奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_13

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 昼休み―――
 弁当を家に忘れたサクラは、一階にある購買部の人混みの前に、学生証であるIDカードを握って立っていた。
 この学校には給食が無い代わりに、希望者に格安で「仕出し弁当」を販売し、支払いと本人確認はお金のチャージ機能が付いた学生証のIDカードで済ます事が出来た。
 売られているパンなどと違い、早い者勝ちではないサクラは人が減るのをひたすら待ってから、カウンターにおずおずと近づき、
「あ、あの! コレ!」
 売り子の年配女性に、学生証を差し出した。
 受け取った女性はカードをリーダーにかざすと、紙箱に入った弁当をビニール袋に入れ、
「はいよ」
 カードとビニール袋を、サクラの前に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
 受け取り、馬鹿丁寧に頭を下げると、売り子の女性は小さく笑い、
「はいよ。また来てくんなぁ」
「はい。失礼します!」
(はぁ~知らない人と話すの、緊張するぅ~)
 少し赤らめた顔を上げると、背後から、
「サクラちゃん、みぃ~つけたぁ」
「へ?」
 後ろを振り向いた途端、誰かの人差し指が頬にプスリ。
「あにすうのぉ(何するのぉ)~」
 子供っぽいイタズラにムッとするサクラ。
 イタズラをしたのはニカッと笑うヒカリであった。
 ヒカリはサクラの不愉快など気にする素振りも見せず、
「一緒にご飯食べよ!」
「え!?」
 思わず後退るサクラ。
 サクラは周囲の視線に晒されながら食事をする自分の姿を想像し、
(そ、そんな、クラスのみんなが見てる前で、机を並べてお昼なんて……恥ずかしい!)
「わ、私、屋上でぇ」
「今日は風が強いから、教室の方が良いじゃない!」
 ヒカリは返事を待たずにサクラの手を強引に引き、
「ちょ、待ってぇ、ヒカリちゃん!」
 引きずられる様に、教室へ向かった。
 微笑ましく見送る、購買の売り子の女性。

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