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はじまりの話2
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ゴロゴロと黒雲を掻き回す音と、ドシャドシャと大気を打ち消すような雨音はさきほどからより強く、明らかに外の天候は悪化している。
部屋の南面にある掃き出し窓には、薄手のカーテンが中途半端に引いてあるだけで、遠くの稲光を直接部屋のなかへ招いている。
チカチカするのは、きっとそのせい。
床に押し倒された猫柳の青白い顔も、四つん這いで覆い被さっている高揚した猿渡の顔も、かたまっているのに稲光が時の経過を知らせる。
目眩に似た揺らぎで、猿渡の頭はゆっくりと降ろされていく。息を呑むようにして一度つぐまれた猫柳の小さな唇は、またふわりと無意識に開いた。
落雷と稲光で震えたのか、お互いの肩がビクリと揺れ、映し出されるシルエットは重なっていた。
猿渡の厚い唇に、猫柳の唇は呑み込まれる。一度離されたもののまた塞ぎ、初めての感触に溺れて何度も擦り合わせては吸いついた。
温かく柔らかい感触は、その触れた唇からビリビリと全身へも巡っていく。
もっとほしくて、舌を伸ばしたのはどちらからだったのか。気付けば、お互いの舌を絡ませることに夢中になっていた。
擦り合わせては絡ませて、吸いついては舐め上げて。どんどん深くなり、それでも足りないと、何度も何度も角度を変えてみては重ねて絡ませてと貪っている。
猿渡は両肘を床につけて、猫柳の髪の毛を指に絡ませるように両手に包んで。猫柳の細く白い指先は猿渡の剥き出しの肩に回されていて、時折キュッと力がこもる。
小屋めがけてぶっかけているような雨音が、ふたりの羞恥も、乱れた呼気も掻き消していた。
やがて猿渡の手が、スルリと猫柳の首元を撫で伝って胸の膨らみへとためらいがちにくだっていった。素肌の上にTシャツだけのその部分は、熱さも柔らさかも隠さず伝える。少し指に力を込めただけで、くにゃりと形を手のひらに合わせてくる。かたく尖った乳首が指に引っかかって、猫柳は猿渡の腕のなかで全身を跳ねさせた。
猿渡は両手でシャツごと胸を掬い上げると、そのままむしゃぶりついた。
「やっ、あっ」
解放された猫柳の口から、か弱い呻き声が漏れるも、それはすぐに猿渡から与えられる強い刺激で悲鳴に変わる。
ジュウッと強めに乳首を吸われ、指先でクニクニとすり潰され、シャツの上からとはいえ強烈な刺激がダイレクトに伝わってしまう。
息の荒い猿渡の口から吐き出される熱と湿度を纏った呼気が、さらに欲情を煽って胸の感度を上げてくる。
未知の快感に驚いてジタバタと儚くも抵抗をはじめた猫柳を、猿渡は両腿ではさみ抑えつつ邪魔とばかりにシャツを一気に捲り上げた。
「きゃあ! 待って! さ、さるっ!」
ふわふわと眼の前で揺れる白い双丘に、猿渡は問答無用で吸いつく。舌を容易にすべらせるきめ細かい肌、口に含んだだけで溶けてしまいそうなほどの柔らかい胸。誘うように色付いた乳首は、すでにコリコリと舌先で転がしやすいようにかたくなっていた。
「あっ! んっ! ひゃあ、ま、あ、やだぁ!」
猿渡は完全に沸騰していた。泣いて嫌がっても、やめるつもりはもうなかった。本気で嫌がっても押さえつけて無理矢理奪ってしまえと、理性なんてとうに捨てていた。
「お前が悪い」
猿渡がかろうじて漏らした言葉は、熱に焼かれたように掠れていた。そしてすぐに乳首へ吸いついて、舌先でしごき上げていく。片手を、揉みしだいていた胸から腰へ、そして曲線をなぞるように下肢へと滑らせてから内腿に潜らせつつ、自分の片膝を押し込むように猫柳の股を開かせた。
必死に抵抗らしきものはしているものの、日々部活で鍛えられた体に敵うはずもなく、猫柳のしなやかな肢体は揺らめいている。
