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初めての日
第7話
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「じゃーん!貰ってきた」
「それを一緒に行く相手を見つけないとな」
「それな」
「泥好木(どろすき)、水貝井(みかい)。お疲れ」
「お。皆口さん。お疲れ様です」
「おつっすー」
「いや~…ま、いいもんだね。結婚式は」
「染み染みと」
「早くあんたたちの結婚式も呼びなさいよ?」
「いや~…どうかな」
「オレも右に同じっすね」
「泥好木(どろすき)はその旅行券、無駄にしないようにするんだな。まずは」
「うっす」
「じゃ。月曜は変わらず会社あるから。忘れんなよー」
「うっす」
「じゃ、お疲れー」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でーす」
皆口さんが帰って行った。
「泥好木(どろすき)センパーイ!水貝井(みかい)センパーイ!お疲れ様でーす!」
声のほうを向くと落合がこっちに向かって手を振っていた。
「お疲れー!」
「お疲れー!気ーつけて帰れよー!」
「これから同期と三次会行くのでダイジョーブでーす!」
「大丈夫じゃねーな」
「おん」
風天(ふうあ)と小声でやり取りする。
同期女子とわちゃわちゃしながらこちらに手を振る落合に手を振り返す。
「じゃ、オレたちも三次会行きますか」
風天(ふうあ)が驚くことを言い出した。
「マジ?」
「ダメ?」
「いや、全然いいけどさ」
「海の行きたいとこでいいから。奢るし」
「奢りか。なら行こう」
「現金なやつめ」
「地元でい?」
「いいよー」
「あ、でも終電あるか」
とスマホを取り出し、画面をタップしつける。
「やっぱ今日も行きます!お供してください!_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!」
海綺(うき)ちゃんからLIMEが来ていた。
「あ…そうか」
「ん?終電ならまだへーきだろ。まだ8時だし」
「ん?あぁ終電ね。まあ平気か」
「それに最悪終電逃しても海ん家(ち)泊まればいいし」
「別にいいけど、着替えもねぇし、寝るとこねぇぞ」
「ま、そんときになったら考えればいいよ。行こうぜ」
「オッケ。ちょっと待って」
と言って海綺(うき)ちゃんに返信を打ち込む。
「ごめん。もうショクいる感じ?これから向かうんだけど、友達いるんだけど平気?」
送信ボタンをタップし、スマホをしまい、風天(ふうあ)と駅に向かった。
電車に乗り、僕の家の最寄り駅へと向かう。
「あ、そうだ。ちょっと知り合いがいるけど大丈夫?」
と電車で揺られながら風天(ふうあ)に告げる。
「あ、オレは大丈夫だけどー。お邪魔じゃない?オレのほうこそ大丈夫?」
「あ、それはへーき」
「駅前で待ってます。先行くと悪いので。あ、お邪魔なようでしたら今日は遠慮しますけど」
という海綺(うき)ちゃんからの通知を見ながら風天(ふうあ)に言う。
「あ、そ?ならいいんだけど」
聞きながら返信を打ち込む。
「あ、先入ってていいよ。あの、勝利に後で2人来ますって伝えてもらったら。
全然邪魔じゃない邪魔じゃない。海綺(うき)ちゃんが良ければ先ショク行ってて?」
送信ボタンをタップした。
乗り換えをし、自分の家の最寄り駅で降り「命頂幸(ショク)」への道を歩く。
「知り合いって高校の友達とか?」
「いや?」
そういえば海綺(うき)ちゃんのこと、なんて紹介すればいいんだ?と今更ながら思った。
「最近知り合った」
「へぇ~。その居酒屋の常連みたいな?」
「それだ」
風天(ふうあ)が答えを言ってくれた。
「おぉ、クイズ番組でファインプレーしたときやん」
「そのレベル」
「なんかありがとうございます」
風天(ふうあ)と歩き「命頂幸(ショク)」が見えてきたと思ったら
ソワソワしている海綺ちゃんであろう女の子の姿が目に入った。近づく。
「なにしてんの?」
「わ!ビックリした!」
「え、海知り合い?」
「そ。お店に知り合いいるっていったその子」
「あぁ。あ、どうも、海の会社の同期で同僚で親友の泥好木(どろすき) 風天(ふうあ)です」
「あ、どうも。初めまして。海さんのぉ~…」
きっと海綺ちゃんもどう言っていいのか悩んでいるようで
「知り合いの山津野(やまつや) 海綺(うき)です」
「あ、初めまして」
「自己紹介してるとこ悪いんだけど、ここじゃあれだから入らん?」
と言って3人でお店に入った。
「いらっしゃいまー…お!海綺(うき)ちゃん!お!海!…お!あ、初めまして」
