届かず、迂闊に出ようものならオオカミの群れの中に落とされた羊のような状態になるのは火を見るよりも明らかで、
《俺ぁヤツ等のエサにぁなりたくねぇ》
懸命な判断からであった。
しかし、その様な日々を過ごしてばかりも居られない。
今のままでは、単なる置物、単なるマスコット。
未知の危機から彼女を守り、共に国政を担う、真なる意味の「隣に立つ」から著しくかけ離れていたから。
とは言えチカラが無ければ誰かを従わせる事も、脅威を払う事も出来ないのが今の地世の世界。
ベッドで横になり、ぼんやりと天井を見つめ、
「新たなチカラを手に入れねぇと……」
そして、
《メッキが剥がれる前にねぇん♪》
ゴゼンの皮肉な笑顔を思い返す。
苛立ち、眉間に深いシワを寄せ、
(ウルセェ分かってらぁんな事ぁよ! 今のオレぁお嬢の足枷……穀潰(ごくつぶ)しだ……)
自身を卑下し、怪訝な顔して起き上がってはみたものの、
(ならぁどうすりゃイイ?! 手掛かりもねぇ、相談できる相手も居ねぇ。ましてや中世人の坊主だった俺が「戦えるチカラを地世で身に付ける」なんてぁ前代未聞でぇ、分かるヤツが居るとも思えねぇ……ならぁどうする?!)
思考は堂々を巡るばかり。
行き詰まりに、
『カァー! 足り無ぇ俺の頭で考えてもぉ答えなんぞ出る訳がねぇ!』
両手で頭を激しく搔きむしり、自分を悪罵すると、抱えたモヤモヤを払うようにザッと勢いよく立ち上がり、
「散歩だ散歩ぉ、城内散歩だ! ジッとしてっと尻にカビでも生えそうだぜぇ! 城内散歩ならぁ問題無ぇだろ!」
誰に言うでもなく言い聞かせ、目当ての何かがある訳でもなく部屋を出た。
案内役が居なくとも、主だったフロアマップは頭に入っている。
皮肉にも、幾度とない魔王討伐で訪れていた城であるから。
それでも改めてゆっくり歩いてみると、
(こんなに広かったんだな……)
知らない部屋、知らなかった通路が幾つもあり、今更のように「地世の王の居城」であるのを実感した。
訪れた時は、ただひたすらに謁見の間を目指し駆け抜けていて。
それでも迷いはせず、記憶にある城内マップに「新たに知った部屋」や通路を書き足しながら歩いた。
以前と変わらぬ仄暗い城内には、例の如く兵士である合成獣たちの姿は無く、平時は廃城のような佇まい。
しかし今のターナップには有り難い。
下っ端の合成獣たちとの小競り合いを御するチカラさえ、今の彼は持ち合わせておらず。
生き物の気配を感じない城内を当てど無く歩き、
(ちょうどイイ気分転換にはなったなぁ)
誰に気兼ねすることなく散策を続け、
(そろそろ戻るか……)
やがて一人歩きにも飽き始めた頃、
(!)
通路の奥に何かを見て足を止めた。
それは、
(お嬢?!)
パストリスであり、何かの部屋に入って行く横顔。
家臣を連れ歩いていないところからプライベートであるのが推測でき、入って行ったのが知らない部屋でもあったが、偶然に出会えた嬉しさと相まって、
(何があるんだ?)
足は自然と、彼女が姿を消した部屋の方に。
地世の新王パストリスは公務に追われる毎日を送っていた。
《チカラこそが全てであった地世の世界の大改革》
それは悠久に渡る意識の改革を伴うものであり、悪しき慣習ではあるが、地世にとっては文化と言える物。
改革は、生易しいものではなかった。
強き者たちは弱き者たちを蹂躙するのが当たり前と思い、弱き者たちも蹂躙されて当然と思っている。
悪し様に言えば、
《負け犬根性》
一先ず彼女は「不当な私闘」を魔王権限で強引にしばり、違反者に重罰を科し、地世の世界各地に学校の創設を目指した。
学校を作る目的は、理知的な思考を身に付けさせる為であると同時、眠れる才(さい)ある人材の掘り起こし。
公務が終わると、私室で残務にあたる。
執務室で仕事を続けないのは家臣の為。
王が目の前で膨大な量の仕事を処理し続けていては、例え「帰って良い」と言われても気が引け、帰るに帰れないから。
彼女なりの気遣いである。
公務には国の政(まつりごと)に精通している元百人の天世人ゴゼンと、地世を知り尽くしている元人間、元七草の記憶を持つ金狼グランが同席し、中世の僧侶であり、有能な治癒士であったターナップはと言うと、
「…………」
魔王城内に私室として用意された部屋のベッドの上に一人、
「…………」
天井を見上げ、
「…………暇だ……」
彼のチカラを要する案件は、
「…………」
皆無であった。
それでも公務での同席を度々許されていたのは、
《彼の存在無くして魔王パストリスが真なるチカラを発揮するのは不可能》
誤解から。
魔王軍の中で「誤解である」と知っているのは側近の一人であるゴゼンだけ。
今や敵とも味方とも分からぬ彼が黙っていたのは、彼なりの損得勘定からであった。
ターナップが魔王パストリスの「真なるチカラの解放者である」との話とは別に、地世の世界において孤立無援、孤軍奮闘に等しい彼女における彼は、唯一気の休まる存在であり、精神的支えであるのは事実。
ターナップを失うと言うことは彼女の心が乱れるのを意味し、絶対君主制の世界において王の揺らぎは不穏を招き、やがて不穏は乱世へと繋がりかねず、百人の天世人として有していた絶大なチカラの全てを失った今のゴゼンが最も避けたい事態であった。
今のゴゼンがどれ程のチカラを有しているかは明かしておらず、金狼グランが誤認に気付いているかも現時点で不明ではあるが。
パストリスの公務が終わるとターナップは一人私室に戻り、食事や寝るまでの隙間時間に、
「フン! フン! フン!」
筋トレに励むか、
「…………」
惚けた時間を過ごす。
時間があるからと言って、魔王城の外へ出掛けることはしない。
城の外は魔王パストリスの目が届かず、迂闊に出ようものならオオカミの群れの中に落とされた羊のような状態になるのは火を見るよりも明らかで、
《俺ぁヤツ等のエサにぁなりたくねぇ》
懸命な判断からであった。
しかし、その様な日々を過ごしてばかりも居られない。
今のままでは、単なる置物、単なるマスコット。
未知の危機から彼女を守り、共に国政を担う、真なる意味の「隣に立つ」から著しくかけ離れていたから。
とは言えチカラが無ければ誰かを従わせる事も、脅威を払う事も出来ないのが今の地世の世界。
ベッドで横になり、ぼんやりと天井を見つめ、
「新たなチカラを手に入れねぇと……」
そして、
《メッキが剥がれる前にねぇん♪》
ゴゼンの皮肉な笑顔を思い返す。
苛立ち、眉間に深いシワを寄せ、
(ウルセェ分かってらぁんな事ぁよ! 今のオレぁお嬢の足枷……穀潰(ごくつぶ)しだ……)
自身を卑下し、怪訝な顔して起き上がってはみたものの、
(ならぁどうすりゃイイ?! 手掛かりもねぇ、相談できる相手も居ねぇ。ましてや中世人の坊主だった俺が「戦えるチカラを地世で身に付ける」なんてぁ前代未聞でぇ、分かるヤツが居るとも思えねぇ……ならぁどうする?!)
思考は堂々を巡るばかり。
行き詰まりに、
『カァー! 足り無ぇ俺の頭で考えてもぉ答えなんぞ出る訳がねぇ!』
両手で頭を激しく搔きむしり、自分を悪罵すると、抱えたモヤモヤを払うようにザッと勢いよく立ち上がり、
「散歩だ散歩ぉ、城内散歩だ! ジッとしてっと尻にカビでも生えそうだぜぇ! 城内散歩ならぁ問題無ぇだろ!」
誰に言うでもなく言い聞かせ、目当ての何かがある訳でもなく部屋を出た。
案内役が居なくとも、主だったフロアマップは頭に入っている。
皮肉にも、幾度とない魔王討伐で訪れていた城であるから。
それでも改めてゆっくり歩いてみると、
(こんなに広かったんだな……)
知らない部屋、知らなかった通路が幾つもあり、今更のように「地世の王の居城」であるのを実感した。
訪れた時は、ただひたすらに謁見の間を目指し駆け抜けていて。
それでも迷いはせず、記憶にある城内マップに「新たに知った部屋」や通路を書き足しながら歩いた。
以前と変わらぬ仄暗い城内には、例の如く兵士である合成獣たちの姿は無く、平時は廃城のような佇まい。
しかし今のターナップには有り難い。
下っ端の合成獣たちとの小競り合いを御するチカラさえ、今の彼は持ち合わせておらず。
生き物の気配を感じない城内を当てど無く歩き、
(ちょうどイイ気分転換にはなったなぁ)
誰に気兼ねすることなく散策を続け、
(そろそろ戻るか……)
やがて一人歩きにも飽き始めた頃、
(!)
通路の奥に何かを見て足を止めた。
それは、
(お嬢?!)
パストリスであり、何かの部屋に入って行く横顔。
家臣を連れ歩いていないところからプライベートであるのが推測でき、入って行ったのが知らない部屋でもあったが、偶然に出会えた嬉しさと相まって、
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