どこをどう探ればいいかもわからないまま猿渡が指を這わせれば、熱いぬかるみにすぐに至る。くちっと粘ついた感触が、指先を蜜穴へと誘う。
「っあ、っく、ん」
ビリビリと感電したかのように震える猫柳の体を、抑え込むように手と唇で胸を愛撫しつつ、蜜穴に指を突き立てていく。
指の付け根まで押し込めばまたねっとりした襞に逆らうように引き抜き、すぐに挿入する。それを飽きずに何度も何度も繰り返すうちに、猫柳の鳴き声は甘さを滲ませてきた。
猿渡は夢中で繰り返していて、気付けばぐちゅぐちゅと指と蜜穴の隙間からトロリとした液が溢れている。愛撫でぶっくりと真っ赤に腫れたふたつの乳首は、涎でテラテラと鈍く光っていた。
雷はいつの間にか遠くのほうで鳴いている。雨足はさきほどよりは激しさを抑えはじめたようだ。
目の前で、白く細い体を震わせている猫柳を、猿渡は喉を鳴らして見あらためて、そしてためらうことなく指を二本揃えて蜜穴へ埋めていく。
「っあ! やあっ!」
瞬発的に跳ね上がった猫柳の軽い体は、それでも逃げる力を失っているのか、すぐに床へ着地した。猿渡は二本の指をゆっくり突き刺しながら、空いた右手で花芽を撫ではじめた。
「きゃっ、やだっ、やだっ」
突然閉じた猫柳の両腿をこじ開けるように自分の足を片脚にひっかけ押さえつけ、さらに強めに花芽を撫でれば、今までにない力強さで猫柳が抵抗する。
「そこ、やなのっ!」
頭側へずり上がり身をよじって逃げようとする猫柳の細い腰を捕まえ、右脚を猫柳の左腿に引っ掛け押さえ込む。左腕で巻き込むように猫柳の右脚を抱え下半身を封じたところで、右手を花芽に持っていきクルクルと指の腹で撫でつけた。
「あっ、あっ、やっ、それだめぇ!」
両手をパタパタと床に叩きつけ悶える猫柳は、猿渡にとってはより興奮させるだけのものだった。
蜜穴へ指を気まぐれに沈ませては、そのぬるつきを纏わせて花芽を撫で付ける。それを繰り返すうちに、猫柳の体が床から反るように硬直していった。
捕まえていた右脚から手を離し、すぐに二本の指を蜜穴へ呑み込ませ、ぐちゅぐちゅと力強く注挿させる。
「っ! んんんっ、ああああ!」
猫柳の腰は浮き上がって、震えたままパタリと力をなくし四肢を伸ばすように床へ着地した。
雨音はだいぶ力をなくしている。やがて嘘のように晴れ間を覗かせるのだろう。
猿渡は自分の半パンとトランクスに指を掛け、立ち上がりざま一気に脱ぎ捨てた。目的のものを探しに勉強机に向かう。
どこに放り投げたか思い出せぬまま、引き出しや缶ケースなどを手当り次第に開けていく。
「…あった…」
見つからなければ、ひょっとしたら僅かにこびり着いた理性を拾い上げることができたかもしれない。
だけど、避妊具は見つかってしまった。以前、部活の先輩が悪ふざけで後輩達のジャージやバッグに突っ込んでいったものだ。
使うなんて思ってもみなかったもの。
ふと振り返れば、くたりと倒れ込んでいる猫柳の淫らな体は茶色い床の上で白く発光でもしてるかのように浮き上がってみえる。仰向けだった体を伏せて起き上がろうと身をよじっていた。
考える間もなく、猿渡は不慣れな手付きで自身の欲棒にスキンをつけた。すぐに猫柳の細い肩を捕まえるように仰向けへ倒し、舌をぬるりと彼女の口内へ押し込む。
「っん! むっ!」
肩から胸へと手のひらを滑らせつつ、脚を使って猫柳の太腿を左右に広げれば、察知したのか彼女はパシパシと猿渡の首元を叩く。
猿渡はその痛みを無視して、焼け付くように疼く肉棒の先を、ぬかるみにあてがった。
くにゅりと簡単に秘溝を滑って、花芽を擦りあげる。
腰に力を込めて押し込もうとしても、焦るばかりですぐに滑ってしまう。
猿渡はしっかり吸いついていた唇を離して上体を起こし、猫柳の太腿を両手で捕まえなおした。
