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続章_75
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「ハッハッハッ! ナイトボーイ、その者が一連の犯人なのかねぇ?」
月明りの下に姿を現したのは新津屋である。
続けて、無表情中に憤慨を滲ませる千穂が姿を現し、
「フンスぅ! あくとう、懲らしめるぅ!」
「呼び出しに応じて来てみれば、こう言う事ですか。で結局、その者は何者なんですか?」
不愉快そうに、眉間にシワを寄せる加津佐も姿を現した。
するとハヤテは、ヒカリの下から逃れようともがく侵入者の顔の前に屈み、
「分かり切ってるじゃないですか、先輩方」
ニット帽をムンズと掴み、一気に引き剥がした。
「「「「「!」」」」」
露わになったのは『豊葦原ハヤト』。
「やっぱりな。それにしても、こんな古典的な手に、こうも易々早々引っ掛かるとは流石に思ってなかったぞ。冷静な判断が出来ないほど追い詰められてたのかぁ?」
見下ろすハヤテの視線から、悔し気に、逃れる様に無言で顔をそむけるハヤト。
ハヤテ達は一連の犯人をおびき寄せるために、一つの作戦を実行していた。
それは学校の「表サイト」と「裏サイト」の両方に、
『五月二十三日木曜、午後十八時四十五分頃 三丁目二十五番地四号にボタンを落とされた方、生徒会で保管しておりますので、生徒会室にお越し下さい。』
との一文を書き込むだけの事であった。
身に覚えのない生徒達からすれば「たかがボタンくらいで」と思う文面であるが、襲撃を行った犯人からすれば証拠の品を抑えられている事を意味し、ハヤテは心中穏やかでない犯人に揺さぶりをかけたのである。
自分のした事の意味を自覚出来ていないのか、仏頂面して顔をそむけるハヤトを、ハヤテはフッと鼻先で小さく嘲笑ったかと思うと、次の瞬間憤怒形相に変わり、
「俺の女を傷つけやがってぇタダで済むと思ってんじゃねぇーーーッ!」
凄まじい剣幕に、一瞬ビクリと身を震わせたハヤトは、
「ちぃ、違う! 何を言ってるんだ! 俺は、俺は忘れ物を取りに、たまたま来ただけだ!」
「「「「「「「!」」」」」」」
あまりに見苦しい言い訳に怒りを通り過ぎ、半ば呆れを覚えるヒカリ達。
ハヤトは深夜の学校にマスクの様なニット帽を被りやって来て、違法に作った合鍵で生徒会へ侵入し、足元は靴ではなく、足音を消し、足跡を残さない為の工作か、靴下を幾重にも重ね履きしているのである。
百歩、いや千歩譲って忘れ物が事実だったとしても、ヒカリに刃物を向けた事は事実であり、傷害の現行犯。言い逃れなど許されない状況である。
月明りの下に姿を現したのは新津屋である。
続けて、無表情中に憤慨を滲ませる千穂が姿を現し、
「フンスぅ! あくとう、懲らしめるぅ!」
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不愉快そうに、眉間にシワを寄せる加津佐も姿を現した。
するとハヤテは、ヒカリの下から逃れようともがく侵入者の顔の前に屈み、
「分かり切ってるじゃないですか、先輩方」
ニット帽をムンズと掴み、一気に引き剥がした。
「「「「「!」」」」」
露わになったのは『豊葦原ハヤト』。
「やっぱりな。それにしても、こんな古典的な手に、こうも易々早々引っ掛かるとは流石に思ってなかったぞ。冷静な判断が出来ないほど追い詰められてたのかぁ?」
見下ろすハヤテの視線から、悔し気に、逃れる様に無言で顔をそむけるハヤト。
ハヤテ達は一連の犯人をおびき寄せるために、一つの作戦を実行していた。
それは学校の「表サイト」と「裏サイト」の両方に、
『五月二十三日木曜、午後十八時四十五分頃 三丁目二十五番地四号にボタンを落とされた方、生徒会で保管しておりますので、生徒会室にお越し下さい。』
との一文を書き込むだけの事であった。
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自分のした事の意味を自覚出来ていないのか、仏頂面して顔をそむけるハヤトを、ハヤテはフッと鼻先で小さく嘲笑ったかと思うと、次の瞬間憤怒形相に変わり、
「俺の女を傷つけやがってぇタダで済むと思ってんじゃねぇーーーッ!」
凄まじい剣幕に、一瞬ビクリと身を震わせたハヤトは、
「ちぃ、違う! 何を言ってるんだ! 俺は、俺は忘れ物を取りに、たまたま来ただけだ!」
「「「「「「「!」」」」」」」
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