支配するなにか

結城時朗

文字の大きさ
8 / 19
第一章

変わり果てた姿

しおりを挟む
しばらくして目が覚める堀。
体の自由が封じられている。
タオルで猿轡さるぐつわをされている堀。
ソファーには、足を組んで深く座り、自分の髪を指でくるくると絡めている麻衣の姿(カイのまま)。
目が覚めたことに気づくカイ。

カイ「目覚めたんだ。  縛ってみたもののホントに死んでたらどうしようかと思った。」
堀「ふんはははほ!(アンタ誰よ!)」
カイ「何?聞こえねぇだけど!」

近づくカイ。
猿轡さるぐつわを口からずらす。
しゃがみ込むカイ

堀「麻衣さんはどこ?」
カイ「麻衣はここだよ!  まぁ眠ってるけどな」
堀「訳わかんない!」
カイ「お前分かってんだろ?」
堀「何のこと?」

顎を掴んで、眉間にシワを寄せ

カイ「お前さ、俺が別人格っていうのを分かってやってきたんだろ?」
堀「何が言いたいの」
カイ「だから、ここに連絡したんだろ?」

携帯と名刺を見せる
名刺には、警視庁湾岸署刑事部捜査一課 田頭の文字

ーーーーー事情聴取の終わり・部屋の前の廊下ーーーーー

〇〇と田頭が部屋から出てくる

堀「刑事さん!」
〇〇「あぁー、さっきの」
堀「堀です」
〇〇「堀さん、何か思い出しましたか?」
堀「思い出してないんですけど、もしもの時のために、名刺もらっても良いですか?」
〇〇「良いですよ」

名刺入れを上着の 胸ポケットから出す。

〇〇「改めて、西田です」
田頭「田頭です」
堀「ありがとうございます!  また何かあったら連絡しますね!」

ーーーーー麻衣の部屋ーーーーー

堀「触らないで!」
カイ「別にお前のなんて興味無いけど、運の無さは分かったよ。お前がかけるべき相手は、もう1人の方だな!」
堀「はっ?」
カイ「あの田頭ってやつ、アイツ仕事出来ないぞ!  もう1人の西田ってやつに会った時、危うくバレるかと思ったからなー」
堀「だから何!  私をどうする気?」
カイ「モノによっては生かすかなー」
堀「私なんかどうだっていい!でも・・・でも・・・」
カイ「でも?」
堀「麻衣さんを返して!」
カイ「だから、麻衣は俺で、俺は麻衣でもある」
堀「麻衣さんはアンタなんかとは違う・・・」
カイ「だからしつけーな!」
堀「早く麻衣さんから出ていってよ!麻衣さんを返してよ!」

目に涙を浮かべる

カイ「うっせーなー!」

腹を蹴りあげるカイ
咳き込む堀

カイ「決めた。  お前もあの男とと一緒の目に遭ってもらうわ!」
堀「何する気よ!」
カイ「苦しんで死ぬか、一瞬で死ぬかどっちが良い?」
堀「・・・・・・」
カイ「なんか言えや!」

堀を何度も踏みつける

堀「痛い!やめて!」 
堀M「麻衣さん、帰ってきて!麻衣さん!」

拘束されているために、ガードが出来ずにいる

カイ「ふざけた真似しやがって!」

強烈に、腹部を踏みつけると共に、骨が折れる音が響く
その一撃により、堀は内臓破裂を起こし、意識が無くなっていく堀。
それでも執拗に蹴り続ける。
カイは頭に血が上りすぎたのか、ふと我に返る
気がつくと堀の意識が無かった。
カイは、数回、頬を叩く

カイ「おい! 起きろって!まだ終わってねぇぞ!」

目を開けない堀
口からは、血を流している

カイ「(舌打ちをする)後で、捨てに行くか!」

ソファーに寝転ぶカイ。
どんどんと意識が遠のいていく。
ゆっくりと目を瞑る。
また、ゆっくりと目を開ける。
今度はカイではなく、本来の麻衣として目が覚める。
目だけで周りを見渡す、誰もいないと感じ、ゆっくりと上体を起こす。
奥で倒れている堀を見つける。
目を見開いて驚き、駆け寄る麻衣

