京に忍んで

犬野花子

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第二章

染められる

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 忠明の下について表面上、殿上童として仕事を回ると、益々謎な男であると、タキは思わずにはいられなかった。

 左近衛府に所属する左近衛中将という肩書きと聞いたことがあるが、基本的には東宮にへばりついているのである。ほとんど東宮専属の護衛、随身のようであった。
 その為か二人の会話を聞いていても、上下関係があやふやになるほど親しいものであった。

 それでもずっと東宮の傍にだけいる訳でもなく、あちこちよく動き回る。

 近衛府は左近右近と役所処が中央諸省庁の配置されている大内裏内の左右に分かれて置かれているが、さらにその大内裏の中心部分にあたる帝の住まう御殿や後宮のある内裏の、宣陽門・承明門・陰明門・玄輝門の東西南北の門の内側を分担して警備している。

 忠明についていき、文子の女房として入内してから初めて内裏の外へ出て、その左近衛府に行った時など、控えていた少将達に次々指示を出していた。

 帝が住まう内裏へ入って来る者に不審な者がいないか、出入りの数が合うか、またどこの門から入ってどこの門から出て行ったかなど細かく精査して、これを内裏外の門を管轄する衛門府と照合したりするのだ。

 恐ろしいほどの書状の山を眉ひとつ動かさず捌き、語気も荒立てることなく常に冷静に指示を出し続け、涼やかな佇まいでいる忠明という男を、皆はとても尊敬しているようであった。
 口々に「君は羨ましいね、忠明様の元で勉強出来るなんて。仕事熱心で東宮の覚えもめでたく、あんな綺麗な人なのにお戯れすることもなく、本当に完璧なお方なんだよ」と、ありがた迷惑なほど吹き込まれる。
 お戯れされまくってるタキとしてはそこは違うと教えてあげたいが、確かに仕事は真面目で手抜きをするという考えも持ち合わせていないようだ。
 そんな調子なので、中には忠明をこっそり頬を染めながら見つめる者もいて、タキはやっぱり「守備範囲は男なのでは」と疑念を持った。

 そう思わざるを得ないほど、ここは男社会なのだ。
 そうでなくても東宮と忠明の回りに女の気配がない、むしろ排除しているほどに感じる。
 あるとしたらただひとり、以前タキに化粧をほどこしてくれた弘徽殿女御のあの女房、小萩だけだ。

 だからこそ、そういうモノが生まれてもおかしくない環境であるのではと、タキは思った。
 実際にタキ自身も何人かに同僚や配下に接してるのとは違う甘い雰囲気を持って声をかけられることがあった。
 女であることがバレたのかと冷や汗が出ることも。彼らは男だと思って声をかけたのだろうが。
 とにかく速やかに忠明がその場を上手く補ってくれて、怪しげなことにはならずにすんでいるが。


 仕事を終わらせ、いつものように二人の局に戻ってきて、身支度を整え、小袖姿になり身体を横たえると、これもまたいつものように後ろから抱きしめて右腕をタキの首と床の隙間に差し込み枕とする。そして左手首を握られ、首筋や耳元、頬から唇へと舌先を這わせてくちゅりと口内を味わってから寝つく、というもはや慣例になっている儀式を終える。

 忠明が寝息を立てる前に、タキは後方の男に声をかけた。

「忠明様は、男性とは、お付き合いされたことあるのですか?」
 忠明の小さな笑い声が頭に響く。
「ふふっ、それではまるで、女性とはお付き合いしたことがない、というように聞こえるけれど」
「あるのですか?」
「さあ。どうでしょう」
「女性よりも男性のほうがよろしいのですか?」
「あなたはさきほどから何を言っているの? 面白い子ですね相変わらず」
「皆さんが、忠明様の浮いた話を聞いたことがないとおっしゃるもので」
「ああ。それで言うのなら、女性はあまり得意ではないですね。かと言って男性を相手になんて考えたこともありませんが」
「そうなんですか……」

 タキは一旦口を閉じ、自然な流れを装って続けた。
「では、東宮様もそうなのですか? もともと妃を娶るつもりもなかったとか?」
「文子殿の件については誠に申し訳ないと思っています。帝が勝手に話を進めていたようで。ですが、東宮は別に女性が苦手とかではありませんよ」
「帝様はやはり、お世継ぎを望まれて、ということでしょうか?」
「それはそうだろうね。だけど今はその時ではないと思っている」
「それはなぜです?」

 ふいに忠明の気配が止まって、上から覗き込むように上体を起こした。
「……随分、興味があるのですね?」
「……そうですか?」
「情報収集ですか?」

 タキはヒヤリとしたが、顔には出さずにすんでいた。だが、

 スルスルと左手首を握っていた忠明の手が腕をつたい肩から背中、そこから下って撫でるように脇下を通って左乳房を小袖の上から掴んだ。
「早鐘のようですね……」

 さすがにしんの音までは抑えることができない。
「情報収集って、なんですか」
「ふふ、いいですよ今は。焦っていませんから」

 何故か不安が広がった。
 手の内を読まれているのか、転がされているのか。
 すでに自分のことなど全てお見通しなのかもしれない。

 それでも、タキは他のやりようを知らないのだから、ここにしがみついてでもいるしかない。

「おや、肝を冷やしましたか? そんなつもりで言ったのではないですが」
 忠明は白々しくそう言って、さきほどから揉みほぐすように撫でていた手を止め、指先でぎゅっと小袖の下からでも主張しだした頂きを摘まむ。
「うっ」

