12 / 13
第12話 偽装とは
しおりを挟む
羽依の自撮りを見せられて、頭がパニック状態だった。
あんな挑発されたら、男子高校生としては試されてるとしか思えない。
でも、俺の役目は“守ること”だ。
大丈夫。俺はブレない――はず。
あれこれ考えているうちに、お風呂が沸いた。
「羽依、お風呂沸いたからさ、お先にどうぞ。一緒には入らないよ?」
昨日と同じことを言われる前に、先に釘を刺しておいた。羽依はちょっと口を尖らせて「いってきま~す」と風呂場に入っていった。
ようやく一人になったので、少し考えをまとめよう。
羽依の本心がイマイチよくわからない。強烈なアピールをしてくるが、昨日今日の言動は、俺のこと嫌いじゃ無いのは十分伝わってくる。むしろ……好きって思ってそう?
それとも、偽装カップルのお礼のつもりとか……いや、そんなことするはずないよね?
羽依は嫌なことは嫌とはっきり言えると思う。一昨日のような襲ってくるような告白は稀にしろ、強引な告白とかは今までもあっただろう。
でも折れることなく誰とも付き合ってない。
気の弱い子だったら案外折れてしまうのはよくある話だ。みんなそれを分かっていて強引に告白するものだとは思う。女の子を自分と同じ人間だと思わないタイプの人間だ。
それにしたって、わずか1ヶ月で10件も告白とか異常だろう。可愛いだけでなく、他に何か理由があるんだろうか。
難関進学校で、そんなに色恋沙汰に一生懸命な人が多いのは正直意外だった。まあスポーツ推薦枠もあるから、全員がガリ勉タイプってわけでもない。肉食男子も一定数存在している。
羽依を守るために始めた偽装カップル。告白が収まるかは分からないけど、断る説得力はかなり増すだろう。
どんなやつでも恋人が居ると言えば、それ以上無理強いは出来ないだろう。それでも強引にくるやつは、ただのならず者だ。影の親衛隊(笑)に粛清されるだろう。
もっとも偽装を持ちかけた俺が羽依に告白したりするのは……それこそ本末転倒か。近づいたけど、遠くもなってしまったような微妙な関係。
ああ~もうちょっと距離を置いてくれたら、こんなに心がざわつくことがなかったのに。でもデートはすっごく楽しかった。
この学校に入って楽しいことって、今のところ羽依と話する時ぐらいなんだよな。
羽依は以前から、ちょっと距離が近いなとは思っていた。他の男子には距離をとるのに、俺にはかなり近づいてくる。まあ男と思われてなかったって、自分でそう決めつけてたけど、実際はそうでもなかったらしい?
ん? てことは、前から俺のこと少なからず好意を持ってた?
自分に自信が全く持ててないから、羽依の気持ちに気付けなかったのかな……。
「お風呂いただきました~。蒼真、次どうぞ~」
風呂上がりの羽依は、昨日と同じパジャマ姿だ。そして昨日と同じくどう見ても、下に何も着けてないっぽい……。今朝のことを思い出し、頭がくらっとする。もうちょっと危機感持ってほしいなあ。
「――お風呂いってくるね~」
風呂に入り髪を洗い、体を洗う。ヒゲはそんなに濃くないけど、一応剃っておこう。
鏡に映った自分の体を見て、思わずため息が出た。我ながら貧弱な体だなと。身長は170cm。なかなかつかない筋肉。野暮ったい前髪。羽依は『美容室でビシッと決めたらモテそう』と言ってくれたけど、ほんとにそうなるのかな?