「おつー」
「お疲れ様です!」
「あ、初めまして」
「あ、カウンターでいい?3人ならテーブルでもいいけど」
「いつも通りここで」
「オッケー」
3人で並んでカウンター席に座る。海綺(うき)ちゃん、僕、風天(ふうあ)の順番で。
「海綺ちゃんはいつも通りレモンサワー、海もいつも通りビールでいい?」
「はい!お願いします!」
「頼んだー」
「お客さんはどうします?いろいろあるんですけど」
「なんか勝利が敬語使ってんの新鮮だわ」
「たしかに」
「とりあえずビールお願いします」
「はい!ビールで!…接客だからね。敬語できるんですよ僕も」
そう言い残してから飲み物を取りに行ってくれた。
「あ、ちなみに今のがここの…主人?同い年」
「へぇ~同い年なんだ。仲良くなれそう。ここタバコ吸える?」
「吸える。勝利に灰皿ー」
「はい海綺ちゃんレモンサワー!海とーお客さん、ビールですねー」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
「ありがとー。あ、勝利灰皿もらえる?」
「え、いいけど。海タバコ吸い出したん?」
「こっちこっち」
「あぁ!はいはい!すいません。どうぞ」
「すいません。ありがとうございます」
風天(ふうあ)が灰皿を受け取り、タバコの箱からタバコを1本取り出して
Zippライターを取り出して、キャシャン。という音を出してタバコに火をつけた。
「ふぅ~…あぁ~…うまぁー…」
「あ、じゃあとりあえず乾杯を」
「おう」
「じゃ、お疲れっすー」
「お疲れ様です」
「おつっすー」
コキンッっと3つのグラスがあたる。
「…うぅ~まぁ~あぁ~」
「んでタバコ?」
「んでタバコ。…ふぅ~…最高」
「人間の最後やん」
「誰が人間の最後だ。いっぱいおるわ。えぇ~っと山津野(やまつや)さん?」
「あっ…はい!山津野です!なんでしょう?」
「山津野(やまつや)さんここの常連なんですって?」
「あ、はい!」
「なんで海と仲良くなったんですか?」
僕を挟んで話すの話しづらそうだなーと思った。
「えぇ~っと、お恥ずかしい話、ちょっと酔い潰れてしまった日がありまして
まあ、お店は出れたものの、お店からちょっと歩いたらもうダメで
あのポールのとこで休憩してたら海さんがお水買ってくれたんです」
「え!マジ!?海ってそんなやつだったの?」
「やっぱそう思いますよね?」
勝利がお通しとサービスの枝豆を持ってきてくれた。
「ありがとー…って2人ともオレのイメージどうなってんのよ。勝利には前にも言われたけどさ」
「っすよね?」
「っすね」
勝利と風天(ふうあ)が顔を見合わせて意見も合わせている。
「それで、お礼したいなと思って、お水をもらったとこで待ってたら会えたので
その後一緒にここに飲みに来てもらったって感じです」
「へぇ~…お優しいこって」
「どうも」
ビールがうまい。
「泥好木(どろすき)さん?」
「はい、私です」
「ここは初めてなんですか?」
「はい。初めてですね」
「家近いんですか?」
「いや、近くはーないかな?ま、そんな遠くもないですけど」
「なんでまた」
「あぁ、今日後輩の結婚式でさ。二次会行って三次会行くかって言ってここで」
「あ、結婚式」
「そうなんですよ。ご祝儀と二次会の会費で今日4万近く飛びましたよ」
「4万!円!?」
「ドルではないでしょ」
「ドルだと?4万ドル…600万くらい?日本円で」
「くらいじゃん?知らんけど」
「ろっ…百万!?すごっ」
「は払ってないよ?4万円ね。円ね」
「あ、わかってますわかってます。あ、じゃあ今日こそ私が奢りますよ」
「いや、今日は風天(ふうあ)が奢ってくれるから」
「奢りますんで、飲んで食べてください」
「悪いですよ」
「いいからいいから」
「それオレのセリフよ?」
「あ、ここ料理マジうまいから」
「マジ?」
風天(ふうあ)がメニュー表を手に取る。
「あ、これね。オレのおすすめ」
「ホタテのペペロンチーノ?うまそうね」
「メニューに入れるか否かオレが決めたから」
「あ、そうなん?じゃあ海のお墨付きだ」
「海綺(うき)ちゃんも好きよね?」
「はい!美味しいですよ!」
「お、じゃあこれとぉ~…」
風天(ふうあ)がいろいろと頼んだ。
「お待たせしましたぁ~」
勝利が運んできてくれた。
「海の職場先の方?」
「あぁ、そうそう。同僚で同期で同級生」
「あ、てことは?」
「同い年っす」
「おぉ!親近かーん」
「イエーイ」
「YEET!!」
勝利と風天(ふうあ)が拳を合わせる。
「イート?食べる?」
「あ、アメリカの若者言葉で「ヨロー」とかって意味です」
「え!英語喋れんの?」
「多少は?」
「スゲェ~」
そんな勝利と風天(ふうあ)が喋っている中、僕は海綺(うき)ちゃんと話す。
「ごめんね。嫌じゃなければいいんだけど」
「なにがですか?」
「いやこいつ」
「あぁ。嫌だったら来ませんよ」
「まあ…でも会って話してみて合わないってのもあるからね」
「まあーたしかに。でもいい人そう」
「まあ、悪い人ではない…ね」
「あ!そうなんだ!うちの従業員にもプロレス好きいるよ」
「マジ?!?」
「まあ日本かアメリカかは知らんけど。オレが詳しくないから聞いてないけど」
「え、誰っすか?どこにいる人?」
「あ、今日は来てない。芸人さんを目指してここでバイトしてる子」
「会いてぇ~」
「うち通ってください」
「通うには遠いて」
そんな会話が聞こえてきた。
「山津野(やまつや)さんってなにしてる方なんですか?」
「あ、私はニートやってます」
「おぉ!ニートやってる方でしたか。ニートも大変ですよね」
「いや、意外と楽ですよ」
「なにこの会話。ニート大変ってなに」
「いや、いろいろあるかもしれないじゃん、それは。山津野(やまつや)さんて…あ、ダメか」
「なんですか?」
「いや、女性に年齢聞くのはダメだなって思って」
「全然大丈夫ですよ。22歳です」
「若っ!」
「若いよね」
「ヤバっ。お兄さん犯罪ですよ?」
「いや、ちゃんと成人してるから」
「でもさ若いよね。え、オレらが高校のとき…え?高1だとしたら?小…3くらい?」
「犯罪か」
「犯罪だね」
「そう聞くと犯罪っぽいですね」
「ヤバっ。6個差ってそんななんだ?」
「恐ろしいな」
「大学は卒業なされた?」
「なされてないんですよ」
「あ、なされてないの。中退?」
「中退です」
「まあ、ね。別に生きてりゃいいんだから」
「お、いい言葉もらった」
「胸ポケットにしまっとき」
「ドヤ顔すんな」
3人仲良く話しながら飲んで食べた。
「山津野(やまつや)さんは普段はなにしてんの?」
「音楽のことばっか考えてます」
「音楽?ミュージシャン志望的な?」
「まあぁ~…そ、う、で、す、ね?」
「なに?」
「いや夢言うのっ小っ恥ずかしいんですよ」
「えー羨ましいけど。夢あるの」
「そうだよな?」
「めっちゃ羨ましい」
「いやいやいやそんな」
「誰好きとかある?」
「1 Sturdy arrowsって知ってます?」
「あ!知ってる知ってる」
「マジですか!」
「そんな驚く?今や有名でしょ」
「まあ。でも曲が独り歩きしてることも多かったりするので」
「あぁ。いやオレはオレの好きなグループが1 Sturdy arrows好きって公言しててさ」
「あ、そうなんですね」
「More fairって知ってる?」
「知ってます知ってます!よくメンバーの方がポツッターでリポツリしてて出てきます」
「あ、そうそう。本人めっちゃ喜んでるやつね」
「見ます見ます。たしかお顔出されてないですよね」
「そうそう。いつか出すとは言ってるんだけど、まだメンバー誰も顔出してない。
だからお忍びではなく完全ファンとしてライブに参戦してるらしい」
「ISA(1 Sturdy arrowsの愛称)のライブに参戦したってポツリも見ました。
メンバーがリポツリしてて」
「1 Sturdy arrowsの曲もいいけど、More fairの曲もいいの多いのよぉ~」
「曲聴いたことありますけどいいですよね」
「お!ある!いいよね!」
「音楽よく聴かれるんですか?」
「あぁ~最近の曲のプレイリスト、シャッフル再生するくらいで
特定のアーティストさんの曲聴くってのは少ないかなぁ~…。
nyAmaZon MusicでMore fairの曲と
More fairが好きって言ってるからたまに1 Sturdy arrowsの曲聞くくらい」
「1 sturdy arrowsもちゃんと聴いてくだだいよー。カッコいいんで」
「今日からちゃんと聴きます」
なんか海綺ちゃんと風天(ふうあ)が仲良くなって嬉しいけど、なんか複雑な気持ちもあった。
きっと自分を挟んで話しているから少し申し訳ない気持ちがあるのだろう。
「海さんは聴いてくれてます?」
「ん?1 Sturdy arrows?うん。海綺ちゃんの熱弁聞いて気になって
オレもnyAmaZon Musicでテキトーなアルバムシャッフルで聴いたよ」
「どうでした?」
「ん?めっちゃ良かったよ。リズム感も良いし
わかんないけど、海綺ちゃんに言われたからかもしんないけど、なんか全部の音良い気もした。
あと歌詞もいいね」
「ですよね!メロディーラインもそれぞれの音も歌詞もどれも一流なんです!」
海綺ちゃんの目がキラキラ輝いていた。
「お前特定のアーティスト聴かないって言ってたけどあれじゃなかった?