 それを合図のように右腕が小袖の合わせ目から侵入してくる。左手は小袖上から胸を尖らせるように鷲掴むと右手の指腹で直に先端をクニクニとしごき始める。
「あっ……ふ」

「そういえば」
 忠明は手をいやらしく動かしながら、いつもの低く落ち着いた声で言葉を紡ぐ。
「滝丸は評判ですよ。美少年が入ってきたと、若い者が喜んでいる」

 先端を摘まんだまま親指と中指の腹でしごかれ引っ張りあげられる。左手は下降していき、裾はまくりあげられて足の間にたどり着く。

「毎日、声をかけられてますね。わたしの仕事増やす気ですか?」
「そ、そんなつもり……うっ……つもりはない、ですっ」

 いきなり指を蜜穴に差し込まれ、擦れるように引っ張られた感触に疼きが広がる。指はすぐに抜き取られ、奥の蜜で濡らしたその指先で、芽をすべらせるようにこねる。

「ああっ!」
「もっと自覚を持ちなさい。似合いすぎてるんです童姿。そういうモノが好きな者もいますよ、たくさん」

 胸の先端は弄られすぎてヒリヒリとした快感を与えられ続け、下は親指で芽を擦りながら中指で蜜穴の浅い部分をかき混ぜる。

「たっ、忠明さまっ……」
「悪い子だね。すぐにこんなになって……」

 タキは怖くなった。尋常ではないほど身体が疼いている。いつも弄られるだけ弄っておいて放置される為、またその仕打ちが待っているのかと、どんどん自分がこのことについて貪欲に塗り替えられているような気がして怖かった。先ほどから「欲しい欲しい」と身体が悲鳴をあげている。

 案の定、何度も手だけで絶頂を与えられ続け、くたりと力なくタキは横たわったまま肩で息を吐く。

 忠明はそんなタキを見つめたまま立ち上がると、腰紐をほどいてパサリと自分の小袖を落とした。
 その音にピクリと反応して、呆けた顔をタキはゆるゆると上げたが、忠明の姿を確認する前に、後ろから温かい大きな両手が腰を持ち、蜜穴ににゅちっと、あてがわれる。
「え……」
「少し苛めすぎたかな。もしこれが欲しいなら、自分で奪いなさい」

 見えなくてもあてがわれているものがなんなのかはタキにはわかった。しかし、忠明自身は動こうとしない、動く気もないのか。

(……そ、そんな……)

 行為は今まで何度となく経験しているが、自分から動くなんてしたこともないし考えたこともない。
 だけれども自分の身体全身が、その場所から広がるであろう甘美かんびを想像して震えるのだ。

「ほら、滝丸。まず、腕を床に突っぱねて」

 なぜわざとその名で呼ぶのだと言い返したいが、それすら放棄してゆるゆると言われた通りに腕に力を入れ、四つん這いの姿勢をとる。
「そうだ。そのまま少し体ごと後ろに押し付けてごらん」
 タキは抵抗もせず、赤らめた顔に眉根をよせ、自分の体に力を入れる。
 くにゅっ、と忠明の先端が入りかけてその大きさと滑りですぐに出てしまう。
「はぁんっ」
「もう少し力を入れてごらん。無理かな?」

 再び力を入れ、押し付けるように腰を後退させようと腕を突っぱねるが、先ほどと同じように反発して出てしまう。

 タキは我慢できずに、もういっそ貫いてすぐに、と叫びたくなっていた。

「難しい?」
 嫌になるほど優しい声色に、ゾクゾクとしてコクリと頷くと、忠明は少しばかり先端を沈める。
「ああああ」
 ビクビクとそれだけで全身が粟立ち、あり得ないほど歓喜に震える。
「これで、難しい部分は入れたけど、出来るかな?」
 忠明の声もいつになく揺れていて、それだけでタキはたまらなかった。
 また腕に力を入れるが、もはや全身がゆるゆるに溶かされたように惚けていて、少しも入らない。

 忠明は膝立ちを止めそこへそのまま座り、タキの腰を引っ張りこんだ。
「それじゃあ体をこのまま起こしなさい。できるね?」
 タキは、一旦離れた肉棒の先端を蜜穴に感じて、ビクリと震えつつ、ゆっくり体を起こした。
 忠明の大きな手のひらが腰をガッシリと捕まえたまま、その位置を保っている。

 背中を向けたままようやっと膝立ちで股がるタキに、忠明は変わらず優しく声をかける。
「好きにしていいですよ、滝丸が欲しがるだけ」
 腰を持つ手の力が緩む。すぐに太い先端が先ほどとは嘘のように埋まっていき、タキはあまりの充足感に生理的な涙が溢れる。
「あああっ……」

 中を埋め尽くす存在感を味わうかのようにひっきりなしに蠢く襞に、さすがに忠明も眉根を寄せて堪えていた。
 腰を支えていた手をスルスルと上に這わせて、かろうじて肘辺りでもたついて残るはだけた小袖から剥かれ出ている乳房をやさしく揉む。そして尖らせて収まることのないその先端を指先で引っ掻くと、面白いほどにタキの身体もナカも反応する。

「……困りましたね……」

 ほとんど意識なくぐったりしてしまっているタキをゆっくり前に倒し寝かせると、一度最奥まで埋めてからゆっくりと肉棒を引き抜き、タキの体に重ね袿をかけてやった。




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