「っまって! さるっ! はやまんないでっ!」
止めようと伸ばしているのかその両腕は、まるで自分を求めているようにしか見えなくて、猿渡は自分でも本当に気が狂ったなと実感しつつ、腰を進ませた。
「ひゃあ!」
しっかり秘裂を確認しながら、亀頭を押し付けた。くっぽと、なんともいえないいやらしい音と、纏わりつくような熱を感じて、猿渡も思わず呻き声を漏らす。
「っあ、やっべ…」
例えようもないほどの快感、衝撃。怖いほどの感覚に一瞬腰を引いてしまった。だけど、亀頭にはりついた熱は溺れる怖さをとかし、焦がれるように疼く。
猿渡は、衝動を抑え込みつつゆっくりと腰を押し付けた。
「あっ、だめぇ、さるっ、あああっ」
熱杭に焼き切れそうな膣の痛みに、猫柳は生理的な涙を浮かべ、かぶりを振った。しかしすぐその動きは止まり息を呑むように硬直させる。少しの振動でさえ引き裂かれそうな痛みに変わってしまうからだ。
「っあ、くっ、やっ」
危険な予感はあった。らしくない猿渡の様子に気付いていながらも、たかをくくっていたのだ。今までのふたりの関係から、大きく逸脱することなんて想像もしていなかったからだ。
だからむしろ、少しくらい女の子として意識してほしいと思っていたほどで。
だけど、この今の現状はとうてい受け入れられるものではなくて。いつもの猿渡なら、本気で嫌がってたら、ちゃんと引いてくれるタイプなのに。彼が彼じゃない別人のようで、怖くなる。
「や、やめてっ、だめだよっ」
自分の脚の間にいる猿渡の表情は、部活の時に見る真剣さとは違う、ギラギラとした眼光で獰猛な獣のようだった。
「痛くして、ごめん。なるべく、気をつけるから」
的外れな謝罪と同時にさらに猿渡のモノが少し押し入ってきた。
「っいっ!」
「ごめん」
猿渡は乳首と花芽を指先でいじりはじめた。硬直して動けない猫柳に、押さえ込むことをやめて少しでも挿入の痛みを散らそうと、指先を器用に使い始める。
「やだっやだっ」
「痛いのやだろ?」
少し腰を揺すれば、くちくちっと水音が漏れる。猫柳がしっかり指先で感じていることにホッとして、猿渡は少しずつ腰の動きを大きくする。亀頭を抜いてはまたぷっつりと蜜穴めがけて押し込む、抜いては押し込む。それをずっと繰り返す。
雨はすでにやんでいて、外は嘘のように静かだ。嵐が去ってしまって、部屋中に充満している喘ぎ声と水音が、耳へ脳へとこぼさず届いてしまう。暗がりが隠していた羞恥も、今は、カーテンの隙間から射し込む太陽光で、ふたりの肌に浮かぶ汗も火照りも、すべて明るみの元にある。
「っは、ひゃあん、はあ、ん」
ゆったりと揺すられ上下に揺らめく猫柳からは、困惑したような嬌声が漏れてきた。
時間がたっぷりあることをいいことに、猿渡は執拗に指先の愛撫と亀頭の注挿を丁寧に続けていた。
「へ、へんになるぅ、んっ」
得体の知れない感覚に猫柳は身を悶えさせる。明らかに痛みが和らいだことと、それを塗りつぶすほどの痺れがお腹の奥にたまってきている。
猿渡の肉棒は半分ほど埋まっていて、少しも止まることなく緩やかに出入りを繰り返して小さな膣をほぐし続けていた。
「んんっ、やっ、もうむりっ、あ、あああ」
明らかに猫柳の反応が変わった。先ほどまで力なくゆるんでいた肢体に力がこもり、再び抜け出そうと身をよじる。
猿渡はすぐに肩を押さえ込んで、それでも花芽からは指を片時も離さずクリクリと指腹で撫で続けた。
「っあ、っあ、っあ」
猿渡のお腹にくっつきそうになるほど猫柳の上体は弓なりにそれて細かく震えはじめた。半分ほどしか挿入していない肉棒が、突然キュウキュウと膣の収縮をくらい、咄嗟にグッと腰を押し付ける。
「っう!」
目の奥に火花が散るような快感に、猿渡は無意識に歯を食いしばる。抑えようにも、ドクドクとした吐精の感覚は止まらなかった。