前にLCSが好きって言ってたじゃん」
「はいはい。LCSね。もちろんアメプロ好き仲間としてもアーティストとしても好きだけど
あの人たちほんとアメプロジャンキーで楽曲制作の時間より
仲間とアメプロ見て騒いでる時間のほうが多いからから新曲全然出てないんよね」
「LCS知ってますよ!」
「お!マジ?」
「洋楽っぽい雰囲気ですよね」
「そうそう!アメプロジャンキーだから
いつか自分らの曲がSuperstarのEntrance musicに採用されるようにって
洋楽っぽくしてるんだよ。でも日本語を大切にしてて
日本語バージョンと英語バージョンを同時にリリースしてるんだよ」
「あ、なるほど。英語のタイトルの聴いたら
日本語のタイトルと出だし同じだったのはそーゆーことだったんですね」
「そうそう。だから日本語の勉強になるって海外の人がコメントしてるの見たことある」
「なるほどね。たしかにそうか」
「逆に英語の勉強にもなりそうですよね」
そんな普段しない音楽の話で盛り上がり
「終電大丈夫なん?」
「あ、あと30分くらい?」
「じゃ、今日はこれ飲んだらお開きにするか」
「えぇ~」
「また今度週末くればいいじゃん。連休日とか」
「まあぁ~…。あ、山津野(やまつや)さん、良かったらLIME教えてもらえる?」
「あ、はい!もちろん!」
と海綺ちゃんと風天(ふうあ)が連絡先を交換し
お会計を(風天(ふうあ)の奢りで)済まし、今のグラスが空いたらお店を出た。
「風天(ふうあ)くんまたぜひ来てよ」
「来る来る!そのプロレス好きの店員さんにも会いたいし」
「伝えとくわ」
「伝えといて」
「じゃ、勝利またね」
「おう!海もまたね!海綺(うき)ちゃんもまたね!」
「また来ます!」
「じゃ3人とも気をつけてぇ~」
手を振る勝利に手を振って風天(ふうあ)を駅まで送る。
「んじゃ、また月曜会社で」
「嫌なこと言う」
「しゃーない」
「じゃ山津野(やまつや)さんもまた飲めたら飲みましょ」
「今日は奢ってもらってありがとうございました!」
「いえいえ。また飲めるときあれば」
「ぜひ!」
「1 Sturdy arrows聴いときますね」
「ぜひ聴いてください!」
「じゃ、2人ともまたねー」
「うーす。またー」
「またお願いします!ありがとうございましたー!」
手を振って改札に入っていく風天(ふうあ)を見送る。
「じゃ、帰りますか」
「ですね!」
「コンビニ寄ろうか。オレがなんか飲みたい」
「はい。飲んだほうがいいですよ」
コンビニに寄って、海綺(うき)ちゃんの飲み物と僕の飲み物を買い
コンビニを出て海綺(うき)ちゃんの家へ向かう。
「大丈夫ですか?全然今日は私が送りますよ」
「いいよ、大丈夫大丈夫。ひさしぶりに眠くなるくらい飲んだわ」
「ほんと目が眠そう」
瞼が驚くほど眠い。自動シャッターのように下りてくる。
それを四ツ葉サイダーの炭酸で無理矢理こじ開ける。
「結婚式どうでした?」
「ん?まあ、まあ…かな。おもしろかったぁ~!ってほどでもないし
激つまらんかったってほどでもないけど、正直どちらかといえばつまらなかったほう?」
「そうなんですね」
「海綺(うき)ちゃんは?周りでいないの?結婚した子とか」
「まあ、ちょいちょい聞きますけど。おめでた婚とかそーゆーの」
「結婚式は?行った?」
「いや、そーゆー子らって結婚式しないこと多いんで。
あ、従姉妹の結婚式とかは行きましたよ」
「まあ従姉妹とかなら親戚の集まりみたいでつまんないことはないだろうね」
「まあ、そうですね」
「でも覚悟しときな?たとえばー小学校のときの子とかと今でも連絡取ってたりする?」
「まあ、数人程度なら。あとは同窓会用にグループLIMEがありますね」
「その小学校の友達が結婚するとき、招待されて行ったら、小学校のメンバー2、3人とかで
大体高校のときのメンバーとか今の職場のメンバーで盛り上がって
アウェー感すごくて全然おもしろくないとか全然あるからね」
「そうなんですね」
「って風天(ふうあ)が言ってた」
「あ、泥好木(どろすき)さんの受け売りなんですね」
「そそ。あ、でも結婚式は変わらずいいもんなんだって。
これはあくまでも二次会の話って言ってた」
「なるほど。そっか、二次会」
「そうそう」
「二次会ってなにするんですか?飲みだけ?」
「今日行ってきた二次会ではビンゴ大会があったね」
「あぁ~ビンゴ大会。従姉妹の結婚式では披露宴でやりました」
「あ、そうなんだ?」
という話をしているうちに海綺(うき)ちゃんの家の前についた。
「あ、そうだ」
先程のビンゴ大会で思い出し、財布を取り出す。
財布のお札入れのところに入れていたカードを取って財布をしまう。
「海綺ちゃんこれ、よかったら」
「え、ムンバ(ムーンバックスの略称)のプリペイドカードじゃないですか」
「そうそう。海綺(うき)ちゃんムンバ行く?」
「まあ、極たまに」