変われるなら変わりたい。本当の意味で、羽依の隣に立てるような自分になりたいな。
風呂場を出ると、羽依はベッドに入っていた。
「蒼真、今日も一緒に寝よう。少し話したいの」
「え、あ、うん……」
そう切り出されてしまっては、何とも断りづらい。先手取られた感があるなあ。
しっかり歯を磨き、寝支度をすませてベッドに入る。羽依の温もりと、シャンプーの香りがたまらない。同じもの使ってるはずなのに、どうしてこんなにいい匂いなんだろう。
「――今日はありがとうね蒼真。さっきも言ったけど、私、はしゃぎすぎてたよね」
「楽しめたならよかったよ。俺も高校入って今日が一番楽しかった。いや、思い出してもこんなに楽しい日は初めてかも」
俺の言葉に羽依はくすっと笑う。お互い布団の中で向き合って話している。羽依の琥珀色の瞳がまっすぐに俺を見ている。
「蒼真が偽装の話出してくれた時、嬉しかったんだけどね、ちょっとだけ寂しいって気持ちにもなったんだ。」
「――そうなの?」
羽依の言葉に心臓が激しくなる。息が吸いづらい……。もしかして……俺は……。
羽依が少し視線をずらし、話を続ける。
「蒼真は私に偽装だからって遠慮しなくて良いんだよ。私のこと恋人のように接しても良いし、……蒼真に好きな人ができたら、この関係はその時まで、でいいよ」
最後の方は声がか細く聞き取りづらかったが、意味はよくわかった。
「――偽装って難しそうだね。接し方がよくわかんないや」
「うん、私もそう思ったの。でも、したいことをしないのも何か違うかなって。だから今日は蒼真に甘えてみたの。私もすっごく楽しかった。蒼真も楽しいって思ってくれたの嬉しい」
羽依がそう言って、俺の額にそっと自分のおでこを当ててくる。この距離感はまるで恋人のようだった。
羽依はくすっと笑って俺の手を握り、「寝よっか」と言ってきた。
布団の暖かさと羽依の感触。高鳴っていた心臓も穏やかになっていき、睡魔が襲ってくる。限界が近い。
「おやすみ羽依。また寝相悪かったら遠慮なくひっぱたいてね――」
「おやすみ蒼真。蒼真なら悪気がないの分かってるから良いんだよ――」
――未明。
なにやら、体にふわりとした重みがかかっている。瞼は重く、目は開けてないが、意識がほんのりと浮上する。
――羽依の吐息がかかってくる。
「蒼真……」
俺の名前をつぶやく羽依。熱い吐息を当てながら俺の頬や首筋に柔らかい感触を残している……。
俺は起きることも出来ず、されるがままだ。
「……。」
ある程度のところで満足したんだろうか。羽依は隣でまた寝息を立て始めた。
……夢か現かも曖昧なまま、意識はふわりと沈んでいった。
あんな挑発されたら、男子高校生としては試されてるとしか思えない。
でも、俺の役目は“守ること”だ。
大丈夫。俺はブレない――はず。
あれこれ考えているうちに、お風呂が沸いた。
「羽依、お風呂沸いたからさ、お先にどうぞ。一緒には入らないよ?」
昨日と同じことを言われる前に、先に釘を刺しておいた。羽依はちょっと口を尖らせて「いってきま~す」と風呂場に入っていった。
ようやく一人になったので、少し考えをまとめよう。
羽依の本心がイマイチよくわからない。強烈なアピールをしてくるが、昨日今日の言動は、俺のこと嫌いじゃ無いのは十分伝わってくる。むしろ……好きって思ってそう?
それとも、偽装カップルのお礼のつもりとか……いや、そんなことするはずないよね?
羽依は嫌なことは嫌とはっきり言えると思う。一昨日のような襲ってくるような告白は稀にしろ、強引な告白とかは今までもあっただろう。
でも折れることなく誰とも付き合ってない。
気の弱い子だったら案外折れてしまうのはよくある話だ。みんなそれを分かっていて強引に告白するものだとは思う。女の子を自分と同じ人間だと思わないタイプの人間だ。
それにしたって、わずか1ヶ月で10件も告白とか異常だろう。可愛いだけでなく、他に何か理由があるんだろうか。
難関進学校で、そんなに色恋沙汰に一生懸命な人が多いのは正直意外だった。まあスポーツ推薦枠もあるから、全員がガリ勉タイプってわけでもない。肉食男子も一定数存在している。
羽依を守るために始めた偽装カップル。告白が収まるかは分からないけど、断る説得力はかなり増すだろう。
どんなやつでも恋人が居ると言えば、それ以上無理強いは出来ないだろう。それでも強引にくるやつは、ただのならず者だ。影の親衛隊(笑)に粛清されるだろう。
もっとも偽装を持ちかけた俺が羽依に告白したりするのは……それこそ本末転倒か。近づいたけど、遠くもなってしまったような微妙な関係。
ああ~もうちょっと距離を置いてくれたら、こんなに心がざわつくことがなかったのに。でもデートはすっごく楽しかった。
この学校に入って楽しいことって、今のところ羽依と話する時ぐらいなんだよな。
羽依は以前から、ちょっと距離が近いなとは思っていた。他の男子には距離をとるのに、俺にはかなり近づいてくる。まあ男と思われてなかったって、自分でそう決めつけてたけど、実際はそうでもなかったらしい?