パタンと軽い体を床に落として、猫柳はヒクヒクと白い太腿を震わせる。被さったままその猫柳の様子をボーッと見つめて、猿渡はまだなお喘ぐ猫柳の唇を塞いだ。
濃厚な水音が部屋を満たしていく。おさまりかけていた呼気がさらに荒んできたところで、慌てたように唇同士が離れた。
起き上がり、ゴムの処理をしながら、内心何度も舌打ちを繰り返す。我慢なんてできるはずがないのだ。これで終わりだなんて、まるで地獄のはじまりではないかと。
もっと絡みたい、もっと奥まで入りたい、何度でも猫柳のすべてを暴きたい。
座ったまま振り返れば、まだ起き上がる元気がないのか、横向きに寝転んだまま猫柳は静かにしていた。
立ち上がり、ベッドからタオルケットを取ってかけてやる。顔を覗き込めば、真っ赤に火照っていてあきらかに艶をはらんだ表情なのに、潤んだ瞳を細めてジトッと睨み返してきていた。
それを見て、猿渡はなんだか嬉しくてニヤリと笑ってしまった。
「腹減ったろ。カップラーメン、食べるか?」
**
翌日の日曜日は部活もなく、猿渡は朝一でコンビニへ買い出しに出かけたあとは、のんびり部屋でだらけていた。ゲームをする気も漫画を読む気も起きなくて、ローテーブルの上のスマホをボンヤリ眺める。
ふいに気配を感じた。意識してなければわからないくらいの、僅かすぎるドアの揺れに、弾かれたように立ち上がり、スマホをベッドに放った。
「はいよ」
引き戸を開ければ、猫柳がこれでもかと睨みつけていた。表情は厳しいが、私服のシャツのふわりとした素材や、半パンから伸びた素足が、猿渡の喉を鳴らせた。
「やったわね、あんた」
「なんのこと?」
すっとぼけて後ろ頭で腕を組めば、猫柳は鼻息荒く詰め寄ってきた。
「私のスマホ! 昨日、隠したでしょ、部屋に!」
「なんだ、忘れもんか」
「バッグに入れてたもんが、勝手に出ていくかー!」
「すげえなお前のスマホ、そんなことできるのか」
「くそザル!」
押しのけて部屋に入ろうとする猫柳をかわして、さっさとサンダルを脱いで部屋に上がるのを見届けてから、引き戸の鍵を締めた。
「ちょっと、どこに隠してんの?」
部屋をキョロキョロと見渡している猫柳の背中にピッタリとくっついた。軽く編み込みされて覗く耳にスッと唇を寄せる。
「ベッド、見てみ」
ヒクリと猫柳の肩が揺れ、ぎこちなく首を動かし息を呑むのがわかった。自分のスマホが置いてある場所の意味を感じ取ったのだろう。
「あれだろ? どーぞ」
「うっ……」
猫柳はかたまる。すぐに動けないのは、あまりにも昨日の出来事が鮮明によみがえってしまうからだ。
むしろ、忘れるなんて無理な話。だからこそ、ここへ来ることをやめなければと言い聞かせていたのに。
意味なんてなく、ただベッドに放って置かれてたのかもしれない。でも、そんなことあるだろうか。わざわざ、そこへ置いてある、と考えるのがやっぱり自然じゃないだろうか、不自然に置かれた自分のスマホが。
猿渡の吐息が、耳に首筋にかかる。その熱にあてられて、クラクラと目眩がする。
「どーする?」
耳をくすぐる掠れた声。背中から感じる体温はすぐそこにある。けど、あえて触れないようにしているのだろう。そのギリギリの隙間が唯一の境界線のように思える。そして、ゆらりと立ちくらんだだけで、その境界線はなくなる。
猫柳は一歩、前に足を進めた。目の前に、猿渡のベッド、そして妙に派手に感じる自分のスマホがある。
もう一歩、進んだ。あとは少し屈んで、乗り出せば手に届く。
境界線を広げたつもりだった。だけど、そうじゃないことも、わかっていた。
片膝をつければ、ギシリとベッドの軋みがやたら耳についた。スマホを手に取った、瞬間に背中に熱と重みが襲ってくる。
スマホは猫柳の手から落ちた。くぐもったふたりの声は、すでにお互いの唇か塞がれているから。
