13 / 88
続章_11
しおりを挟む
しばし後―――
西日で赤く照らされた、築年数を感じさせる昭和風、木造二階建アパート。
二階の玄関扉の前にせり出した、渡り廊下の様な通路の端がサクラの部屋である。
しかし外階段は片側にしか無く、サクラは階段を上がって、通路の突き当りまで行かねばならず、不便さを感じる位置にある部屋ではあったが、年季が入り、元々安い家賃のこのアパートの中において場所の悪さから一際安く、一人で生計を立てなければならないサクラにとっては、不便さと差し引いても有難い物件であった。
元は鮮やかな青い色であったろう錆だらけの外階段を、サクラは軽やかな足取りで上がり、自室の扉を開け、
「ただいまぁ~」
西日の差し込む薄暗い室内へ、返事が返えらぬと知りながら挨拶をすると、扉を閉めた。
一人暮らしであるにもかかわらず、靴を脱ぎ揃え置くサクラ。
軟禁生活を送っていたとは言え、育ちの良さが窺える。
物悲しい空気を醸し出す、西日に照らされた六畳一間に入るサクラであったが、その表情には一人暮らしの孤独から来る悲壮感は見受けられず、むしろ心なし以前より穏やかに思える表情で、サクラはおもむろに、机の横のゴミ箱の中から昨日破り捨てた日記の一ページを拾い上げ、丁寧に広げてシワを伸ばすと、
「ごめんね」
小さく笑って、元のページに透明テープで貼り戻した。
貼り戻したヨレたページを見つめ、ヒカリとの会話を思い出すサクラ。
※ ※ ※
「ハーくんはね、物と話せる能力を持ってるんだ。仕組みは分からないけど」
「どんな物でも!?」
「物質はダメだって言ってた。えぇ~と、粉々になったコップとか、人で言う「大ケガして死んじゃった」みたいな物とは話せないんだって。で、そのハーくんが言うには、サクラちゃんの持ち物達がみんな怒ってたから手助けしたんだって。それだけじゃないクセに、ホント照れ屋で、素直じゃないんだぁ」
「じゃあ、私のチカラの事も?」
「うん。でもどんなチカラかまでは、教えてくれなかった」
「そう……」
「「他ならぬボクが聞いてるんだから、良いじゃないかって」言ったら、「そう言う問題じゃない」って。まったくケチなんだから。そう言えばハーくんから伝言で、「文房具達が怒ってるから破った日記を直しとけ」って、どう言う意味?」
ギョッとするサクラ。
ヒカリの顔色を窺うように、
「内容とかって聞いて……」
「ないよ。知ってても教えてくれないし。って言うか、破り捨てたくなる日記って、何を書いてたの?」
「あはははは……ナイショ……」
笑って誤魔化すサクラ。
※ ※ ※
笑みを浮かべ、直した日記を見つめるサクラ。
鉛筆を手に取ると妄想文章に大きくバツを書き、代わりにページの一番下に、一文を書き加えて鉛筆を置き、
「さて、晩御飯にしよ♪」
明るい口調でシンクに向かって行った。
書き加えられた一文は、
『今日初めて、本物の友達ができました』
鼻歌まじりの上機嫌で夕食の支度を始めるサクラであったが、そんな彼女の部屋の様子を、物陰からうかがう一人の影が。
西日で赤く照らされた、築年数を感じさせる昭和風、木造二階建アパート。
二階の玄関扉の前にせり出した、渡り廊下の様な通路の端がサクラの部屋である。
しかし外階段は片側にしか無く、サクラは階段を上がって、通路の突き当りまで行かねばならず、不便さを感じる位置にある部屋ではあったが、年季が入り、元々安い家賃のこのアパートの中において場所の悪さから一際安く、一人で生計を立てなければならないサクラにとっては、不便さと差し引いても有難い物件であった。
元は鮮やかな青い色であったろう錆だらけの外階段を、サクラは軽やかな足取りで上がり、自室の扉を開け、
「ただいまぁ~」
西日の差し込む薄暗い室内へ、返事が返えらぬと知りながら挨拶をすると、扉を閉めた。
一人暮らしであるにもかかわらず、靴を脱ぎ揃え置くサクラ。
軟禁生活を送っていたとは言え、育ちの良さが窺える。
物悲しい空気を醸し出す、西日に照らされた六畳一間に入るサクラであったが、その表情には一人暮らしの孤独から来る悲壮感は見受けられず、むしろ心なし以前より穏やかに思える表情で、サクラはおもむろに、机の横のゴミ箱の中から昨日破り捨てた日記の一ページを拾い上げ、丁寧に広げてシワを伸ばすと、
「ごめんね」
小さく笑って、元のページに透明テープで貼り戻した。
貼り戻したヨレたページを見つめ、ヒカリとの会話を思い出すサクラ。
※ ※ ※
「ハーくんはね、物と話せる能力を持ってるんだ。仕組みは分からないけど」
「どんな物でも!?」
「物質はダメだって言ってた。えぇ~と、粉々になったコップとか、人で言う「大ケガして死んじゃった」みたいな物とは話せないんだって。で、そのハーくんが言うには、サクラちゃんの持ち物達がみんな怒ってたから手助けしたんだって。それだけじゃないクセに、ホント照れ屋で、素直じゃないんだぁ」
「じゃあ、私のチカラの事も?」
「うん。でもどんなチカラかまでは、教えてくれなかった」
「そう……」
「「他ならぬボクが聞いてるんだから、良いじゃないかって」言ったら、「そう言う問題じゃない」って。まったくケチなんだから。そう言えばハーくんから伝言で、「文房具達が怒ってるから破った日記を直しとけ」って、どう言う意味?」
ギョッとするサクラ。
ヒカリの顔色を窺うように、
「内容とかって聞いて……」
「ないよ。知ってても教えてくれないし。って言うか、破り捨てたくなる日記って、何を書いてたの?」
「あはははは……ナイショ……」
笑って誤魔化すサクラ。
※ ※ ※
笑みを浮かべ、直した日記を見つめるサクラ。
鉛筆を手に取ると妄想文章に大きくバツを書き、代わりにページの一番下に、一文を書き加えて鉛筆を置き、
「さて、晩御飯にしよ♪」
明るい口調でシンクに向かって行った。
書き加えられた一文は、
『今日初めて、本物の友達ができました』
鼻歌まじりの上機嫌で夕食の支度を始めるサクラであったが、そんな彼女の部屋の様子を、物陰からうかがう一人の影が。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる