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続章_42
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サクラの額に伝わるヒカリの体温。
(ヒカリちゃん、あったかい……)
次に伝わるハヤテの温もり。
それは鼻先が触れる位置に、ハヤテの顔がある事を意味し、
(これは違う意味で目を開けられないよぉ!)
先程までとは異なる、先程以上に胸が高鳴るサクラ。
(ふ、二人に聞こえちゃうんじゃないかな!?)
恥ずかしさから耳まで赤くなると、
キィーーーン!
(今の何!?)
それは耳に聞こえた音なのか、脳に直接送り込まれたイメージなのか、高周波音の様な物が聞こえたかと思うと、額からハヤテの温もりが遠ざかり、
「もう目を開けて大丈夫だぞ。ゆっくりとな。ゆっくりと」
闇の中に聞こえたハヤテの優しい声に、サクラは恐る恐るゆっくりと目を開けた。
久々の外界は明るく、全てが煌めいている様に見えたが、
「?」
景色は先程と変わらず、
「……ハヤテくん……失敗?」
サクラがキョトンとすると、
「サクラちゃん、サクラちゃん!」
「!」
聞いた事の無い声に呼ばれ、振り向いた。
しかしそこには、クマのぬいぐるみを膝に乗せたヒカリの笑顔があるだけ。
(ははぁ~~~ん、なる程ねぇ)
ヒカリのイタズラと判断したサクラは、クスリと小さく笑い、
「ヒカリちゃん、腹話術で驚かせようとしてもダメなんだからねぇ」
笑顔を見せた途端、
「サクラちゃん、そりゃないだろぉ~」
クマのぬいぐるみが、身振り手振りを交えて残念さをアピールし、
「しゃべったぁ!?」
サクラは思わず後退った。
穿った見方をすれば「ロボットなのではないか」とも思えるが、細やかな表情変化からは心境が窺え、クマは機械仕掛けとは到底思えない感情表現をして見せたのである。
クマはヒカリの膝からピョンと飛び降り、
「オイラの名前は「コダマ号」ってんだ。ヨロシクな!」
サクラに右手を差し出した。
「う、うん。よろしくね。コダマちゃん」
頭の整理が追い付かないサクラが、何とも複雑な笑顔で、差し出された右手を握り返そうとすると、
「おいおい、サクラちゃん。それじゃあ「あの親バカ」と同じ名前になっちまうじゃないかぁ、勘弁してくれよぉ~」
「え! あ、そっか! ごめんね「コダマ号ちゃん」!」
「「ちゃん」付けって……うぅ~ん、まぁ良いかぁ……」
「ありがとう。改めまして「コダマ号ちゃん」、これからよろしくね」
微笑むサクラが右手を握ると、その笑顔を見たコダマ号はポッと顔を赤くした。
するとベッドの上に寝転がっていたサメのぬいぐるみが起き上がり、
「ギャハハハ。「クマ」がいっちょ前に、赤くなってらぁ」
「う、ウルサイぞぉ! 可愛げの足りない「サメ」のクセにぃ!」
「いつもオマエだけズリィんだよぉ!」
サメが不満を漏らすと、
呼応する様に、他のぬいぐるみ達も、
「ずるいぞぉ~」
「抜け駆けだぁ~」
釣られてイスまで動き出し、
「サクラちゃ~ん、オレっち、イスッちとも仲良くしてぇ~」
すかさずクマが話に割って入り、
「いつもヒカリちゃんを乗せて良い思い、元い、載せてるだけのイスが調子に乗るなぁ!」
漏れた本音を誤魔化しツッコムと、日頃からヒカリと接する事の多いイスを羨ましく思っていたのか、机の上の文房具達が同調し、
「「「「そうだぁそうだぁーーー!」」」」
イスが批判攻撃の集中砲火の浴びると、机は相棒を守ろうと言うのか、
「文房具如きが出しゃばんなぁよぉ~」
「「「「「なんだとぉ~~~!」」」」」
静かだったヒカリの部屋は、いつしか物言わぬモノ達の大合唱で大騒ぎになった。
不思議の国の喧騒に、屈託なく笑い合うサクラとヒカリ。
ライバル宣言をした直後とは思えない仲の良さに、
「女子はスゲェなぁ……」
思わず感心してしまうハヤテであった。
(ヒカリちゃん、あったかい……)
次に伝わるハヤテの温もり。
それは鼻先が触れる位置に、ハヤテの顔がある事を意味し、
(これは違う意味で目を開けられないよぉ!)
先程までとは異なる、先程以上に胸が高鳴るサクラ。
(ふ、二人に聞こえちゃうんじゃないかな!?)
恥ずかしさから耳まで赤くなると、
キィーーーン!
(今の何!?)
それは耳に聞こえた音なのか、脳に直接送り込まれたイメージなのか、高周波音の様な物が聞こえたかと思うと、額からハヤテの温もりが遠ざかり、
「もう目を開けて大丈夫だぞ。ゆっくりとな。ゆっくりと」
闇の中に聞こえたハヤテの優しい声に、サクラは恐る恐るゆっくりと目を開けた。
久々の外界は明るく、全てが煌めいている様に見えたが、
「?」
景色は先程と変わらず、
「……ハヤテくん……失敗?」
サクラがキョトンとすると、
「サクラちゃん、サクラちゃん!」
「!」
聞いた事の無い声に呼ばれ、振り向いた。
しかしそこには、クマのぬいぐるみを膝に乗せたヒカリの笑顔があるだけ。
(ははぁ~~~ん、なる程ねぇ)
ヒカリのイタズラと判断したサクラは、クスリと小さく笑い、
「ヒカリちゃん、腹話術で驚かせようとしてもダメなんだからねぇ」
笑顔を見せた途端、
「サクラちゃん、そりゃないだろぉ~」
クマのぬいぐるみが、身振り手振りを交えて残念さをアピールし、
「しゃべったぁ!?」
サクラは思わず後退った。
穿った見方をすれば「ロボットなのではないか」とも思えるが、細やかな表情変化からは心境が窺え、クマは機械仕掛けとは到底思えない感情表現をして見せたのである。
クマはヒカリの膝からピョンと飛び降り、
「オイラの名前は「コダマ号」ってんだ。ヨロシクな!」
サクラに右手を差し出した。
「う、うん。よろしくね。コダマちゃん」
頭の整理が追い付かないサクラが、何とも複雑な笑顔で、差し出された右手を握り返そうとすると、
「おいおい、サクラちゃん。それじゃあ「あの親バカ」と同じ名前になっちまうじゃないかぁ、勘弁してくれよぉ~」
「え! あ、そっか! ごめんね「コダマ号ちゃん」!」
「「ちゃん」付けって……うぅ~ん、まぁ良いかぁ……」
「ありがとう。改めまして「コダマ号ちゃん」、これからよろしくね」
微笑むサクラが右手を握ると、その笑顔を見たコダマ号はポッと顔を赤くした。
するとベッドの上に寝転がっていたサメのぬいぐるみが起き上がり、
「ギャハハハ。「クマ」がいっちょ前に、赤くなってらぁ」
「う、ウルサイぞぉ! 可愛げの足りない「サメ」のクセにぃ!」
「いつもオマエだけズリィんだよぉ!」
サメが不満を漏らすと、
呼応する様に、他のぬいぐるみ達も、
「ずるいぞぉ~」
「抜け駆けだぁ~」
釣られてイスまで動き出し、
「サクラちゃ~ん、オレっち、イスッちとも仲良くしてぇ~」
すかさずクマが話に割って入り、
「いつもヒカリちゃんを乗せて良い思い、元い、載せてるだけのイスが調子に乗るなぁ!」
漏れた本音を誤魔化しツッコムと、日頃からヒカリと接する事の多いイスを羨ましく思っていたのか、机の上の文房具達が同調し、
「「「「そうだぁそうだぁーーー!」」」」
イスが批判攻撃の集中砲火の浴びると、机は相棒を守ろうと言うのか、
「文房具如きが出しゃばんなぁよぉ~」
「「「「「なんだとぉ~~~!」」」」」
静かだったヒカリの部屋は、いつしか物言わぬモノ達の大合唱で大騒ぎになった。
不思議の国の喧騒に、屈託なく笑い合うサクラとヒカリ。
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「女子はスゲェなぁ……」
思わず感心してしまうハヤテであった。
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