ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~

結月楓

文字の大きさ
79 / 81

第七十九話 クマラヤン岬

しおりを挟む
 馬をレンタルした俺たちは平野を颯爽と駆け抜ける。
 地面には膝くらいまでの高さの草が目いっぱい背伸びをして辺り一面に生い茂っている。

「ここを歩いていくとなると大変だっただろうな。馬を借りたのは正解だったな」
「そうよ、ローザさんの言うことに間違いなんてないんだから」

 ローザと俺は馬に乗りながら並走している。
 後ろからは少し遅れて小さい蹄が鳴らす足音が聞こえてくる。

「おーい、ちょっと待つのである! ……全く、なんで我らの馬はポニーなのだ」
「……かわいい……ちっちゃな……お馬さん……わたしは……好き」

 レイチェルとシルヴィアは背が低いので、取り回しやすいようにポニーをレンタルさせた。
 ……のだが俺達の馬に比べるとどうやら走るスピードが遅いようだ。

「到着するまでの辛抱だから我慢してくれ! というか乗り心地は多分ポニーのほうがいいぞ?」
「そうなのであるか? 帰りは一旦馬を交換して確かめたいのである」
「はいはい」

 呑気にそんなやり取りをしていると、アリサがすこし険しい顔をしながら俺の横に馬を走らせてきた。

「ユート、クマラヤン岬についてはどのくらい知ってるの?」
「俺はさっきローザに聞いた情報以外の事は何も知らないぜ?」

 それを聞くとアリサはすぐに話しかける相手をローザに変更する。

「ローザは勿論知ってるわよね? ……わたし、思うの。うちのギルドで攻略するのは少し難しいんじゃないかって」

「アリサちゃんが心配しているのはジャイアントクラブのことかしら? 大丈夫よ。ジャイアントクラブは火に弱いから、群れでやってきたとしてもユート君のイフリートで一網打尽に出来るわよ。ね、ユート君?」

「お、おう。イフリートなら任せておけ!」

 急に話を振られたのでたどたどしい返事になる。
 ダンジョンに行くときには大抵オーディンとイフリートは持っていくのでそこのところはバッチリだ。

「わかったわ。頼りにしてるわよ、ユート」

 アリサからこんなセリフが聞けるなんて、最初のころには考えられなかった。
 俺もなんだかんだこっちの世界にきて成長して認められてきたのかなぁ。

「さて、そろそろクマラヤン岬のエリアに入った頃よ。いつジャイアントクラブが襲ってきてもいいように頼んだわよ、ユート君」

「おい、ローザ」
「なに?」
「この目の前にいるでっかいのがそのジャイアントクラブなんじゃないのか!?」

 それはもう名前の通りで何もひねりがない程にでっかい蟹だった。
 八本の足はそれ一つだけでも俺達を馬事踏みつぶせてしまうほどの迫力があるのにもかかわらず、超巨大なハサミまである。

「――ユート君! 攻撃される前に急いで!」
「わかった! イフリート! 蟹を美味しく調理してやってくれ!」

 俺は即座にイフリートを召喚し、ジャイアントクラブに炎弾を叩きこんだ。
 炎を浴びたジャイアントクラブはボテッとなさけなくひっくり返って息絶えてしまった。

「驚くほどに拍子抜けだな。この調子でクリスタルオーブのあるところまでちゃっちゃと進んじゃいますか!」

 俺が気を吐くや否や、後ろから大きく羽ばたく音が聞こえてきた。
 とっさに振り向くと、空に大きなドラゴンが飛んでいるのが見える。

「ローザ、なんだあれは!? ジャイアントクラブだけじゃなくてあんなのもいるなんて聞いてないぞ!」
「いや、あれはこの辺りに生息しているモンスターじゃないわ。あれは幻獣型の召喚ファフニールよ!」

 よく見るとドラゴンの上にはアデルと二人の女の子が乗っているのが見える。

「げっ!? あれはアデルじゃないか! それと見たことない顔が二人いるな」
「きっとあの二人のどちらかがファフニールを召喚したんでしょうね。先を越されないように急ぐわよ、ユート君!」