しばらく格闘したベッドの軋み音はおさまり、やがてだらりと猫柳の四肢は力をなくしてしまった。
淫らに崩れたふたりのはじまり。
部屋の南面にある掃き出し窓には、薄手のカーテンが中途半端に引いてあるだけで、遠くの稲光を直接部屋のなかへ招いている。
チカチカするのは、きっとそのせい。
床に押し倒された猫柳の青白い顔も、四つん這いで覆い被さっている高揚した猿渡の顔も、かたまっているのに稲光が時の経過を知らせる。
目眩に似た揺らぎで、猿渡の頭はゆっくりと降ろされていく。息を呑むようにして一度つぐまれた猫柳の小さな唇は、またふわりと無意識に開いた。
落雷と稲光で震えたのか、お互いの肩がビクリと揺れ、映し出されるシルエットは重なっていた。
猿渡の厚い唇に、猫柳の唇は呑み込まれる。一度離されたもののまた塞ぎ、初めての感触に溺れて何度も擦り合わせては吸いついた。
温かく柔らかい感触は、その触れた唇からビリビリと全身へも巡っていく。
もっとほしくて、舌を伸ばしたのはどちらからだったのか。気付けば、お互いの舌を絡ませることに夢中になっていた。
擦り合わせては絡ませて、吸いついては舐め上げて。どんどん深くなり、それでも足りないと、何度も何度も角度を変えてみては重ねて絡ませてと貪っている。
猿渡は両肘を床につけて、猫柳の髪の毛を指に絡ませるように両手に包んで。猫柳の細く白い指先は猿渡の剥き出しの肩に回されていて、時折キュッと力がこもる。
小屋めがけてぶっかけているような雨音が、ふたりの羞恥も、乱れた呼気も掻き消していた。
やがて猿渡の手が、スルリと猫柳の首元を撫で伝って胸の膨らみへとためらいがちにくだっていった。素肌の上にTシャツだけのその部分は、熱さも柔らさかも隠さず伝える。少し指に力を込めただけで、くにゃりと形を手のひらに合わせてくる。かたく尖った乳首が指に引っかかって、猫柳は猿渡の腕のなかで全身を跳ねさせた。
猿渡は両手でシャツごと胸を掬い上げると、そのままむしゃぶりついた。
「やっ、あっ」
解放された猫柳の口から、か弱い呻き声が漏れるも、それはすぐに猿渡から与えられる強い刺激で悲鳴に変わる。
ジュウッと強めに乳首を吸われ、指先でクニクニとすり潰され、シャツの上からとはいえ強烈な刺激がダイレクトに伝わってしまう。
息の荒い猿渡の口から吐き出される熱と湿度を纏った呼気が、さらに欲情を煽って胸の感度を上げてくる。
未知の快感に驚いてジタバタと儚くも抵抗をはじめた猫柳を、猿渡は両腿ではさみ抑えつつ邪魔とばかりにシャツを一気に捲り上げた。
「きゃあ! 待って! さ、さるっ!」
ふわふわと眼の前で揺れる白い双丘に、猿渡は問答無用で吸いつく。舌を容易にすべらせるきめ細かい肌、口に含んだだけで溶けてしまいそうなほどの柔らかい胸。誘うように色付いた乳首は、すでにコリコリと舌先で転がしやすいようにかたくなっていた。
「あっ! んっ! ひゃあ、ま、あ、やだぁ!」
猿渡は完全に沸騰していた。泣いて嫌がっても、やめるつもりはもうなかった。本気で嫌がっても押さえつけて無理矢理奪ってしまえと、理性なんてとうに捨てていた。
「お前が悪い」
猿渡がかろうじて漏らした言葉は、熱に焼かれたように掠れていた。そしてすぐに乳首へ吸いついて、舌先でしごき上げていく。片手を、揉みしだいていた胸から腰へ、そして曲線をなぞるように下肢へと滑らせてから内腿に潜らせつつ、自分の片膝を押し込むように猫柳の股を開かせた。
必死に抵抗らしきものはしているものの、日々部活で鍛えられた体に敵うはずもなく、猫柳のしなやかな肢体は揺らめいている。
どこをどう探ればいいかもわからないまま猿渡が指を這わせれば、熱いぬかるみにすぐに至る。くちっと粘ついた感触が、指先を蜜穴へと誘う。
「っあ、っく、ん」
