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第十一章
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ヒレンの逃亡からほどなく――
エルブ城の謁見の間にて国王の立会いの下、
「「「「「…………」」」」」
警備兵隊長の口から委細を聴かされるラディッシュたち勇者組。
そこには逃亡したヒレンに代わり、ドロプウォートが座った椅子車を押す幼きチィックウィードの姿も。
天世から、いつ、どのような罰が下されるか知れない、何が起きてもおかしくない警戒の日々の中、ヒレンが抜けた穴は大きく、それを埋めるべく、有する実力に遜色の無い人材として白羽の矢が立ったのが、元七草の彼女であった。
しかしそれは「ラディッシュの意」から外れた物。
父親(仮)である彼の本音を言えば、ドロプウォートの介護もさることながら、幼き愛娘(仮)である彼女に危険が伴う最前線から身を引いて居てもらいたかった。
可愛い我が子を嬉々として「危地に迎え入れる親」など、どこの世界に居ようか。
とは言え中世が置かれた現状は、親心を許容しない。
万全を期する為、悪く言えば「猫の手も借りたい」のが王の本音であり、しかも襲撃を行った者が「七草の一人」ともなれば、責任の所在からも勇者組に拒否する権利は無かったのである。
幸いであったのは急襲を受けた警備兵たちに重傷者こそ多数出たものの、死者が出なかったこと。
その「生き証人」たちの話を繋ぎ合わせると、本来は天法の術士数名が何日もかけて発動させる鏡のゲートを、ヒレンは「地世への遠征」に着用していた「先人の英知の首飾り」のチカラを使って易々と稼働させ、天世に向かったとの事であった。
それはゲートに残された履歴を読み取った技術者たちの証言とも一致した話で、どの様なリスクが伴うか知れないと警告したばかりの行為を実行に移した彼女に、
『何をしてるのしぃ!』
苛立ちを隠せない、同胞のリンドウ。
中世の諸王の指針も待たず、中世の人々に危害を加え、自らの命を賭してまでの強行に、彼女の真意は見えて来なかった。
苦悩のリンドウを玉座のエルブは静かに見つめ、彼女の心労を気遣いながらも王としての務めとして、
「リンドウ様、此度のヒレン様の行いについて、何か思い当たる節はありませぬか?」
言葉を一つ一つ選びながら問うた。
すると問われた彼女は、苦悶の表情でポツリ、ポツリと、
「天世が……共に蜂起した仲間たちが「心配じゃないのか」とは……言ってたしぃ……」
「…………」
「でも……」
「?」
「だからってぇ「こんな浅はか」するオンナじゃないのしぃ! ヒレンはアーシと違って頭が良くてぇ賢くてぇ! 賢くて……」
明るさが信条のリンドウが、悲しげに声を詰まらせた。
「「「「…………」」」」
ヒレンが行った愚行。
それは彼女を七草として迎え入れたラディッシュ、ニプルウォート、カドウィード、チィックウィードも抱いた違和感であった。
「何か……何か、きっと理由があったの、しぃ……」
俯くリンドウは擁護を口にしたが、彼女が戦うチカラを持たない中世の一般人に危害を加えようとしたのは周知の事実であり、それは許されざる行いであり、中世の民を守る立場にある七草のラディッシュ達は心情とは別に、
「「「「…………」」」」
公(おおやけ)の場で「リンドウが口にした擁護」に、同意する事は出来なかった。
それはエルブ王とて同じ。
中世におけるヒレンの今日(こんにち)までの足跡(そくせき)を、人となりを、実績を顧みれば「隠された本意」を疑うのは当然であったが、民を襲われた一国の王として、中世の標たる四大大国が一つの王のケジメとして、
(ヒレン様に対する「捕縛の命」は避けられぬ……)
しかし彼女は既に天世へ逃亡した後である。
捕縛の命を下したとて「絵に描いた餅」でしかなかったが、そこにはエルブ王の別の思惑も。