「極たまにか」
「貧乏夢追いニートなのでムンバなんてそうそう飲めないです」
「じゃあそれで飲んでください」
「いいんですか?」
「いいのいいの。ビンゴ大会で当たって。
でもオレムンバ行かないし、よかったら使ってあげて」
「じゃあ、ありがたく。贅沢させていただきます」
「うん。呪文みたいなメニュー頼みな」
「呪文」
海綺(うき)ちゃんが笑う。
「はい!ありがとうございます!」
「うん。じゃ、また」
「はい!また!お疲れ様でした!」
「会社の後輩みたいだな。うん。またね」
手を振る海綺(うき)ちゃんに手を振って帰路につく。
玄関のドアの鍵を開け、真っ暗な玄関に入る。玄関のライトをつけ、靴を脱ぐ。
リビングのライトをつけ、リビングへ入る。魅惑のベッドが目に入る。
スーツのままダイブしたくなる。しかし少しばかり高いスーツなため
最後の力を振り絞ってちゃんと着替えてハンガーにかけて
ベッドに飛び込んで泥のように眠った。
「それを一緒に行く相手を見つけないとな」
「それな」
「泥好木(どろすき)、水貝井(みかい)。お疲れ」
「お。皆口さん。お疲れ様です」
「おつっすー」
「いや~…ま、いいもんだね。結婚式は」
「染み染みと」
「早くあんたたちの結婚式も呼びなさいよ?」
「いや~…どうかな」
「オレも右に同じっすね」
「泥好木(どろすき)はその旅行券、無駄にしないようにするんだな。まずは」
「うっす」
「じゃ。月曜は変わらず会社あるから。忘れんなよー」
「うっす」
「じゃ、お疲れー」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でーす」
皆口さんが帰って行った。
「泥好木(どろすき)センパーイ!水貝井(みかい)センパーイ!お疲れ様でーす!」
声のほうを向くと落合がこっちに向かって手を振っていた。
「お疲れー!」
「お疲れー!気ーつけて帰れよー!」
「これから同期と三次会行くのでダイジョーブでーす!」
「大丈夫じゃねーな」
「おん」
風天(ふうあ)と小声でやり取りする。
同期女子とわちゃわちゃしながらこちらに手を振る落合に手を振り返す。
「じゃ、オレたちも三次会行きますか」
風天(ふうあ)が驚くことを言い出した。
「マジ?」
「ダメ?」
「いや、全然いいけどさ」
「海の行きたいとこでいいから。奢るし」
「奢りか。なら行こう」
「現金なやつめ」
「地元でい?」
「いいよー」
「あ、でも終電あるか」
とスマホを取り出し、画面をタップしつける。
「やっぱ今日も行きます!お供してください!_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!」
海綺(うき)ちゃんからLIMEが来ていた。
「あ…そうか」
「ん?終電ならまだへーきだろ。まだ8時だし」
「ん?あぁ終電ね。まあ平気か」
「それに最悪終電逃しても海ん家(ち)泊まればいいし」
「別にいいけど、着替えもねぇし、寝るとこねぇぞ」
「ま、そんときになったら考えればいいよ。行こうぜ」
「オッケ。ちょっと待って」
と言って海綺(うき)ちゃんに返信を打ち込む。
「ごめん。もうショクいる感じ?これから向かうんだけど、友達いるんだけど平気?」
送信ボタンをタップし、スマホをしまい、風天(ふうあ)と駅に向かった。
電車に乗り、僕の家の最寄り駅へと向かう。
「あ、そうだ。ちょっと知り合いがいるけど大丈夫?」
と電車で揺られながら風天(ふうあ)に告げる。
「あ、オレは大丈夫だけどー。お邪魔じゃない?オレのほうこそ大丈夫?」
「あ、それはへーき」
「駅前で待ってます。先行くと悪いので。あ、お邪魔なようでしたら今日は遠慮しますけど」
という海綺(うき)ちゃんからの通知を見ながら風天(ふうあ)に言う。
「あ、そ?ならいいんだけど」
聞きながら返信を打ち込む。
「あ、先入ってていいよ。あの、勝利に後で2人来ますって伝えてもらったら。
全然邪魔じゃない邪魔じゃない。海綺(うき)ちゃんが良ければ先ショク行ってて?」
送信ボタンをタップした。
乗り換えをし、自分の家の最寄り駅で降り「命頂幸(ショク)」への道を歩く。
「知り合いって高校の友達とか?」
「いや?」
そういえば海綺(うき)ちゃんのこと、なんて紹介すればいいんだ?と今更ながら思った。
「最近知り合った」
「へぇ~。その居酒屋の常連みたいな?」
「それだ」
風天(ふうあ)が答えを言ってくれた。
「おぉ、クイズ番組でファインプレーしたときやん」
「そのレベル」
「なんかありがとうございます」
風天(ふうあ)と歩き「命頂幸(ショク)」が見えてきたと思ったら
ソワソワしている海綺ちゃんであろう女の子の姿が目に入った。近づく。
「なにしてんの?」
「わ!ビックリした!」
「え、海知り合い?」
「そ。お店に知り合いいるっていったその子」
「あぁ。あ、どうも、海の会社の同期で同僚で親友の泥好木(どろすき) 風天(ふうあ)です」
「あ、どうも。初めまして。海さんのぉ~…」
きっと海綺ちゃんもどう言っていいのか悩んでいるようで
「知り合いの山津野(やまつや) 海綺(うき)です」
「あ、初めまして」
「自己紹介してるとこ悪いんだけど、ここじゃあれだから入らん?」
と言って3人でお店に入った。
「いらっしゃいまー…お!海綺(うき)ちゃん!お!海!…お!あ、初めまして」
「おつー」
「お疲れ様です!」
「あ、初めまして」
「あ、カウンターでいい?3人ならテーブルでもいいけど」
「いつも通りここで」
「オッケー」
3人で並んでカウンター席に座る。海綺(うき)ちゃん、僕、風天(ふうあ)の順番で。
「海綺ちゃんはいつも通りレモンサワー、海もいつも通りビールでいい?」
「はい!お願いします!」
「頼んだー」
「お客さんはどうします?いろいろあるんですけど」
「なんか勝利が敬語使ってんの新鮮だわ」
「たしかに」
「とりあえずビールお願いします」
「はい!ビールで!…接客だからね。敬語できるんですよ僕も」
そう言い残してから飲み物を取りに行ってくれた。
「あ、ちなみに今のがここの…主人?同い年」
「へぇ~同い年なんだ。仲良くなれそう。ここタバコ吸える?」
「吸える。勝利に灰皿ー」
「はい海綺ちゃんレモンサワー!海とーお客さん、ビールですねー」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
「ありがとー。あ、勝利灰皿もらえる?」
「え、いいけど。海タバコ吸い出したん?」
「こっちこっち」
「あぁ!はいはい!すいません。どうぞ」
「すいません。ありがとうございます」
風天(ふうあ)が灰皿を受け取り、タバコの箱からタバコを1本取り出して
Zippライターを取り出して、キャシャン。という音を出してタバコに火をつけた。
「ふぅ~…あぁ~…うまぁー…」
「あ、じゃあとりあえず乾杯を」
「おう」
「じゃ、お疲れっすー」
「お疲れ様です」
「おつっすー」
コキンッっと3つのグラスがあたる。
「…うぅ~まぁ~あぁ~」
「んでタバコ?」
「んでタバコ。…ふぅ~…最高」
「人間の最後やん」
「誰が人間の最後だ。いっぱいおるわ。えぇ~っと山津野(やまつや)さん?」
「あっ…はい!山津野です!なんでしょう?」
「山津野(やまつや)さんここの常連なんですって?」
「あ、はい!」
「なんで海と仲良くなったんですか?」
僕を挟んで話すの話しづらそうだなーと思った。
「えぇ~っと、お恥ずかしい話、ちょっと酔い潰れてしまった日がありまして
まあ、お店は出れたものの、お店からちょっと歩いたらもうダメで
あのポールのとこで休憩してたら海さんがお水買ってくれたんです」
「え!マジ!?海ってそんなやつだったの?」
「やっぱそう思いますよね?」
勝利がお通しとサービスの枝豆を持ってきてくれた。
「ありがとー…って2人ともオレのイメージどうなってんのよ。勝利には前にも言われたけどさ」
「っすよね?」
「っすね」
勝利と風天(ふうあ)が顔を見合わせて意見も合わせている。
「それで、お礼したいなと思って、お水をもらったとこで待ってたら会えたので
その後一緒にここに飲みに来てもらったって感じです」
「へぇ~…お優しいこって」
「どうも」
ビールがうまい。
「泥好木(どろすき)さん?」
「はい、私です」
「ここは初めてなんですか?」
「はい。初めてですね」
「家近いんですか?」
「いや、近くはーないかな?ま、そんな遠くもないですけど」
「なんでまた」
「あぁ、今日後輩の結婚式でさ。二次会行って三次会行くかって言ってここで」
「あ、結婚式」
「そうなんですよ。ご祝儀と二次会の会費で今日4万近く飛びましたよ」
「4万!円!?」
「ドルではないでしょ」
「ドルだと?4万ドル…600万くらい?日本円で」
「くらいじゃん?知らんけど」
「ろっ…百万!?すごっ」
「は払ってないよ?4万円ね。円ね」
「あ、わかってますわかってます。あ、じゃあ今日こそ私が奢りますよ」
「いや、今日は風天(ふうあ)が奢ってくれるから」
「奢りますんで、飲んで食べてください」
「悪いですよ」
「いいからいいから」
「それオレのセリフよ?」
「あ、ここ料理マジうまいから」
「マジ?」
風天(ふうあ)がメニュー表を手に取る。
「あ、これね。オレのおすすめ」
「ホタテのペペロンチーノ?うまそうね」
「メニューに入れるか否かオレが決めたから」
「あ、そうなん?じゃあ海のお墨付きだ」
「海綺(うき)ちゃんも好きよね?」
「はい!美味しいですよ!」
「お、じゃあこれとぉ~…」
風天(ふうあ)がいろいろと頼んだ。
「お待たせしましたぁ~」
勝利が運んできてくれた。
「海の職場先の方?」
「あぁ、そうそう。同僚で同期で同級生」
「あ、てことは?」
「同い年っす」
「おぉ!親近かーん」
「イエーイ」