ビリビリと感電したかのように震える猫柳の体を、抑え込むように手と唇で胸を愛撫しつつ、蜜穴に指を突き立てていく。
指の付け根まで押し込めばまたねっとりした襞に逆らうように引き抜き、すぐに挿入する。それを飽きずに何度も何度も繰り返すうちに、猫柳の鳴き声は甘さを滲ませてきた。
猿渡は夢中で繰り返していて、気付けばぐちゅぐちゅと指と蜜穴の隙間からトロリとした液が溢れている。愛撫でぶっくりと真っ赤に腫れたふたつの乳首は、涎でテラテラと鈍く光っていた。
雷はいつの間にか遠くのほうで鳴いている。雨足はさきほどよりは激しさを抑えはじめたようだ。
目の前で、白く細い体を震わせている猫柳を、猿渡は喉を鳴らして見あらためて、そしてためらうことなく指を二本揃えて蜜穴へ埋めていく。
「っあ! やあっ!」
瞬発的に跳ね上がった猫柳の軽い体は、それでも逃げる力を失っているのか、すぐに床へ着地した。猿渡は二本の指をゆっくり突き刺しながら、空いた右手で花芽を撫ではじめた。
「きゃっ、やだっ、やだっ」
突然閉じた猫柳の両腿をこじ開けるように自分の足を片脚にひっかけ押さえつけ、さらに強めに花芽を撫でれば、今までにない力強さで猫柳が抵抗する。
「そこ、やなのっ!」
頭側へずり上がり身をよじって逃げようとする猫柳の細い腰を捕まえ、右脚を猫柳の左腿に引っ掛け押さえ込む。左腕で巻き込むように猫柳の右脚を抱え下半身を封じたところで、右手を花芽に持っていきクルクルと指の腹で撫でつけた。
「あっ、あっ、やっ、それだめぇ!」
両手をパタパタと床に叩きつけ悶える猫柳は、猿渡にとってはより興奮させるだけのものだった。
蜜穴へ指を気まぐれに沈ませては、そのぬるつきを纏わせて花芽を撫で付ける。それを繰り返すうちに、猫柳の体が床から反るように硬直していった。
捕まえていた右脚から手を離し、すぐに二本の指を蜜穴へ呑み込ませ、ぐちゅぐちゅと力強く注挿させる。
「っ! んんんっ、ああああ!」
猫柳の腰は浮き上がって、震えたままパタリと力をなくし四肢を伸ばすように床へ着地した。
雨音はだいぶ力をなくしている。やがて嘘のように晴れ間を覗かせるのだろう。
猿渡は自分の半パンとトランクスに指を掛け、立ち上がりざま一気に脱ぎ捨てた。目的のものを探しに勉強机に向かう。
どこに放り投げたか思い出せぬまま、引き出しや缶ケースなどを手当り次第に開けていく。
「…あった…」
見つからなければ、ひょっとしたら僅かにこびり着いた理性を拾い上げることができたかもしれない。
だけど、避妊具は見つかってしまった。以前、部活の先輩が悪ふざけで後輩達のジャージやバッグに突っ込んでいったものだ。
使うなんて思ってもみなかったもの。
ふと振り返れば、くたりと倒れ込んでいる猫柳の淫らな体は茶色い床の上で白く発光でもしてるかのように浮き上がってみえる。仰向けだった体を伏せて起き上がろうと身をよじっていた。
考える間もなく、猿渡は不慣れな手付きで自身の欲棒にスキンをつけた。すぐに猫柳の細い肩を捕まえるように仰向けへ倒し、舌をぬるりと彼女の口内へ押し込む。
「っん! むっ!」
肩から胸へと手のひらを滑らせつつ、脚を使って猫柳の太腿を左右に広げれば、察知したのか彼女はパシパシと猿渡の首元を叩く。
猿渡はその痛みを無視して、焼け付くように疼く肉棒の先を、ぬかるみにあてがった。
くにゅりと簡単に秘溝を滑って、花芽を擦りあげる。
腰に力を込めて押し込もうとしても、焦るばかりですぐに滑ってしまう。
猿渡はしっかり吸いついていた唇を離して上体を起こし、猫柳の太腿を両手で捕まえなおした。
「っまって! さるっ! はやまんないでっ!」
止めようと伸ばしているのかその両腕は、まるで自分を求めているようにしか見えなくて、猿渡は自分でも本当に気が狂ったなと実感しつつ、腰を進ませた。
「ひゃあ!」