《天世様が置かれた今の情報が欲しい》
しかもリンドウの首飾りが持つチカラで勇者組に天世へ向かってもらえるのは、皮肉にもヒレンの犯行で立証済み。
とは言え、
(…………)
リスクは拭えなかった。
まかり待ち伏せに遭い、ラディッシュ達が討ち取られる事態にでもなれば、天法切れによる「天技の盾の消失」の時点で詰み、チェックメイトが目に見えていたから。
地世信奉者たちの活動が鎮静化した訳でもなく、天世からの備えもあって人手は足りず、自国の兵を同行させる訳にもいかず、
(どうすれば……)
悩むエルブ王。
思わず小声で、
(せめて到着場所を変える事が出来れば良いのじゃが……)
リスクを減らせる可能性を口にすると、呟きを耳にしたリンドウがあっけらかんと、
「場所? 待ち伏せの心配をしてるのし? そんなの変えられるしぃ♪」
「なぁんと! それは真(まこと)であるか?!」
前屈みに対し、
「ただぁしぃしぃ」
「?」
リンドウは苦笑い。
困った様子で笑いながら、
「場所を変えると、どれくらい天法を食うか分からないからぁ首飾りが耐えられるか分からないのしぃ~♪ ヒレンも片道切符だった可能性はあるのしぃ♪」
「なんと……」
危険性にエルブ王は揺らいだ。
彼女の言葉は、正論であったから。
ヒレンと違った事をすれば、その分だけ未知のリスクも高まると。
しかし、
『陛下!』
「!?」
勇者ラディッシュの意志の声に、彼の仲間たちが向けていた決意の眼差しに、背中を押された王は、
「あい分かった」
静かに小さく頷き、
「リンドウ様」
「しぃ?」
「中世の民たちに成り代わり、よろしく御頼み申します」
誠(まこと)を以て、深々と頭を下げた。
神に等しき存在の天世人に犯してもらう、危険に対し。
するとリンドウは悪戯っぽく「ニヒッ」と軽々笑い、
「任せておくのしぃ♪ お馬鹿なことしたヒレンに出来てぇアーシに出来ないハズは無いのしぃ♪」
天技の盾の消失期限が迫る中、ラディッシュ達は天世に繋がるゲートである鏡が置かれた部屋に一先ず向かった。
エルブ城の謁見の間にて国王の立会いの下、
「「「「「…………」」」」」
警備兵隊長の口から委細を聴かされるラディッシュたち勇者組。
そこには逃亡したヒレンに代わり、ドロプウォートが座った椅子車を押す幼きチィックウィードの姿も。
天世から、いつ、どのような罰が下されるか知れない、何が起きてもおかしくない警戒の日々の中、ヒレンが抜けた穴は大きく、それを埋めるべく、有する実力に遜色の無い人材として白羽の矢が立ったのが、元七草の彼女であった。
しかしそれは「ラディッシュの意」から外れた物。
父親(仮)である彼の本音を言えば、ドロプウォートの介護もさることながら、幼き愛娘(仮)である彼女に危険が伴う最前線から身を引いて居てもらいたかった。
可愛い我が子を嬉々として「危地に迎え入れる親」など、どこの世界に居ようか。
とは言え中世が置かれた現状は、親心を許容しない。
万全を期する為、悪く言えば「猫の手も借りたい」のが王の本音であり、しかも襲撃を行った者が「七草の一人」ともなれば、責任の所在からも勇者組に拒否する権利は無かったのである。
幸いであったのは急襲を受けた警備兵たちに重傷者こそ多数出たものの、死者が出なかったこと。
その「生き証人」たちの話を繋ぎ合わせると、本来は天法の術士数名が何日もかけて発動させる鏡のゲートを、ヒレンは「地世への遠征」に着用していた「先人の英知の首飾り」のチカラを使って易々と稼働させ、天世に向かったとの事であった。
それはゲートに残された履歴を読み取った技術者たちの証言とも一致した話で、どの様なリスクが伴うか知れないと警告したばかりの行為を実行に移した彼女に、
『何をしてるのしぃ!』
苛立ちを隠せない、同胞のリンドウ。