麻衣「堀ちゃん?  堀ちゃん?  起きて!  目を覚まして?」

結ばれている
堀の手を握る麻衣。

麻衣M「何度も呼びかけた。  堀ちゃんはイタズラが好きだったから何かのドッキリかとも思った。  だけど、ピクリとも動かない堀ちゃん。生暖かかった体も次第に冷たくなっていった」

動かない堀を背中から抱きしめ、謝りながら泣く麻衣

麻衣「(泣きながら)ごめんね堀ちゃん!  堀ちゃん!ごめんね!」
麻衣M「堀ちゃんをいつまでも抱きしめ続けた」

堀をおんぶして、家を出る。

ーーーーー近くの公園・夜ーーーーー

公園のベンチに2人で座る。
堀にもたれ掛かり、話しかける

麻衣「堀ちゃん、こんな事に巻き込んで本当にごめんね。
先にそっちで待っててね。  私も直ぐに追いかけるから・・・
もう1人と決着をつけるから!」

何も答えない堀
立ち上がり、その場を後にする麻衣

ーーーーー公園・朝ーーーーー

次の朝には、公園にはたくさんのパトカーが止まっていた。
規制線が貼られ、その周りには多くの野次馬もいた。
現場に到着する〇〇と田頭

第一発見時が分かるように椅子にマークが付けられている。
〇〇は、遺体収容袋を開けガイシャを確認する。
田頭が開口一番に声を放つ

田頭「堀ちゃん?」
〇〇「・・・」

収容袋を閉じる〇〇

〇〇「酷ぇことしやがるな」
田頭「許せませんよ。まだ若いのに。やりたいことだってあったと思うのに」
〇〇「だよな」
田頭「昨日、連絡してきた時あんな冗談言ってたのに」
〇〇「連絡あったのか?」
田頭「はい。なんか、麻衣って子の事について電話が」
〇〇「内容は?」
田頭「麻衣って子が麻衣は麻衣なんだけど、私の知ってる麻衣じゃなくて、別人が麻衣になってるみたいな話で」
〇〇「それでどうしたんだ!」
田頭「そんなSFとか、サスペンスみたいなことなんてあるわけないって言って電話を切りました」
〇〇「お前なんでそれを早く言わないんだよ!」

田頭の胸ぐらを掴みながら

〇〇「お前が上に報告上げてれば、救えたかもしれないだろ!」
田頭「すみません。  自分の判断でやってしまった事です」
〇〇「良いか!二度とそんな事するな!お前の独断と偏見で今回の事が招かれた。失わなくていい命が失われたんだよ!」
田頭「すみません・・・」
〇〇「お前、この事件から外れろ!  いい加減に仕事をして、独断と偏見が強すぎる奴なんて置いておけない」

靴音を響かせながら、現場に来る管理官

管理官「お前たち、捜査一課っていうのは、名ばかりか?  
なぜ、こんな事が起こった!  お前らの目は節穴なんじゃあないのか?」
〇〇「管理官、名ばかりとは失礼ですね。  撤回してください」
管理官「なんだその態度は!」
〇〇「こっちだって真剣に仕事してるんだ!現場の事は俺らが知ってる!  第一、警察は、警察官は神様じゃないんだよ!全部の事件なんて防げるわけないんだよ!  人の心から悪が消えない限り事件はなくならないし。第一、アンタがどれだけ現場のこと分かってるか知らない。けど、現場での仕事を蔑ろにして、出世しか、目的が無いなら、現場の仕事を積んでから言って頂いきたい!」

拳を強く握る管理官

管理官「そこまで言うのなら、お前が今回の犯人を捕まえろ!」
〇〇「言われなくたってするさ!  いいか!  バ管理官!」
管理官「ば、バ管理官だと?」
〇〇「アンタらキャリア組はいつも忘れてるがな、俺らノンキャリのおかげで生活出来てるんだよ!」
管理官「だからどうした!」
〇〇「楽した生活をしているだけなら、警官として出直せよ!」


何も言わず足早に現場を去る管理官。
車に乗り込む際、携帯電話を取り出す。
管理官「1つ頼み事がある。1人の男を監視してくれ!」

要件を伝えると電話を切る

管理官「私をバカにしたこと後悔させてやる」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...