しっかり秘裂を確認しながら、亀頭を押し付けた。くっぽと、なんともいえないいやらしい音と、纏わりつくような熱を感じて、猿渡も思わず呻き声を漏らす。
「っあ、やっべ…」
例えようもないほどの快感、衝撃。怖いほどの感覚に一瞬腰を引いてしまった。だけど、亀頭にはりついた熱は溺れる怖さをとかし、焦がれるように疼く。
猿渡は、衝動を抑え込みつつゆっくりと腰を押し付けた。
「あっ、だめぇ、さるっ、あああっ」
熱杭に焼き切れそうな膣の痛みに、猫柳は生理的な涙を浮かべ、かぶりを振った。しかしすぐその動きは止まり息を呑むように硬直させる。少しの振動でさえ引き裂かれそうな痛みに変わってしまうからだ。
「っあ、くっ、やっ」
危険な予感はあった。らしくない猿渡の様子に気付いていながらも、たかをくくっていたのだ。今までのふたりの関係から、大きく逸脱することなんて想像もしていなかったからだ。
だからむしろ、少しくらい女の子として意識してほしいと思っていたほどで。
だけど、この今の現状はとうてい受け入れられるものではなくて。いつもの猿渡なら、本気で嫌がってたら、ちゃんと引いてくれるタイプなのに。彼が彼じゃない別人のようで、怖くなる。
「や、やめてっ、だめだよっ」
自分の脚の間にいる猿渡の表情は、部活の時に見る真剣さとは違う、ギラギラとした眼光で獰猛な獣のようだった。
「痛くして、ごめん。なるべく、気をつけるから」
的外れな謝罪と同時にさらに猿渡のモノが少し押し入ってきた。
「っいっ!」
「ごめん」
猿渡は乳首と花芽を指先でいじりはじめた。硬直して動けない猫柳に、押さえ込むことをやめて少しでも挿入の痛みを散らそうと、指先を器用に使い始める。
「やだっやだっ」
「痛いのやだろ?」
少し腰を揺すれば、くちくちっと水音が漏れる。猫柳がしっかり指先で感じていることにホッとして、猿渡は少しずつ腰の動きを大きくする。亀頭を抜いてはまたぷっつりと蜜穴めがけて押し込む、抜いては押し込む。それをずっと繰り返す。
雨はすでにやんでいて、外は嘘のように静かだ。嵐が去ってしまって、部屋中に充満している喘ぎ声と水音が、耳へ脳へとこぼさず届いてしまう。暗がりが隠していた羞恥も、今は、カーテンの隙間から射し込む太陽光で、ふたりの肌に浮かぶ汗も火照りも、すべて明るみの元にある。
「っは、ひゃあん、はあ、ん」
ゆったりと揺すられ上下に揺らめく猫柳からは、困惑したような嬌声が漏れてきた。
時間がたっぷりあることをいいことに、猿渡は執拗に指先の愛撫と亀頭の注挿を丁寧に続けていた。
「へ、へんになるぅ、んっ」
得体の知れない感覚に猫柳は身を悶えさせる。明らかに痛みが和らいだことと、それを塗りつぶすほどの痺れがお腹の奥にたまってきている。
猿渡の肉棒は半分ほど埋まっていて、少しも止まることなく緩やかに出入りを繰り返して小さな膣をほぐし続けていた。
「んんっ、やっ、もうむりっ、あ、あああ」
明らかに猫柳の反応が変わった。先ほどまで力なくゆるんでいた肢体に力がこもり、再び抜け出そうと身をよじる。
猿渡はすぐに肩を押さえ込んで、それでも花芽からは指を片時も離さずクリクリと指腹で撫で続けた。
「っあ、っあ、っあ」
猿渡のお腹にくっつきそうになるほど猫柳の上体は弓なりにそれて細かく震えはじめた。半分ほどしか挿入していない肉棒が、突然キュウキュウと膣の収縮をくらい、咄嗟にグッと腰を押し付ける。
「っう!」
目の奥に火花が散るような快感に、猿渡は無意識に歯を食いしばる。抑えようにも、ドクドクとした吐精の感覚は止まらなかった。
パタンと軽い体を床に落として、猫柳はヒクヒクと白い太腿を震わせる。被さったままその猫柳の様子をボーッと見つめて、猿渡はまだなお喘ぐ猫柳の唇を塞いだ。
濃厚な水音が部屋を満たしていく。おさまりかけていた呼気がさらに荒んできたところで、慌てたように唇同士が離れた。