「YEET!!」
勝利と風天(ふうあ)が拳を合わせる。
「イート?食べる?」
「あ、アメリカの若者言葉で「ヨロー」とかって意味です」
「え!英語喋れんの?」
「多少は?」
「スゲェ~」
そんな勝利と風天(ふうあ)が喋っている中、僕は海綺(うき)ちゃんと話す。
「ごめんね。嫌じゃなければいいんだけど」
「なにがですか?」
「いやこいつ」
「あぁ。嫌だったら来ませんよ」
「まあ…でも会って話してみて合わないってのもあるからね」
「まあーたしかに。でもいい人そう」
「まあ、悪い人ではない…ね」
「あ!そうなんだ!うちの従業員にもプロレス好きいるよ」
「マジ?!?」
「まあ日本かアメリカかは知らんけど。オレが詳しくないから聞いてないけど」
「え、誰っすか?どこにいる人?」
「あ、今日は来てない。芸人さんを目指してここでバイトしてる子」
「会いてぇ~」
「うち通ってください」
「通うには遠いて」
そんな会話が聞こえてきた。
「山津野(やまつや)さんってなにしてる方なんですか?」
「あ、私はニートやってます」
「おぉ!ニートやってる方でしたか。ニートも大変ですよね」
「いや、意外と楽ですよ」
「なにこの会話。ニート大変ってなに」
「いや、いろいろあるかもしれないじゃん、それは。山津野(やまつや)さんて…あ、ダメか」
「なんですか?」
「いや、女性に年齢聞くのはダメだなって思って」
「全然大丈夫ですよ。22歳です」
「若っ!」
「若いよね」
「ヤバっ。お兄さん犯罪ですよ?」
「いや、ちゃんと成人してるから」
「でもさ若いよね。え、オレらが高校のとき…え?高1だとしたら?小…3くらい?」
「犯罪か」
「犯罪だね」
「そう聞くと犯罪っぽいですね」
「ヤバっ。6個差ってそんななんだ?」
「恐ろしいな」
「大学は卒業なされた?」
「なされてないんですよ」
「あ、なされてないの。中退?」
「中退です」
「まあ、ね。別に生きてりゃいいんだから」
「お、いい言葉もらった」
「胸ポケットにしまっとき」
「ドヤ顔すんな」
3人仲良く話しながら飲んで食べた。
「山津野(やまつや)さんは普段はなにしてんの?」
「音楽のことばっか考えてます」
「音楽?ミュージシャン志望的な?」
「まあぁ~…そ、う、で、す、ね?」
「なに?」
「いや夢言うのっ小っ恥ずかしいんですよ」
「えー羨ましいけど。夢あるの」
「そうだよな?」
「めっちゃ羨ましい」
「いやいやいやそんな」
「誰好きとかある?」
「1 Sturdy arrowsって知ってます?」
「あ!知ってる知ってる」
「マジですか!」
「そんな驚く?今や有名でしょ」
「まあ。でも曲が独り歩きしてることも多かったりするので」
「あぁ。いやオレはオレの好きなグループが1 Sturdy arrows好きって公言しててさ」
「あ、そうなんですね」
「More fairって知ってる?」
「知ってます知ってます!よくメンバーの方がポツッターでリポツリしてて出てきます」
「あ、そうそう。本人めっちゃ喜んでるやつね」
「見ます見ます。たしかお顔出されてないですよね」
「そうそう。いつか出すとは言ってるんだけど、まだメンバー誰も顔出してない。
だからお忍びではなく完全ファンとしてライブに参戦してるらしい」
「ISA(1 Sturdy arrowsの愛称)のライブに参戦したってポツリも見ました。
メンバーがリポツリしてて」
「1 Sturdy arrowsの曲もいいけど、More fairの曲もいいの多いのよぉ~」
「曲聴いたことありますけどいいですよね」
「お!ある!いいよね!」
「音楽よく聴かれるんですか?」
「あぁ~最近の曲のプレイリスト、シャッフル再生するくらいで
特定のアーティストさんの曲聴くってのは少ないかなぁ~…。
nyAmaZon MusicでMore fairの曲と
More fairが好きって言ってるからたまに1 Sturdy arrowsの曲聞くくらい」
「1 sturdy arrowsもちゃんと聴いてくだだいよー。カッコいいんで」
「今日からちゃんと聴きます」
なんか海綺ちゃんと風天(ふうあ)が仲良くなって嬉しいけど、なんか複雑な気持ちもあった。
きっと自分を挟んで話しているから少し申し訳ない気持ちがあるのだろう。
「海さんは聴いてくれてます?」
「ん?1 Sturdy arrows?うん。海綺ちゃんの熱弁聞いて気になって
オレもnyAmaZon Musicでテキトーなアルバムシャッフルで聴いたよ」
「どうでした?」
「ん?めっちゃ良かったよ。リズム感も良いし
わかんないけど、海綺ちゃんに言われたからかもしんないけど、なんか全部の音良い気もした。
あと歌詞もいいね」
「ですよね!メロディーラインもそれぞれの音も歌詞もどれも一流なんです!」
海綺ちゃんの目がキラキラ輝いていた。
「お前特定のアーティスト聴かないって言ってたけどあれじゃなかった?