中世の諸王の指針も待たず、中世の人々に危害を加え、自らの命を賭してまでの強行に、彼女の真意は見えて来なかった。
苦悩のリンドウを玉座のエルブは静かに見つめ、彼女の心労を気遣いながらも王としての務めとして、
「リンドウ様、此度のヒレン様の行いについて、何か思い当たる節はありませぬか?」
言葉を一つ一つ選びながら問うた。
すると問われた彼女は、苦悶の表情でポツリ、ポツリと、
「天世が……共に蜂起した仲間たちが「心配じゃないのか」とは……言ってたしぃ……」
「…………」
「でも……」
「?」
「だからってぇ「こんな浅はか」するオンナじゃないのしぃ! ヒレンはアーシと違って頭が良くてぇ賢くてぇ! 賢くて……」
明るさが信条のリンドウが、悲しげに声を詰まらせた。
「「「「…………」」」」
ヒレンが行った愚行。
それは彼女を七草として迎え入れたラディッシュ、ニプルウォート、カドウィード、チィックウィードも抱いた違和感であった。
「何か……何か、きっと理由があったの、しぃ……」
俯くリンドウは擁護を口にしたが、彼女が戦うチカラを持たない中世の一般人に危害を加えようとしたのは周知の事実であり、それは許されざる行いであり、中世の民を守る立場にある七草のラディッシュ達は心情とは別に、
「「「「…………」」」」
公(おおやけ)の場で「リンドウが口にした擁護」に、同意する事は出来なかった。
それはエルブ王とて同じ。
中世におけるヒレンの今日(こんにち)までの足跡(そくせき)を、人となりを、実績を顧みれば「隠された本意」を疑うのは当然であったが、民を襲われた一国の王として、中世の標たる四大大国が一つの王のケジメとして、
(ヒレン様に対する「捕縛の命」は避けられぬ……)
しかし彼女は既に天世へ逃亡した後である。
捕縛の命を下したとて「絵に描いた餅」でしかなかったが、そこにはエルブ王の別の思惑も。
《天世様が置かれた今の情報が欲しい》
しかもリンドウの首飾りが持つチカラで勇者組に天世へ向かってもらえるのは、皮肉にもヒレンの犯行で立証済み。
とは言え、
(…………)
リスクは拭えなかった。
まかり待ち伏せに遭い、ラディッシュ達が討ち取られる事態にでもなれば、天法切れによる「天技の盾の消失」の時点で詰み、チェックメイトが目に見えていたから。
地世信奉者たちの活動が鎮静化した訳でもなく、天世からの備えもあって人手は足りず、自国の兵を同行させる訳にもいかず、
(どうすれば……)
悩むエルブ王。
思わず小声で、
(せめて到着場所を変える事が出来れば良いのじゃが……)
リスクを減らせる可能性を口にすると、呟きを耳にしたリンドウがあっけらかんと、
「場所? 待ち伏せの心配をしてるのし? そんなの変えられるしぃ♪」
「なぁんと! それは真(まこと)であるか?!」
前屈みに対し、
「ただぁしぃしぃ」
「?」
リンドウは苦笑い。
困った様子で笑いながら、
「場所を変えると、どれくらい天法を食うか分からないからぁ首飾りが耐えられるか分からないのしぃ~♪ ヒレンも片道切符だった可能性はあるのしぃ♪」
「なんと……」
危険性にエルブ王は揺らいだ。
彼女の言葉は、正論であったから。
ヒレンと違った事をすれば、その分だけ未知のリスクも高まると。
しかし、
『陛下!』
「!?」
勇者ラディッシュの意志の声に、彼の仲間たちが向けていた決意の眼差しに、背中を押された王は、
「あい分かった」
静かに小さく頷き、
「リンドウ様」
「しぃ?」
「中世の民たちに成り代わり、よろしく御頼み申します」
誠(まこと)を以て、深々と頭を下げた。
神に等しき存在の天世人に犯してもらう、危険に対し。
するとリンドウは悪戯っぽく「ニヒッ」と軽々笑い、
「任せておくのしぃ♪ お馬鹿なことしたヒレンに出来てぇアーシに出来ないハズは無いのしぃ♪」
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