起き上がり、ゴムの処理をしながら、内心何度も舌打ちを繰り返す。我慢なんてできるはずがないのだ。これで終わりだなんて、まるで地獄のはじまりではないかと。
もっと絡みたい、もっと奥まで入りたい、何度でも猫柳のすべてを暴きたい。
座ったまま振り返れば、まだ起き上がる元気がないのか、横向きに寝転んだまま猫柳は静かにしていた。
立ち上がり、ベッドからタオルケットを取ってかけてやる。顔を覗き込めば、真っ赤に火照っていてあきらかに艶をはらんだ表情なのに、潤んだ瞳を細めてジトッと睨み返してきていた。
それを見て、猿渡はなんだか嬉しくてニヤリと笑ってしまった。
「腹減ったろ。カップラーメン、食べるか?」
**
翌日の日曜日は部活もなく、猿渡は朝一でコンビニへ買い出しに出かけたあとは、のんびり部屋でだらけていた。ゲームをする気も漫画を読む気も起きなくて、ローテーブルの上のスマホをボンヤリ眺める。
ふいに気配を感じた。意識してなければわからないくらいの、僅かすぎるドアの揺れに、弾かれたように立ち上がり、スマホをベッドに放った。
「はいよ」
引き戸を開ければ、猫柳がこれでもかと睨みつけていた。表情は厳しいが、私服のシャツのふわりとした素材や、半パンから伸びた素足が、猿渡の喉を鳴らせた。
「やったわね、あんた」
「なんのこと?」
すっとぼけて後ろ頭で腕を組めば、猫柳は鼻息荒く詰め寄ってきた。
「私のスマホ! 昨日、隠したでしょ、部屋に!」
「なんだ、忘れもんか」
「バッグに入れてたもんが、勝手に出ていくかー!」
「すげえなお前のスマホ、そんなことできるのか」
「くそザル!」
押しのけて部屋に入ろうとする猫柳をかわして、さっさとサンダルを脱いで部屋に上がるのを見届けてから、引き戸の鍵を締めた。
「ちょっと、どこに隠してんの?」
部屋をキョロキョロと見渡している猫柳の背中にピッタリとくっついた。軽く編み込みされて覗く耳にスッと唇を寄せる。
「ベッド、見てみ」
ヒクリと猫柳の肩が揺れ、ぎこちなく首を動かし息を呑むのがわかった。自分のスマホが置いてある場所の意味を感じ取ったのだろう。
「あれだろ? どーぞ」
「うっ……」
猫柳はかたまる。すぐに動けないのは、あまりにも昨日の出来事が鮮明によみがえってしまうからだ。
むしろ、忘れるなんて無理な話。だからこそ、ここへ来ることをやめなければと言い聞かせていたのに。
意味なんてなく、ただベッドに放って置かれてたのかもしれない。でも、そんなことあるだろうか。わざわざ、そこへ置いてある、と考えるのがやっぱり自然じゃないだろうか、不自然に置かれた自分のスマホが。
猿渡の吐息が、耳に首筋にかかる。その熱にあてられて、クラクラと目眩がする。
「どーする?」
耳をくすぐる掠れた声。背中から感じる体温はすぐそこにある。けど、あえて触れないようにしているのだろう。そのギリギリの隙間が唯一の境界線のように思える。そして、ゆらりと立ちくらんだだけで、その境界線はなくなる。
猫柳は一歩、前に足を進めた。目の前に、猿渡のベッド、そして妙に派手に感じる自分のスマホがある。
もう一歩、進んだ。あとは少し屈んで、乗り出せば手に届く。
境界線を広げたつもりだった。だけど、そうじゃないことも、わかっていた。
片膝をつければ、ギシリとベッドの軋みがやたら耳についた。スマホを手に取った、瞬間に背中に熱と重みが襲ってくる。
スマホは猫柳の手から落ちた。くぐもったふたりの声は、すでにお互いの唇か塞がれているから。
しばらく格闘したベッドの軋み音はおさまり、やがてだらりと猫柳の四肢は力をなくしてしまった。
淫らに崩れたふたりのはじまり。
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