前にLCSが好きって言ってたじゃん」
「はいはい。LCSね。もちろんアメプロ好き仲間としてもアーティストとしても好きだけど
あの人たちほんとアメプロジャンキーで楽曲制作の時間より
仲間とアメプロ見て騒いでる時間のほうが多いからから新曲全然出てないんよね」
「LCS知ってますよ!」
「お!マジ?」
「洋楽っぽい雰囲気ですよね」
「そうそう!アメプロジャンキーだから
いつか自分らの曲がSuperstarのEntrance musicに採用されるようにって
洋楽っぽくしてるんだよ。でも日本語を大切にしてて
日本語バージョンと英語バージョンを同時にリリースしてるんだよ」
「あ、なるほど。英語のタイトルの聴いたら
日本語のタイトルと出だし同じだったのはそーゆーことだったんですね」
「そうそう。だから日本語の勉強になるって海外の人がコメントしてるの見たことある」
「なるほどね。たしかにそうか」
「逆に英語の勉強にもなりそうですよね」
そんな普段しない音楽の話で盛り上がり
「終電大丈夫なん?」
「あ、あと30分くらい?」
「じゃ、今日はこれ飲んだらお開きにするか」
「えぇ~」
「また今度週末くればいいじゃん。連休日とか」
「まあぁ~…。あ、山津野(やまつや)さん、良かったらLIME教えてもらえる?」
「あ、はい!もちろん!」
と海綺ちゃんと風天(ふうあ)が連絡先を交換し
お会計を(風天(ふうあ)の奢りで)済まし、今のグラスが空いたらお店を出た。
「風天(ふうあ)くんまたぜひ来てよ」
「来る来る!そのプロレス好きの店員さんにも会いたいし」
「伝えとくわ」
「伝えといて」
「じゃ、勝利またね」
「おう!海もまたね!海綺(うき)ちゃんもまたね!」
「また来ます!」
「じゃ3人とも気をつけてぇ~」
手を振る勝利に手を振って風天(ふうあ)を駅まで送る。
「んじゃ、また月曜会社で」
「嫌なこと言う」
「しゃーない」
「じゃ山津野(やまつや)さんもまた飲めたら飲みましょ」
「今日は奢ってもらってありがとうございました!」
「いえいえ。また飲めるときあれば」
「ぜひ!」
「1 Sturdy arrows聴いときますね」
「ぜひ聴いてください!」
「じゃ、2人ともまたねー」
「うーす。またー」
「またお願いします!ありがとうございましたー!」
手を振って改札に入っていく風天(ふうあ)を見送る。
「じゃ、帰りますか」
「ですね!」
「コンビニ寄ろうか。オレがなんか飲みたい」
「はい。飲んだほうがいいですよ」
コンビニに寄って、海綺(うき)ちゃんの飲み物と僕の飲み物を買い
コンビニを出て海綺(うき)ちゃんの家へ向かう。
「大丈夫ですか?全然今日は私が送りますよ」
「いいよ、大丈夫大丈夫。ひさしぶりに眠くなるくらい飲んだわ」
「ほんと目が眠そう」
瞼が驚くほど眠い。自動シャッターのように下りてくる。
それを四ツ葉サイダーの炭酸で無理矢理こじ開ける。
「結婚式どうでした?」
「ん?まあ、まあ…かな。おもしろかったぁ~!ってほどでもないし
激つまらんかったってほどでもないけど、正直どちらかといえばつまらなかったほう?」
「そうなんですね」
「海綺(うき)ちゃんは?周りでいないの?結婚した子とか」
「まあ、ちょいちょい聞きますけど。おめでた婚とかそーゆーの」
「結婚式は?行った?」
「いや、そーゆー子らって結婚式しないこと多いんで。
あ、従姉妹の結婚式とかは行きましたよ」
「まあ従姉妹とかなら親戚の集まりみたいでつまんないことはないだろうね」
「まあ、そうですね」
「でも覚悟しときな?たとえばー小学校のときの子とかと今でも連絡取ってたりする?」
「まあ、数人程度なら。あとは同窓会用にグループLIMEがありますね」
「その小学校の友達が結婚するとき、招待されて行ったら、小学校のメンバー2、3人とかで
大体高校のときのメンバーとか今の職場のメンバーで盛り上がって
アウェー感すごくて全然おもしろくないとか全然あるからね」
「そうなんですね」
「って風天(ふうあ)が言ってた」
「あ、泥好木(どろすき)さんの受け売りなんですね」
「そそ。あ、でも結婚式は変わらずいいもんなんだって。
これはあくまでも二次会の話って言ってた」
「なるほど。そっか、二次会」
「そうそう」
「二次会ってなにするんですか?飲みだけ?」
「今日行ってきた二次会ではビンゴ大会があったね」
「あぁ~ビンゴ大会。従姉妹の結婚式では披露宴でやりました」
「あ、そうなんだ?」
という話をしているうちに海綺(うき)ちゃんの家の前についた。
「あ、そうだ」
先程のビンゴ大会で思い出し、財布を取り出す。
財布のお札入れのところに入れていたカードを取って財布をしまう。
「海綺ちゃんこれ、よかったら」
「え、ムンバ(ムーンバックスの略称)のプリペイドカードじゃないですか」
「そうそう。海綺(うき)ちゃんムンバ行く?」
「まあ、極たまに」
「極たまにか」
「貧乏夢追いニートなのでムンバなんてそうそう飲めないです」
「じゃあそれで飲んでください」
「いいんですか?」
「いいのいいの。ビンゴ大会で当たって。
でもオレムンバ行かないし、よかったら使ってあげて」
「じゃあ、ありがたく。贅沢させていただきます」
「うん。呪文みたいなメニュー頼みな」
「呪文」
海綺(うき)ちゃんが笑う。
「はい!ありがとうございます!」
「うん。じゃ、また」
「はい!また!お疲れ様でした!」
「会社の後輩みたいだな。うん。またね」
手を振る海綺(うき)ちゃんに手を振って帰路につく。
玄関のドアの鍵を開け、真っ暗な玄関に入る。玄関のライトをつけ、靴を脱ぐ。
リビングのライトをつけ、リビングへ入る。魅惑のベッドが目に入る。
スーツのままダイブしたくなる。しかし少しばかり高いスーツなため
最後の力を振り絞ってちゃんと着替えてハンガーにかけて
ベッドに飛び込んで泥のように眠った。
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