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冬
……黄昏の果てに刻む無情(4)
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そういえば、この御寺の御名を、迂闊にも山門で読み忘れました。何という御山にござりましょうか。
「石上寺(いそのかみでら)と申す」
ああ、神世(かみよ)の帝が都とした石上の地の寺だ。ふと、わたしの脳裏に、忘れていた知識が過ぎったものです。
「ならばごゆるりとなされよ。雪が止むまで御逗留なされても宜し」
「ありがたき幸せなり」
素性法師が去られて間もなく、何やら素性法師の話し声が微かに響いて参りました。どうやらまた、御客人の御様子です。暫くすると、物腰静かな足音が近づいて参りました。
「御免、先客がござったか」
一足遅れてきたのは旅の僧です。
穏和な面持ちは貴賓さえ感じられ、その教養の程が滲み出ておりました。
この御方、さぞや高貴な生まれの御方でしょうね。察するに、学問を極める為に、出家得度されたのでしょうや。
だからつい、こんな歌をぶつけてみたのです。
岩の上に旅寝をすればいとさむし
苔の衣をわれにかさなん
石上寺を暗に岩の上と引っかけたのです。
歌心の解らぬ者なら、返し歌などございませんでしょう。わたしは期待などしておりませんでした。
そして案の定、旅の僧は歌でこう返してきたのです。
山臥しの苔の衣はただひとへ
かさねばうとしいざ二人ねん
一瞬、ドキッとなりました。
切り返しはお見事なれど、些か気恥ずかしい歌です。こんな老婆に共寝を誘ってこようとは。
しかし、雪風こそ凌げても、本堂板の間は底冷えします。だからわたしも年がいなく、誘われるままにこうして暖を分かち合いました。
「石上寺(いそのかみでら)と申す」
ああ、神世(かみよ)の帝が都とした石上の地の寺だ。ふと、わたしの脳裏に、忘れていた知識が過ぎったものです。
「ならばごゆるりとなされよ。雪が止むまで御逗留なされても宜し」
「ありがたき幸せなり」
素性法師が去られて間もなく、何やら素性法師の話し声が微かに響いて参りました。どうやらまた、御客人の御様子です。暫くすると、物腰静かな足音が近づいて参りました。
「御免、先客がござったか」
一足遅れてきたのは旅の僧です。
穏和な面持ちは貴賓さえ感じられ、その教養の程が滲み出ておりました。
この御方、さぞや高貴な生まれの御方でしょうね。察するに、学問を極める為に、出家得度されたのでしょうや。
だからつい、こんな歌をぶつけてみたのです。
岩の上に旅寝をすればいとさむし
苔の衣をわれにかさなん
石上寺を暗に岩の上と引っかけたのです。
歌心の解らぬ者なら、返し歌などございませんでしょう。わたしは期待などしておりませんでした。
そして案の定、旅の僧は歌でこう返してきたのです。
山臥しの苔の衣はただひとへ
かさねばうとしいざ二人ねん
一瞬、ドキッとなりました。
切り返しはお見事なれど、些か気恥ずかしい歌です。こんな老婆に共寝を誘ってこようとは。
しかし、雪風こそ凌げても、本堂板の間は底冷えします。だからわたしも年がいなく、誘われるままにこうして暖を分かち合いました。
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