奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

文字の大きさ
16 / 88

続章_14

しおりを挟む
 教室に入ると、既にサクラの席に二つの机が付けて並べられ、一つの席にはハヤテが座って居た。
「無理矢理連れて来たんじゃないだろうなぁ?」
 怪訝な表情を見せるハヤテに、どのロが言うのか、
「イヤだなぁ~。ボクがそんな事する筈ないじゃないかぁ~。ねぇ、サクラちゃん♪」
 もはや外堀は埋められ、逃げ場無し。
「う、うん……」
(もう、好きにしてぇ)
 曖昧な返事を返すと、ハヤテが困惑顔で、
「嫌だったら、正直に「イヤ」って言って良んだからな。ヒカリはハッキリ言わないと理解出来ないヤツなんだからな」
「なんだいハーくん、それじゃボクがお馬鹿みたいじゃないかぁ」
「ハーくん、言うな。言うなと言ってもコレだろぅ」
「ニヒヒヒ」
 二人のやり取りに、サクラは小さなため息を吐き、
(そこまでイヤじゃないわよ……二人きりで食べたいなら、そう言えば良いのに)
 妙な反発心が顔を覗かせるが、ハヤテの発する言葉の色見て、
(違う……この人はそんな人じゃなかった……本当に私なんかの事を、気に掛けてくれてる……)
 サクラは人知れず反省すると、微かな笑みをハヤテに向け、
「うん、そうする」
「えぇ~サクラちゃんまで、ひっどぉ~い!」
「ふふふ」
 小さく笑い、膨れっ面したヒカリと共に着席するサクラであったが、ふとハヤテの弁当が目に入った。
「東くんのお弁当、家庭的でおいしそうだね。やっぱり、お母さんのお手製?」
「ハヤテで良いって。まぁ、んな感じか」
 笑って見せるハヤテであったが、言葉の色に微かなウソと、寂しさの色が滲み、
(どうして……)
 思わずハヤテを見つめていると、ヒカリが人差し指を立て、ハヤテに違う違うと振って見せ、
「ハーくんは、ダメだなぁ~」
「はぁ? 何がだよ」
「サクラちゃんが困惑してるでしょ。サクラちゃんに「ウソと隠し事」は通用しないよ。まぁ、妻であるボクにもだけどねぇ」
 ケラケラと笑って見せた。
 ハッとするハヤテ。
 バツが悪そうに頭を掻き、
「ワリィ、サクラ。ヘンに気を遣わせない様にと思って……逆に気を遣わせちまったなぁ」
 小さく笑い、
「お世話になってる遠縁のおばさんの手製だよ。俺には両親がいないんだ」
「えぇ!? ご、ごめんなさいハヤテくん! わ、私、無神経に……」
「気にすんなよ。今の俺にとってはおじさんと、おばさんが両親なのは間違いないし、実の息子みたいに大事にしてもらってるからさぁ」
そう言いきるハヤテの言葉の色に、いっさいの濁りは見られなかった。
「ニヒヒヒッ。ハーくん、それをおばさん達に言ってあげなよ、二人とも喜こぶよぉ~」
「んなハズイまね出来るかぁ!」
「ハーくんの御両親もステキな人だったけど、おじさんとおばさんも、とぉ~てもステキな人なんだよぉ~!」
「お前は毎度毎度、よく恥ずかし気も無くそう言う事が言えるなぁ」
「何言ってるんだい「ハーくん」さんや、感謝は口にしてこそナンボのモンだよぉ」
「ほほう、よく言った。なら、お前もオヤジさんに言うんだなぁ?」
「げぇ! え、えぇ~そ、それはちょっとぉ……」
「おやぁ~? さっきと話が違うんじゃないのかぁ~?」
「むぅ~~~」
 思わずうなるヒカリを、サクラはクスリと笑い、
「ヒカリちゃんのお弁当は、豪華って言う訳じゃないけど……栄養のバランスだけじゃなくて、うまく言えないけど……細やかな気遣いを感んじるお弁当だね」
「ありがとう。作ってくれたかなえさん達に、伝えておくよ!」
「「かなえさん」って?」
「ウチのメイドさんだよ」
「め、メイドさぁん!?」
(ヒカリちゃんて、もしかして超お嬢様!?)
 ギョっとした顔をすると、ハヤテがすかさずヒカリの後頭部に、パシッとツッコミ。
「痛っ! ちょっとハーくん、大事な妻に何をするんだよぉ~。デーブイだよデーブイ!」
「やかましい! 言い方に気を付けろよ。「メイド」なんて言うから、サクラが驚いてるだろ!」
 ハヤテはフリーズしたままのサクラに、
「メイドじゃなくて「家政婦さん」な、家政婦さん。ヒカリは母親がいないから」
「そ、そう、なんだ……」
 両親がおらず遠縁の下で暮らすハヤテと、母親がおらず身のまわりを家政婦に支えてもらうヒカリ。
 二人のこれまでに様々な困難があった事は、自身も苦労を重ねたサクラにも容易に想像でき、困難に直面する度に支えあって来たであろう事に思いを馳せ、
「なんか……良いね、そう言う共有出来る大切な思い出……みたいの……。羨ましい」
 笑顔の中に寂しさを滲ませると、
「これから作れるじゃない」
「え?」
 鳩が豆鉄砲食った様なビックリ顔をするサクラに、
「ボク達と一緒にさ!」
 すると言ったヒカリより、むしろ隣で聞いていたハヤテが恥ずかしそうな顔をし、
「ヒカリは毎度毎度よく……」
「だって本当の事じゃないか」
「そうかも知れないけどなぁ、もう少しオブラートに、」
 二人が言い合いを始めると、サクラはクスリと笑い、
(ありがとう)
 ポツリと小さく呟いた。
「「ん?」」
 振り返るハヤテとヒカリ。
 聞こえると思っていなかったサクラは慌て、
「は、早く食べよう! いただきまぁ~す!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

処理中です...