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青木 森

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15_宿縁の章_4

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 ケープタウンから南極へ向けての空路がある事を知ったアナクスは、
「どうでありんすぅ、妾の勘は。この町を選んだ事に間違いはありせぇんしたぇ」
 結果オーライのドヤ顔に、アナスは苦笑い。
「『勘』などと、機械体のクローザーらしからぬ発言でござるなぁ」
 皮肉を交え、
「早速、(航空会社へ)行くとするでござるか」
 するとアナクスが、
「待つでアリンスぅ!」
 すかさず強く引き留め、
「……何でござる……てだては決まったでござるに……」
 イヤな予感に、怪訝な顔して振り返るアナス。
「まさか「白黒毛玉に時間を浪せよ」などと、言い出すのではなかろうな……」
「うっ」
 一瞬言葉に詰まり、
(思っていたでござるか……)
 内心で呆れる中、
「楽しみは、後(南極)にとって置く事にしたでありんすぅ」
 笑みを浮かべ、
「衣を買うでありんす」
「…………は?」
「極寒の地へ赴くでありんすぇ。当然に、」
「いやいや待つでござる」
「?」
「「?」ではござらん。拙者どもは機械体であり、童とて今や「スティーラー」の身。寒暖など物ともせぬ身に、何ゆえ装束を見立てねばならぬでござる?」
「時、所、場合に応じた装いは必要でありんしょう」
「そう言う話ではござらん。拙者が申しておるのは、」
 無駄な時間としか思えないアナスが尚も食い下がろうとすると、
「ファティ坊に着せて見たいからに決まっているでありんか!」
 モコモコ防寒着に身を包んだ「二頭身の可愛らしい少女」が描かれた看板指差し、熱く力説。
「…………」
 本音をぶっちゃけるアナクスに言葉を失うアナス。
(そんな気は、していたでござるが……)
 言い争いは更なる無駄な時間と諦め、
「分かったでござるよぉ。着流しでも襦袢でも、何でも買うと良いでござるぅ」
 渋々承諾すると、
「そうと決まれば善は急げでありんすぅ♪ ファティ坊に似合う装束のある、店(たな)を探すでありんすぅ♪」
 かつて無い程の上機嫌で歩き出すアナクスと、手を引かれ、
(ファティマのイケン(意見)は?)
 いささか、腑に落ちなさを感じるファティマであった。
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