ん? てことは、前から俺のこと少なからず好意を持ってた?
自分に自信が全く持ててないから、羽依の気持ちに気付けなかったのかな……。
「お風呂いただきました~。蒼真、次どうぞ~」
風呂上がりの羽依は、昨日と同じパジャマ姿だ。そして昨日と同じくどう見ても、下に何も着けてないっぽい……。今朝のことを思い出し、頭がくらっとする。もうちょっと危機感持ってほしいなあ。
「――お風呂いってくるね~」
風呂に入り髪を洗い、体を洗う。ヒゲはそんなに濃くないけど、一応剃っておこう。
鏡に映った自分の体を見て、思わずため息が出た。我ながら貧弱な体だなと。身長は170cm。なかなかつかない筋肉。野暮ったい前髪。羽依は『美容室でビシッと決めたらモテそう』と言ってくれたけど、ほんとにそうなるのかな?
変われるなら変わりたい。本当の意味で、羽依の隣に立てるような自分になりたいな。
風呂場を出ると、羽依はベッドに入っていた。
「蒼真、今日も一緒に寝よう。少し話したいの」
「え、あ、うん……」
そう切り出されてしまっては、何とも断りづらい。先手取られた感があるなあ。
しっかり歯を磨き、寝支度をすませてベッドに入る。羽依の温もりと、シャンプーの香りがたまらない。同じもの使ってるはずなのに、どうしてこんなにいい匂いなんだろう。
「――今日はありがとうね蒼真。さっきも言ったけど、私、はしゃぎすぎてたよね」
「楽しめたならよかったよ。俺も高校入って今日が一番楽しかった。いや、思い出してもこんなに楽しい日は初めてかも」
俺の言葉に羽依はくすっと笑う。お互い布団の中で向き合って話している。羽依の琥珀色の瞳がまっすぐに俺を見ている。
「蒼真が偽装の話出してくれた時、嬉しかったんだけどね、ちょっとだけ寂しいって気持ちにもなったんだ。」
「――そうなの?」
羽依の言葉に心臓が激しくなる。息が吸いづらい……。もしかして……俺は……。
羽依が少し視線をずらし、話を続ける。
「蒼真は私に偽装だからって遠慮しなくて良いんだよ。私のこと恋人のように接しても良いし、……蒼真に好きな人ができたら、この関係はその時まで、でいいよ」
最後の方は声がか細く聞き取りづらかったが、意味はよくわかった。
「――偽装って難しそうだね。接し方がよくわかんないや」
「うん、私もそう思ったの。でも、したいことをしないのも何か違うかなって。だから今日は蒼真に甘えてみたの。私もすっごく楽しかった。蒼真も楽しいって思ってくれたの嬉しい」
羽依がそう言って、俺の額にそっと自分のおでこを当ててくる。この距離感はまるで恋人のようだった。
羽依はくすっと笑って俺の手を握り、「寝よっか」と言ってきた。
布団の暖かさと羽依の感触。高鳴っていた心臓も穏やかになっていき、睡魔が襲ってくる。限界が近い。
「おやすみ羽依。また寝相悪かったら遠慮なくひっぱたいてね――」
「おやすみ蒼真。蒼真なら悪気がないの分かってるから良いんだよ――」
――未明。
なにやら、体にふわりとした重みがかかっている。瞼は重く、目は開けてないが、意識がほんのりと浮上する。
――羽依の吐息がかかってくる。
「蒼真……」
俺の名前をつぶやく羽依。熱い吐息を当てながら俺の頬や首筋に柔らかい感触を残している……。
俺は起きることも出来ず、されるがままだ。
「……。」
ある程度のところで満足したんだろうか。羽依は隣でまた寝息を立て始めた。
……夢か現かも曖昧なまま、意識はふわりと沈んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
半世紀の契約
篠原皐月
恋愛
それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。
一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる