奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_43

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 一夜明け―――
 わだかまりを感じさせない女子二人のやり取りに、ハヤテが感嘆を漏らした次の日の朝。
 東海林邸内に響き渡る、姦しく言い争う二つの声。
 穏やかな朝日の差し込む廊下を、足早に歩くかなえの平静を装った顔の中に、微かな不機嫌が滲む。
 慌ただしく二階に上がったかなえの足は、騒音の発生源である扉の前で、ビタリと止まった。
 中から聞こえるギャアギャアと喚き合う声に、苛立ちを募らせるかなえは大きく息を吸い込むと、「バァン」と勢いよく扉を跳ね開け、
「朝っぱらから何事でぇす、お嬢様方ァーーーッ! ご近所迷惑ですよォーーーッ!」
「「!!!」」
 かなえの落雷の様な剣幕に、硬直するヒカリとサクラ。
 しかし二人の姿を見たかなえは、
「……なんて格好をなさっているのですかぁ、お嬢様がたぁ……」
 呆れ顔で、頭痛でもしているかの様に額を押さえた。
 家を出るべきいつもの時間は、とうに過ぎているにもかかわらず、サクラは胸元がはだけたブラウス姿で、穿き掛けていたスカートは驚いた拍子にストンと落ち、ヒカリに至っては上下下着姿のまま。
「「…………」」
「…………」
 晴れた月曜日の、清々しい朝一番とは不釣り合いな、あられもない姿を晒す二人の少女に言葉を失うかなえ。
「だ、だってぇサクラちゃんが、ボクの胸が小さいって!」
「そぉ、そんな事言ってないよぉ! 貸してくれたブラウスの「サイズはどう?」って聞くから、「胸元が少し苦しいかなぁ」って言っただけでぇ!」
「ほらぁ!」
「それを言うならヒカリちゃんだって、「スカートのウエストが苦しそうだねぇ」って! 私のちょと……な、お腹を突っついてぇ!」
「ボクそんな悪い顔して言ってないよぉ!」
「言ってたじゃない!」
「言ってない!」
「言いました!」
 第二ラウンドが始まる直前、
『いい加減になさってぇ下さァアァァッァァいぃ! お嬢様方ァァァァァァァァァ!』
 かなえの堪忍袋の緒が切れた。
 あまりの剣幕に、両手で耳を押さえるヒカリとサクラ。
「玄関でハヤテ様が待っていらっしゃるというのに! 何を稚拙な事で揉めていらっしゃるのです! ハヤテ様に聞こえでもしたら、みっとないですよ!」
「「ええぇ!?」」
 卓上時計に目をやる二人はギョッとした。
 走っても遅刻ギリギリの時間である。
「どっ、どうしようヒカリちゃん!」
「悩んでる場合じゃないよ、サクラちゃん! とにかく急ごう!」
「待ってヒカリちゃん! そっちのスカートの方が良いの!」
「ボクのブラウスはぁ!?」
 呆れるかなえを前に二人が大慌てで登校準備をしていた頃、玄関では、
(あはははは……まる聞こえなんだけど……)
 ハヤテが、見送りの為に待っていた「たまえとゆめ」の二人と、困惑した笑いを向け合っていた。

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