 ローザは馬の手綱を強く引っ張り速度を上げる。
 しかし所詮は馬の速度、空を飛ぶドラゴンには敵わずすぐに追いつかれてしまった。

 アデルはファフニールを見せつけるように俺たちの目の前に止めた。

「ユート、紹介するよ。うちのギルドの新人二人、エルとメルだ」

 エルとメルと呼ばれた女の子達は、薄紫の髪色にパッツンの前髪とお揃いの髪型で尚且つ同じ顔をしている。違う点はと言えば、頭に付けたリボンの色が白とピンクということだ。

 まずは白のリボンをつけた子がファフニールの上から挨拶をしてきた。

「はじめまして、エルです。ファフニールの召喚をしているのはわたしです。どうです? 恐ろしいでしょう?」

 彼女は立ち上がってこちらを睨みつけて凄んで見せているようだが、肝心の風貌が可愛いお嬢様なので全く怖くない。

 続いてもう一人のピンクのリボンの子がファフニールから飛び降りて土下座しながら挨拶をしてきた。

「ごめんなさい! ごめんなさい! わたしがエルの双子の妹のメルです。姉はいつも偉そうにしてますが、人見知りで人を遠ざけようとして尊大な態度をとってるだけなんです。許してください!」

 メルはやけにへりくだった態度で何度も土下座を繰り返している。

「いや、別に気にしてないから。二人ともよろしくな、俺はユートっていうんだ」
「勿論知っています! 知っています! ユートさんの活躍はうちのギルドでももっぱらの評判でして! 是非お嫁に行きたい……じゃなかった、冒険の手ほどきをして欲しいと思っていました!」

 メルは土下座から一転、いきなり立ち上がって俺の手を両手でガシっと握ってきた。
 その様子を見た双子の姉のエルはファフニールの上に佇んだまま、

「……メルは尻軽ビッチだから近づかないほうがいい」

 抑揚のない口調でとんでもないことを言ってきた。

「ちょっと姉さん! またわたしの悪口を! ユートさん、尻軽ビッチなんていうのは嘘ですからどうか信じないでくださいね!」
「あはは……」

 本当に尻軽ビッチなのかどうかは若干気になるけども、俺は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

「二人とも変わった性格をしているけど、腕は確かだから仲良くしてやって欲しい」

 アデルもファフニールから降りてきて俺達に挨拶をしてきた。

「エルのファフニールは確かに凄そうだけど、妹のメルもこれくらいの召喚を持っているってことか?」
「持ってます! 持ってます! それはもうユートさんが惚れ惚れしちゃうくらいの召喚を! ユートさんが持ってるイフリートも持ってますよ! お揃いですね! お揃い!」

 メルは再び俺に近づいてきてぐいぐいとアピールしてくる。
 この子、やっぱり尻軽ビッチなんだろうか……。

「……メルは男と見るとすぐに胸元をアピールするセクハラビッチ」
「姉さん! いい加減にしてください! 嫌われちゃうじゃないですか、わたしが!」

 双子の姉妹はわいわいがやがやと喧嘩を始めてしまった。

「アデル、二人の世話をするの大変そうだな……」

 俺はぽんっとアデルの肩を叩いて呟いた。

「二人とも実力は確かなんだけどね、実力は。……さて、そろそろクリスタルオーブ探索に戻るとするよ。健闘を祈るよ、ユート!」

 アデル達はファフニールに戻ると、クマラヤン岬の奥のエリアまで飛び立ってしまった。

「しまった、先を越された! 急ぐぞ!」

 声をかけると横にはシルヴィアとレイチェルだけしかいなかった。

「……あれ? 他のみんなは?」
「アデル達に先を越される前にクリスタルオーブを回収するわよって言って行ってしまったのである」

 さすが抜け目ないな。でも俺のイフリートがなくても大丈夫なのだろうか、少し不安だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...